後藤組 経営管理部 笹原尚貴氏
後藤組は、山形県米沢市に本社を構える総合建設会社だ。1926年(大正15年)創業の老舗企業で、土木建築を中心にワンルームマンションの施工や米沢市内の空き家のリフォームなど、建築・建設に関わるさまざまな業務を請け負っている。
同社には高い技術力を持った技術者が数多く在籍しているものの、技術者の高齢化やそれに伴う若手の育成が喫緊の課題だ。新卒採用も積極的に行っているが、一人前の職人になるまでは5年ほど要するという。そこで四代目社長、後藤茂之氏はデータを活用して若手がベテランのノウハウを継承できるような「データドリブン経営」に乗り出した。その旗振り役として任命されたのが、経営管理部の笹原尚貴氏だ。
紙と電話とFAXで成り立っていた超アナログな現場を、kintone(キントーン)を使ってどのように改革したのか。そのエピソードをお話しいただいた。
超アナログな現場は「紙・電話・FAX」が三種の神器
後藤社長からデータドリブン経営の土台になる仕組みづくりを任された笹原氏。業務上のデータをもとに技術者のスキルやノウハウを継承し、若手もベテランと同じような品質の仕事ができる環境づくりを目標に据えた。しかし、データ以前に現場は超アナログ文化。情報共有の基本は電話、日報をはじめとした書類は手書きしてFAXで送るなど、データドリブン経営とは程遠い状況だった。そこで笹原氏は、まず現場のペーパレス化と電子データの蓄積を実現するためにキントーンを導入した。

「お付き合いのある会社さんがキントーンを使って業務改善をした事例発表を見てすぐにキントーンの導入に踏み切りました。導入当初は若手メンバーを集めてヒアリングをしたり、一緒にディスカッションをしたりしながらキントーンアプリを作っていきました。どんどん発想が湧いて、思いつくままたくさんのアプリを作っている瞬間はとても楽しかったです。しかしどんなにアプリを作っても現場は見向きもしてくれません。そのうち私は『みんながキントーンを使ってくれないのは自分のスキルが足りないせいだ』と思い込み、JavaScriptの勉強や機械学習モデルを構築し、さらに高機能なキントーンアプリを作り込みました。今振り返ると、キントーンの利用拡大に必死になりすぎてスキルモンスターになっていましたね」(笹原氏)
高機能なキントーンアプリを生み出し続けるも現場のメンバーとはどんどん話が噛み合わなくなり、笹原氏のプロジェクトは難航し続けた。そんなある日、突然社長室に呼び出された笹原氏。後藤社長から一言「笹原さんはもう自分でアプリを作らないで。その代わりに、現場の人が自らアプリを作るような仕組みを作ってください」と告げられた。
社長の鶴の一声で方針転換、自分自身では一切アプリを作らなくなった
あらためて「なぜキントーンが使われなかったのか」という問題を突き詰めて考えていった末、笹原氏はある結論に思い至る。
「データドリブン経営を実現するためには、まず大前提としてデータを貯める必要があります。そのためには社員の皆がキントーンを『使うべき』だと考えていました。しかし現場の社員は、今までの仕事のやり方で困っていないわけです。ようやくそこで私は、自分の都合を社員たちに押し付けていたことに気が付きました。まず『キントーンを使うとこんなに便利になるよ』ということを知ってもらうステップが必要だったのです」
そこで笹原氏は一気に方針転換を試みた。JavaScriptやAPIを使った高度なアプリを構築することはやめ、たった一つシンプルな日報アプリをキントーンで作成した。すぐに全社で使ってもらうのは難しいと考えた笹原氏は、年齢が近くて話しやすい幹部社員にキントーンの良さを伝え、一部門から日報アプリを使ってもらう作戦に出た。するとさっそく日報アプリに対する良い反響が返ってきた。
シンプルな日報アプリから普及が加速拡大画像表示
「その部門では、日報提出のために会社に帰る必要がなくなった点や、毎月の日報集計がボタンひとつでできるようになった点など、すぐに日報アプリの便利さを実感してもらえました。コメント欄で上司や先輩からアドバイスや、労いの言葉をもらえる点も反響が良かったです。その部門での成功実績が社長の耳に届き『日報はキントーンのアプリを使うように』とトップダウンで号令がかかりました」
その後、日報アプリはすぐに全社共通の道具として定着。笹原氏はこの追い風を逃さず、さらに社内浸透を図るため、全社員が必ず利用する申請関係もすべてキントーンに載せ替えた。こうしてキントーンの良さを「知ってもらう」ステップを踏んだことで、全社員が1日1回必ずキントーンを開く土壌を作り上げることに成功した。
そのうちに現場メンバーから「自分たちの仕事にもキントーンを使ってみたい」という声が上がってきた。笹原氏にアプリ作成を依頼するメンバーもいたが、後藤社長から与えられたミッションは「社員が自らアプリを作るような仕組みづくり」。先の失敗から学びを得ていた笹原氏は、安易にアプリを作って提供することはしなかった。
「アプリを作ることはできないけど、教えることはできます、というスタンスで現場のメンバーと一緒にアプリを作ることを徹底しました。勉強会も開催しましたが、ただ『勉強会をやるので参加してください』だけでは参加してくれないと思い、さまざまな工夫をしました。一つは弊社オリジナルのキントーン認定資格です。社長にも協力してもらい、試験合格者には褒賞が出る制度にしました。勉強会のスタイルも、私が一方的に喋るのではなく、DXワークショップと銘打って、社員が実際に手を動かしてキントーンアプリを作ったり使ったりしながらデータ分析の方法を勉強していきました。今では社員がキントーンを使って業務改善をした内容を競い合う『データドリブン大会』も開催されています。優勝チームには賞金も出るんですよ」
現場の書類はほぼ電子化に成功し、残業時間20%減を達成
キントーン導入後、さまざまな取り組みを経て後藤組の社内はどんどん変革していった。まず大きな変化は、紙と電話とFAXで成り立っていた建設現場がほぼ電子化したことだ。現場の書類はすべてキントーン化され、社員たちもタブレットやスマートフォンからの入力を徹底している。キントーン導入初期には難色を示していた一部のベテランメンバーも、今では意欲的にキントーンを使ってくれているというから驚きだ。
「日報から始まったキントーン活用は、各種申請類、物件情報管理や新卒採用管理など幅広く使われるようになりました。新卒採用管理は、学生に紙に書いてもらっていたアンケートを電子化しただけでなく、その結果をリアルタイムでキントーンのダッシュボードに反映しています。このダッシュボードでは、目標の採用人数から各プロセスの歩留まりを自動で計算し、集客がどれくらい足りないかを割り出せるようになっています。これは社員が自分たちで一から作った仕組みです。キントーンでデータを蓄積するメリットを肌で感じてもらえているのではないかと思います」
キントーン導入から1年6カ月、数字の面でも効果が出始めた。社員の総残業時間は20%減、営業利益は44%増を達成。キントーンの導入によって生産性が大きく向上したと笹原氏は語る。
「今後はBIによるデータの可視化、AIによる統計的判断を加速していくほか、もっと社員が自発的に業務改善を進めていく土壌や仕組みが必要だと考えています。徐々に効果は出始めましたが、まだ過渡期にすぎません。データドリブン経営を実現するため、引き続きキントーンを使った業務改善を現場単位で推進していきたいと思います」
今年、創業100周年を迎える後藤組。老舗建設会社は最新鋭のDX改革を推し進めながら時代の先端を駆け抜けていく。
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