科学的根拠に基づき、2050年までにグローバルなバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量の実質的ゼロを目指すレノボ・グループ。社会的責任を感じると語るレノボ・ジャパンの檜山太郎代表取締役社長は、新たな価値観を認めて受け入れ、実践することが、カーボンニュートラルなどサステナブルな社会の実現につながると考えている。

SBTi基準に準拠し2050年までに“排出ゼロ”を目指す

 世界的なITソリューションプロバイダーのレノボは、2050年までにグローバルなバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量を実質的にゼロにするという目標を掲げている。

 この目標達成に向け、レノボは2023年1月にはScience Based Targetsイニシアチブ(SBTi)の検証・認定を受けた。その目的は、目標達成のための具体的な指針を得るためだったと、レノボ・ジャパン代表取締役社長の檜山太郎氏は説明する。

レノボ・ジャパン合同会社 代表取締役社長 檜山太郎氏

「以前は、温室効果ガス排出量を削減するという目標を掲げたとしても、では、具体的に何をすればいいのかがわかりにくいという課題がありました。プラスチックの使用量をどの程度減らせばいいのか、また細かい話で会議室の温度を何度に設定すればいいのかなども不明瞭でした。しかし、科学的根拠に基づくSBTi基準に準拠することで、眼の前で取り組むべきことが明確になりました」

 2022年末時点でSBTiの認定を受けた企業は世界で2000社程度、PCメーカーではレノボが初めてだ。

設計・調達から利用・廃棄まで一貫した取り組み

 認定を得るには、まずグループの事業活動での直接的な排出量(Scope1)のほか、購入したエネルギー使用に伴う排出量(Scope2)、製造販売する製品の原材料調達から廃棄までのバリューチェーン全体での排出量(Scope3)を把握する必要がある。

「ですから、部品製造時の温室効果ガス排出量を教えていただくなど、お取り引き先にも協力をしていただかなくてはなりません。ご負担を強いることになります。ファーストランナーなりの大変さもあるのですが、PCやタブレットを世界で最もお客様に提供している私たちには、この問題に率先して取り組む社会的責任がありますし、この業界にインパクトと刺激を与えられればとも思い、決断しました」

 現在は、中期目標である2029/2030会計年度時点でのScope1及びScope2の温室効果ガス排出量の絶対量の50%削減や、Scope3に含まれるレノボ製品の使用による温室効果ガス排出量の平均35%削減に向け、設計から廃棄に至るまで新たな取り組みを始めている。

 たとえば設計段階では、将来の廃棄時を見据えながら再生資源を最大限に活用し、生産段階では、エネルギー消費量を抑制しながらクリーンなエネルギーの活用を進めている。

 そうして製造される製品は高い性能と低い消費電力を両立。梱包材には竹やサトウキビ由来の再生可能な素材の採用を拡大している。さらに、廃棄時はリサイクルやリユースが前提となっており、それができない部材も環境負荷の少ない方法で処理される。

環境貢献意識を高められる「CO2 オフセット・サービス」も提供

 仕組みによる解決方法も提示しているようだ。

 たとえば、ThinkPadを購入する場合、『CO2 オフセット・サービス』に加入すると、そのPCの製造から出荷、利用、さらには廃棄に至るまでの温室効果ガス排出量をオフセットできる。したがって、ユーザー自身は排出量を測定する手間を省いたうえで、排出量の削減に貢献でき、その証明までできるのだ。

 まだまだサステナビリティへの配慮よりも、価格性能比を重視するユーザーも少なくない。それでも、確実に変化していると檜山氏は言う。

「環境問題について真剣に考える方が増えていることは、お客様との会話からも感じています。私は企業のCIOの方とお話しすることが多いのですが、かつては、CIOの方々からはサステビリティについては管轄外といった空気を感じていました。しかし今は、多くの方が喫緊の課題だと口にされます。こうした変化は、調査でも裏付けられています」

行動が意識を高め、意識が行動を加速する

 レノボ・ジャパンでは、SBTiに準拠した取り組みのほか、足元でサステナビリティへの意識を高める活動も行われている。

 その一例が、社員による由比ヶ浜海岸(神奈川県)などでのプラスチックごみの回収活動だ。もともと社内にあった、食事会やスポーツといった楽しみを有志で共有する枠組みに、誰からともなく“プラスチックごみを回収する”というイベントが加わったのだという。

「おそらく、日頃の仕事でサステナビリティについて考える機会が増えたことで、そうした価値観が生まれたのだと思います。このアイデアを聞いて嬉しかったですし、頼もしいとも感じました。事業で感じた必要性が事業外の活動に波及した格好ですが、その事業外の活動が社員のサステナビリティへの理解を深めることにもなると期待しています」

 先日は、檜山氏自身も回収活動に参加。同様の活動は、国内2か所の製造拠点、3か所の開発拠点にも広がっている。

社員による由比ヶ浜海岸(神奈川県)でのプラスチックごみの回収活動の様子

 新たな価値観に基づく活動としては、2021年から女子中高生向けを対象に、IT/テクノロジー分野の出張授業の提供もしている。一般社団法人Waffleとの取り組みだ。IT/テクノロジー業界に女性が少ないことに懸念を抱き、始められたものだ。

「市場のニーズが多様化している今、中高年の男性だけが参加する会議で決められた製品には魅力を感じないお客様も増えています。ですから、経営層の女性比率を上げたり、国際性に富ませたりといった企業が増えているのでしょう。重要なのは多様な考え方を持った人が集まることです」

 こうした言葉は、檜山氏の国内大手メーカー、外資系IT企業での経験に裏打ちされている。

「多様な考えの人が集まり、お互いがお互いの考え方を理解すること。それが、企業のサステナビリティを高めます。私たちは、私たち自身がダイバーシティを高めサステナビリティを高めるだけでなく、社会全体がそうなるようにも貢献していきたいのです」と説明する。

 自ら進める変化を社外にも波及させようとする同社の姿勢は一貫している。

「カーボンニュートラルのような環境問題だけが特別なものだとは思っていません」と檜山氏は思いを明かす。

カーボンニュートラルなコンピューティング環境を

 レノボ・グループの製品はノートPCのほか、サーバーやデスクトップPC、タブレット、スマートフォンなど多岐にわたる。こうした製品に共通するのは“コンピューティング”だと檜山氏はいう。外見や名称は異なっても、これらのデバイスが行うことはアナログのデジタル化とその連携だ。

「少し前までは、コンピューティングパワーの活用は机の上のPCなど限られたデバイスの中に留まっていました。しかし今は、スマートウォッチやスマート家電、スマートメーターなど、スマートという冠がつくあらゆるハードウェアに広がっています。ということは、私たちが製造販売する製品だけでなく、コンピューティングという共通項でつながる系全体のサステナビリティについても考えていかなければならなくなると思っています」

 そうした新しい課題への処方箋を模索しながら、レノボは解決に向けて果敢に挑み続ける。

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