聞いたのは、大西がPHOTO MIYOTAを御代田町とともに主催するアマナに招かれて、PHOTO MIYOTAの会場にて、アマナでアートプラットフォームプロジェクト プロデューサーを務める上坂真人と行ったトークイベントで、だ。大西がその発想に至ったのは、日本の地方、文化、アートの存在感が希薄で、もったいない、という思いのようだ。

 具体的な数字と言うと、日本はGDPが550兆円。うち、首都圏は40%。半分以上は地方である。出生率は東京が一番低い。にもかかわらず、開発や経済は東京に集中しがちだ。一箇所にまとまっている、というのは東京や都市の魅力ではあろうけれど、それをもって、経済の半分以上、都市で使われる素材や技術、消費される食料、さらに人間までも生み出す地方をおざなりにしてよいのか。よくはないから、都市より多産な地方を目立たせよう、というのが簡単に言えば、地方創生という言葉のいわんとすることだと思う。

 それを大西はこんなふうに言う。

「私はファッションの世界に長くいたけれど、それでいえば、ヨーロッパのラグジュアリーブランドで使われる素材の三割が日本製、などという時代もあった。それらは日本の地方で生まれているものだ。地方はもっと目立っていい。日本はもはや成長戦略でどんどん伸びていくような国ではない。日本は今後、どうやって生きていくのか。日本らしい文化産業を育み、これを海外に伝えていく。そういう産業のありかたが大事だと思っている」

屋内には、ユニークなアートフォト作品がバリエーション豊富な写真表現と共に展示されている

 そして、騒がれるインバウンドにしても、現状、日本経済の救世主たりえない、と話が続く。いかんせん、その規模はたった4.5兆円しかない。オリンピック・パラリンピックを見込んで5兆円規模、としたところで、GDPの100分の1以下という小ささだ。

 では芸術はどうかというと、これはもっと小さい。世界の芸術市場の規模ですら、これはどう計算するかによっても上下する数字だけれど、およそ7兆円しかない。このうち、国別のシェアでいうと、アメリカ2.8兆円、中国1.4兆円、イギリス1.35兆円となる。足して5.55兆円。要するに、この三国の市場占有率が80%なのだ。日本は2537億円しかない。美術品、美術関連品、美術関連のサービスを含めて計算しても、およそ3270億円。

 では、日本には芸術がないのか、というとそういうことはない。