デジタル化による定量的な分析が
具体的な解決・改善の糸口をもたらす

――DXを実際の業務の中で実現していくには、どうしたらよいのでしょうか。

ポイントは可視化で見えてきた細かな処理や工程について、それが本当に必要かどうかを検討していくことが欠かせません。例えば、これまで10日かかっていた仕事があるとします。「○○さんにしかできない」「なんとなく大変だから時間がかかる」というだけでは何も見えてきませんが、BIツールなどから抽出した売上金額や稼働時間などの数値を元に分析すれば、「2人で行えば30%スピードアップできる」「経理システムと連携させれば1日で終わる」といった具体的な解決法が見えてきます。こうしたことを一つ一つ積み重ねていくのです。

――こういう議論をするとき、必ず「デジタルに仕事が奪われる」という意見が出てきます。

それはデジタルの本質に対する理解不足からくる誤解です。日本は少子化が進み、外国人就労も拡大していきますが、職場の人手不足は深刻化していくでしょう。そして、働き方法案により、内部・外部を問わず働く環境も変わっていきます。その中でも企業は成長し続けないと生き残れない。その時、人的リソース不足をサポートしてくれるのは何か?それが、ロボットやロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)、AIなどといったデジタルテクノロジーです。

ここで重要なのは、人間とデジタルテクノロジーを置き換えるのではないということです。人間がデジタルテクノロジーを使って仕事をするのです。人手が足りないから、その手をデジタルテクノロジーで補う。そして人間は、その業務の指揮を執り判断を下す。責任を持つのはあくまでも人間です。また、人手不足の環境下では、人材育成にも手が足りません。でも、人間は育成に時間と労力が必要ですが、デジタルなら業務のナレッジをプログラムに組み込めば、すぐに熟練者と同等の仕事ができるようになります。こうして時間や手間を効率化できれば、人はより創造的な仕事に取り組む一方、配下のロボットやRPAをマネジメントして作業を任せれば、一人当たりの生産性は格段に向上するはずです。

実際、弊社にて1,000人の日本のビジネスパーソンを対象に、IT活用状況と労働生産性に関する意識調査を実施し、『WingArc1st Data Empowerment Report 2019』としてまとめました。そこで興味深いのは、ITなどのシステム利用者と非利用者を比較すると、システム利用者の方が約2.6倍も生産性意識が高いという結果が得られたことです。システムがそれを使う人の生産性をアシストしている様子がはっきりと見て取れる数字だと思います。