住信SBIネット銀行 業務部CS・DX企画グループ 兼 システム開発第1部 イノベーションラボグループ 加藤誠章氏
インターネット専業銀行である住信SBIネット銀行では、ビジネスの規模拡大に応じた業務の効率化を実現している。社内の情報伝達に使われてきた表計算ソフトとメールから、kintone(キントーン)を情報共有基盤として整備し、生成AIとの連携によってブラックボックス化させない仕組みを作っている。
その経緯について、業務部CS・DX企画グループ 兼 システム開発第1部 イノベーションラボグループ 加藤誠章氏にお話を伺った。
所管部署へエスカレーションするための基盤づくりが必要に
インターネット専業銀行として2007年に開業、最先端のテクノロジーを活用したデジタルバンクとして、日々顧客の利便性追求を続けている住信SBIネット銀行。パートナー企業にフルバンキング機能を提供するBaaS(Banking as a Service)事業など、銀行を超えたテクノロジー企業として対応領域を拡大し、「テクノロジーと公正の精神で、豊かさが循環する社会」の実現を目指している。
そんな同社において、顧客の利便性向上や業務効率化に資するシステム開発などを手掛けているのが業務部 CS・DX企画グループだ。「お客さま及び社内業務に対する利便性向上の両面で活動しており、現在導入しているキントーンの活用による業務の高度化・効率化も我々の部署で手掛けています」と説明する。業務部には、カスタマーセンターや資金受領、送金関連事務のオペレーションセンターを運用する部門があり、その業務の効率化・高度化を推進しているのが加藤氏だ。
そんな加藤氏が関わるカスタマーセンターの課題だったのが、顧客からの問合せ内容を対象商品の所管部署へエスカレーションする仕組みづくりだった。「問合せ内容によっては、所管部署に確認したうえで回答するものもあります。この所管部署にエスカレーションする際、表計算ソフトの台帳に具体的な内容を記載し、メールでやり取りを行っていました」と加藤氏は当時を振り返る。
当初はこの方法が最適だった。しかし、ビジネスが拡大するなかで表計算ソフトファイルが肥大化し、ファイルの破損に対する懸念が増えていった。さらに数多くのメールが飛び交うなかでメールの見落としも危惧されたという。「事業の成長スピードに対して従来の運用では耐えられなくなってしまう可能性がありました。表計算ソフトが悪いというわけではなく、事業の成長に適したベストな選択肢を検討する必要があると考えたのです」
もともと基幹システムをAWSにて展開するなど全社の方針としてクラウドファーストを掲げていたこともあり、当初からクラウドサービスの利用を念頭に検討を開始。業務ツールやクラウドDBのような仕組みを探すなかで注目したのが、サイボウズのキントーンだった。
前職でGaroonを活用した経験からサイボウズの存在は知っており、サイボウズに対する信頼感はあったという。「表計算ソフトのように情報が蓄積でき、かつ誰でも使えるような仕組みを探していました。似たようなソリューションはいくつかありますが、監査ログを残すことができたり、メール通知やREST APIによる外部連携の実現といった要件まで加えると、キントーンが最適だと考えたのです」と加藤氏は話す。
また、スモールスタートできる点もキントーンを評価したポイントの1つだった。「費用対効果を計測しながら徐々に社内に拡大させることが合理的です。その点、ライセンス課金のキントーンであれば小さく始めて拡張していくことができます。初期投資が少なく済む点も魅力だったのです」
さらに、セキュリティやガバナンス面も、キントーンであれば同社の要件を満たしていた。「数十項目に及ぶセキュリティ要件をクリアしていました。当時は、総務省や経産省のクラウドセキュリティに関連したチェックシートやISO認証、FISC安全対策基準などがポイントになっており、それらを満たしていることで、業務基盤としてキントーンを選択できたのです」
結果として、所管部署への問合せ内容をエスカレーションするための情報共有基盤としてキントーンが採用されることになったのだ。
業務部から他部署へ、広がりを見せるキントーンの輪
現在は、業務部が中心となり、キントーンアカウントを500にまで増強している。問合せ内容をエスカレーションする所管部署でもキントーンが活用されているほか、FC統括部やBaaS事業など複数の部門にキントーンが拡大しつつある。「キントーンを推進することが私のミッションではありません。あくまで業務の高度化やDX推進を進めるための手段として使っていたところ、いろんな部門から声がかかるようになりました。他部署でも表計算ソフトに情報が集約されているケースがあり、その場合はキントーンに移行しやすく、社内へ広がりやすいのが現実です」と加藤氏は説明する。
業務部で運用しているのは50ほどのアプリだが、現在はアカウントを持つ全員にアプリ作成権限を付与。全体では200を超えるアプリが作成されている。無尽蔵にアプリが増加していくことを防ぐため、アプリ作成申請にて承認フローを構築し、ガバナンス態勢を整備。全社利用に向けたルール整備をおこなっている。
運用中のキントーンアプリ活用例の1つが、当初の課題解決につながるエスカレーションアプリだ。フォームからの問合せ情報がCRMに格納され、所管部署への確認が必要と判断された場合、オペレーターがキントーンアプリを活用し、問合せ内容を関係部署にメールにて連携する流れだ。その後、所管部署がキントーンにて対応方法を入力し、オペレーターが内容に基づいて顧客に連絡することになる。「以前は所管部署へのメール通知のタイトルが属人化していましたが、今は定型化しています。メールソフトで設定しておけば適切なフォルダに振分けられるため、見落としもなくなります」と加藤氏は説明する。コメント機能を利用することで、所管部署との円滑なコミュニケーションもとれているという。
また、為替の処理をするオペレーションセンターに対し、各商品の所管部署から顧客へ送金処理を依頼する処理依頼アプリがある。このアプリでは、所管部署が依頼内容をキントーンで連絡すると、メールでオペレーターに通知され、キントーン内に書かれたフローに沿って為替処理を行う。定常的な処理は勘定システムで自動的に処理されるが、イレギュラー時にこの処理依頼アプリを利用している。
キントーン+生成AIが新たな活用の扉を開く
生成AIと連携してキントーンを活用しているアプリもある。コード解析アプリは、表計算ソフトやデータベースソフトのファイルに組込まれたVBAやSQLなどのコードを、わかりやすい日本語で一括出力することが可能だ。複数のコードをキントーンのレコードとして投入し、生成AIに説明してもらうことで、システム開発の当事者以外であっても、ファイルの構造を最新断面でドキュメンテーション化することができる。具体的には、M-SOLUTIONSが提供する「Smart at AI for kintone Powered by GPT(以下Smart at AI)」の連携により実現している。加藤氏は「キントーンから情報を出さずに言語処理をAPI経由で実施できるよう、我々が求めるセキュリティレベルに対応してもらっており、当社の要求レベルが担保された状態で生成AIを活用することができています」と話す。
他にも、米国Kore.ai社の対話型AIプラットフォーム「Kore.ai」の展開に際しても、Smart at AIとキントーンを活用している。「Kore.ai」によって、顧客の音声をAI認識し、窓口の振分けなどを自動化することで、待ち時間の解消や業務効率化につなげているが、その導入時のテストシナリオ作成で活用した。
「内部の人間がテストシナリオを作成するとバイアスがかかり、シナリオが偏ってしまうケースも。そこで、話し言葉による質問のシナリオを生成AIに考えてもらっています。例えば”ログインできなくなった”という想定質問を、会話文形式で複数パターン生成AIに案出ししてもらい、その会話文をKore.aiに向かって発話して、どう回答するのかテストしてみるといった使い方です。想定質問をキントーンに入れてSmart at AIを実行するだけで、シナリオが作成できます」と加藤氏。
今回キントーンを導入したことで、エスカレーション業務でいえば工数がおおよそ半減するなど、業務の効率化に大きく貢献している。また従来のような表計算ソフトでの運用は、ファイルの破損など起こり得るリスクがあったが、キントーンによって情報管理の信頼性が高まった。「お客さまの資金移動などに直結するため、業務におけるオペレーションミスが最も恐れること。ミスが起こらない環境をこれまで以上に強化できたという意味でも、キントーンに移行してよかったと実感しています」
サイボウズについては、導入当時はカスタマーサクセス部門の伴走支援を受け、オンラインでの打ち合わせを継続しながらアプリ開発のレクチャーを受けたという。「最初からアプリが作成できたわけではなく、手厚く支援いただいたことで作り上げていくことができました。そのサポートがなかったら、今のような広がりはなかったはず」とサイボウズの支援を評価する。
キントーンについては、表計算ソフトを使ってリスト管理している企業に対して強くお勧めしたいという。「カード型DBを自分で作り上げるのは大変ですが、スモールスタートで開発を始めることができ、無限にトライアンドエラーができるというのは大きな魅力。アジャイルアプローチで作り上げることができ、非常に助かっています」と評価する加藤氏。
今後については、各種システムと利用者をつなぐためのフロントエンドUIとしてのキントーンに期待を寄せている。「多くの仕組みがウォーターフォールで作成されており、ユーザーインターフェース画面を1つ作るだけでも多くの時間とコストがかかります。キントーンであればライセンス費用だけで構築できるため、使い勝手のいい仕組みが整備できるはず」と加藤氏は話す。
また、AWS上に展開している基幹システムとのAPI連携を進めていくことで、セキュリティ要件を満たしながらクラウド内で業務が完結できるような環境も目指していきたいと意欲的だ。「お客さまからアップロードしていただいた各種証跡をWebサーバ上で管理し、キントーンがAPI連携して取得している例もあります。さらに様々な仕組みと連携を進めていくことで、業務プラットフォームとしてキントーン活用をさらに加速させたい」と今後について語った。
(2024年8月 取材)
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