サイボウズ マーケティング本部 マーケティング戦略部 部長 兼 事業戦略室 海外事業 山田明日香氏
ビジネスシーンでのAI(人工知能)の活用が進んでいる。関心を持つ企業も増えているが、企業現場では「何から始めればいいのか分からない」と戸惑う声も少なくない。そんな中、サイボウズは自社のノーコード業務改善ツール「kintone(キントーン)」にAI機能を追加できる「kintone AIラボ」をリリースした。初めてAIを導入する企業でも簡単に扱える手軽さと、セキュリティ面への配慮が両立した“現場力を高める”AI活用支援ツールとして注目を集めている。同社でAI推進を担当しているマーケティング本部 マーケティング戦略部 部長の山田明日香氏にその特長やサービス提供の狙いを聞いた。
「みんなが使えるAI」でチームや組織の力を底上げする
「キントーンは、ITの専門知識がない方でも業務アプリを簡単に作れるノーコード型のプラットフォームです」と語るのは、サイボウズでマーケティング戦略部部長を務める山田明日香氏だ。
実際に、キントーンは、マウス操作とドラッグ&ドロップだけで、情報の入力画面や一覧表を作成できる。表計算ソフトで行っていた案件管理や日報作成、契約書の更新通知などの業務を、誰でもプログラミング不要(ノーコード)で直感的にアプリ化できる。
営業部門であれば顧客情報や商談の記録、人事部門では採用データや従業員情報の管理、法務部門では契約期限のアラート設定など、用途は多岐にわたる。スマホやタブレットなど様々なデバイスに対応しており、インターネットを通じて、いつでもどこでもアクセスが可能だ。
これらの利便性が評価され、キントーンは中小企業から大企業まで、さまざまな業種業態の企業、3万8000社以上に選ばれているという。
そんなキントーンに新しくAIの機能が追加された。それが2025年4月に提供を開始した、「kintone AIラボ」だ。
「kintone AIラボ」提供の背景について山田氏は「生成AIの登場以降、AI技術の進化と普及が急速に進んでいます。数年後にはAIが当たり前のように利用される時代が到来するでしょう。誰もが安心してAIを活用できる環境づくりを支援するために、『kintone AIラボ』を立ち上げました」と語る。経営者が率先してAIの導入を現場に促す企業もある。多くの企業でAIの利活用の機運が高まっているといえそうだ。
一方で山田氏は「従来のキントーンもそうですが、“一部の人が便利に使う”のではなく、みんなで使えるようにすることで、チームや組織の力を底上げすることが大事です。その考え方は『kintone AIラボ』でも同じです」と話す。

“チーム力を引き出す”ための3つのAI機能
山田氏によれば、“個人のためではなく、チーム力強化のためのAI”が、「kintone AIラボ」なのだという。
「現在は、『検索AI』、『アプリ作成AI』、『プロセス管理設定AI』の3つの機能を提供しています。いずれもチャットで伝えるだけで、AIが提案、設定をしてくれるのが大きな特長です」と山田氏は紹介する。
「検索AI」、「アプリ作成AI」、「プロセス管理設定AI」はそれぞれどのような機能なのか。
まず「検索AI」だ。社内データの検索を行う場合、従来であれば、キーワードやファイル名を正確に入力する必要があった。しかし、「kintone AIラボ」の「検索AI」なら「製造業の決裁権限者に会えることになったので、当社の製品Aを提案したいです。伝えるべきポイントは」といった自然言語でAIに伝えるだけで、AIが「案件管理アプリ」など複数のアプリ内の類似の商談記録や案件データを調べ、効果的なヒントや参考になる事例などを示してくれる。「引っ越しました。どこに何を報告すべきですか」といった質問には社内の「問い合わせ対応アプリ」を調べてくれる。質問の意図を汲み取り、複数のアプリにまたがって検索できるのが特徴だ。
キントーンにあるさまざまなアプリからAIが適切に情報を検索し回答する。拡大画像表示
「kintone AIラボ」の2つ目の機能「アプリ作成AI」は、まさにキントーンらしい機能だ。現状のキントーンでもドラッグ&ドロップで必要な項目を選んで並べれば、簡単にアプリが作成できるが、それでも「どの項目を並べればいいのか分からない」という声は少なくなかった。ある程度の経験も必要だったのだ。その点で「アプリ作成AI」は、業務改善をしたい人の“やりたいこと”をAIが判断し、必要な項目を提案したり、必要に応じてたたき台まで作ってくれる。
例えば、「案件管理アプリを作りたい」とAIに伝えると、顧客の「会社名」、「担当者名」、「ステータス(確度)」など案件管理特有の項目を、まるで「これが必要ではないですか」と言っているように示してくれる。このため、業務アプリを作ったことがない人でも、チャットでAIに相談しながらイメージ通りのアプリが作成できるのだ。
さらに、「都道府県ごとにデータを集計できるようにしたい」といった要望をチャットで伝えれば、AIがアプリを参照し、都道府県のプルダウン項目を用意してくれる。一つ一つ打ち込む必要はないのだ。
「キントーンは非IT人材でプログラミングの知識がない人でも業務アプリを作れますが、『アプリ作成AI』機能を活用することで、現場社員がデジタルスキルを学びながら、チームで業務改善に取り組む仕組みが構築できます」と山田氏は話す。
AIと会話をしながら、業務アプリが作成できる。拡大画像表示
「kintone AIラボ」の3つ目の機能「プロセス管理設定AI」は、その名の通り、実現したい業務プロセス(ワークフロー)をチャットで伝えるだけで、AIが適切なプロセス管理を提案・設定してくれる。
例えば出張の申請一つとってみても、申請から承認、差し戻し、再申請といったフローを見越した上で業務プロセス設計を行うのはなかなか容易ではない。しかし、「プロセス管理設定AI」を利用すれば、専門用語が分からなくてもAIと対話するだけで設定が可能だ。視覚的なフロー図を見ながら、「社内規定に合っていない場合に、申請者に差し戻しができるようにしたい」といった指示や質問を入力するだけですぐに反映される。
AIは過去の類似アプリや業務パターンを参考に、適切な承認ルートや条件分岐を提案してくれるので、業務経験の浅い担当者でも、「とりあえず作ってみる」ことができる。その後にチームで修正・調整することも可能だ。山田氏は「プロセス管理AIによって、業務フローを設計できる人が社内に増えていく。これは、組織全体の改善スピードを上げる第一歩になるでしょう」と強調する。
プロセス管理設定AIではAIと対話しながらワークフローのプロセスを作成することが可能拡大画像表示
あえて学習させないことで、AI特有の情報漏えいリスクにも配慮
AIを業務に活用したいと考える企業が増えている一方で、情報漏えいなどのセキュリティ面が心配だという企業もあるだろう。AI特有の情報漏えいや機密性の確保を懸念する声も少なくない。キントーンではその点も安心だ。
まず、サイボウズは、情報セキュリティマネジメントシステムについて、第三者機関からの認証を取得している。キントーンも政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)のクラウドサービスリストに掲載されている。
さらに、キントーン上に設定されたアクセス権限がAIの応答にも反映されるため、ユーザーが本来見るべきでない情報にはAI経由でもアクセスできない仕組みとなっているという。例えば人事部門が管理する従業員の情報は、個々の情報ごとに閲覧権限を細かく設定できる。
また、生成AIの活用にあたって、企業が最も神経をとがらせるのが「自社のデータがAIに蓄積されて、外部に漏れてしまうのではないか」という点だ。それに対して山田氏は「『kintone AIラボ』では、ユーザーが入力した情報やチャットの履歴は、AIの“知識”として学習されない設計になっています。このため、お客様の企業内でのやりとりが、他社への回答に出てくるリスクはありません」と話す。
AIの進化は著しい、だからこそ「はじめの一歩」を
山田氏は、サイボウズ入社以前は大手SIerにおいてエンジニアとしてシステム開発に携わってきた経験を持ち、さまざまなテクノロジーの導入を手掛けてきたが、AIは進化のスピードという点で大きな違いがあると語る。
「従来のテクノロジーであれば、数年後の進化を見越してロードマップを描きながら取り組むことができました。しかし、AIの場合、わずかの期間でステージが一段上に上がるような変化が起きます。そのため『kintone AIラボ』についてもまさにアジャイルで、ユーザーのニーズを把握しながらブラッシュアップしていくようにしています」
キントーンには“kintone cafe”や“kintone hive(キントーンハイブ)”といった、ユーザー主体のコミュニティが全国にあり、そこでは、導入事例や使い方の工夫などが日常的に共有されている。このようなユーザーコミュニティの存在は、単なる情報交換の場にとどまらない。製品開発チームが直接フィードバックを受け取り、アップデートに反映する仕組みが整っている。
「『kintone AIラボ』は、AIに初めて触れる企業でも安心して使えるものだと自負しています。『AIをちょっと試してみたい』という方々のための“はじめの一歩”になれば」と山田氏は力を込める。
生成AIが業務の風景を変えていくその前に、今できることから始めておく。その後押しをするのが、「kintone AIラボ」なのだ。「kintone AIラボ」はキントーンをすでに利用しているユーザーであれば無償で利用できる※ので、ぜひ活用したいところだ。
※kintone AIラボは、キントーンの下記いずれかをご契約中のお客様がご利用いただけます。詳しくはWebサイトにてご確認ください。
・スタンダードコース(アカデミック・ガバメントライセンス、チーム応援ライセンスを含む)
・ワイドコース
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