働き方についての話題が、この数年、事欠かない。きっかけはもちろん、新型コロナウイルスの感染拡大である。アフターコロナが見えてきた今、テレワークやハイブリッドワークというスタイルは、もはや定着したと言えるが、コロナ渦の「オフィスに行けないから自宅で働く」という考え方は、本来のテレワークではない。目的に応じて最適な場所で働けるなど、従業員が柔軟な働き方を実現し、その結果、最高の成果を得るには何が必要なのか。

”コロナ以前に戻る企業”と”新しいワークスタイルを推進する企業”に二極化している

「働く場所の柔軟性が高くなったと言えます。テレワークという言葉は80年代からありましたが、その概念にテクノロジーが追いついていませんでした。しかし、2019年にはそれらが揃っていたことが幸いしました」と、レノボ・ジャパンでワークスタイル・エバンジェリストを務める元嶋亮太氏は語る。

レノボ・ジャパン合同会社 ワークスタイル・エバンジェリスト 兼 製品企画部 マネージャー
元嶋 亮太氏

 2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類感染症に分類されたことから、出社を原則とする企業も増え、朝の通勤電車やランチタイムのオフィス街は、コロナ以前のような様相を呈している。果たして、一度柔軟になった働き方は、元に戻るのだろうか?
※厚生労働省のHPより(https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html)

 元嶋氏は「コロナ以前に戻る企業と、戻らない企業の二極化が、すでに見られています」という。そして、前者の”戻る企業”には3つの共通点があるという。

「まず、本来、習慣を変えるのは難しいということです。長年、仕事といえば出社して行うのが当たり前だった企業にとって、コロナで強制的に出社できない時期が終われば、出社が当たり前になります」

 続いて二つ目の共通点は、新しいテクノロジー導入の必要性を感じられていないケースだ。「例えばPCの場合、特に企業規模が小さく、独立したIT部門が存在せずに総務などが兼任しているような場合は、3~5年ごとのリプレイスの際、あまり吟味せず『前と同じようなもの』を選んでしまいがちです。ともすると、旧来と変わらないIT環境が出来上がり、柔軟な働き方という選択肢が制限されてしまう事が起こり得ます」

 そして最後が、社内の常識が社外の常識に合わせてアップデートされていない場合だ。「以前であれば会って話をするのが当たり前だった取引先が、今はテレワークを推奨していて打ち合わせも原則としてオンラインで行っている、というような新しい当たり前に追従しきれていないケースが見られます」

オフィスと自宅以外でも、快適に働けてこそのテレワーク

 レノボ・ジャパンの調査によると、大企業より中小企業、首都圏の企業よりその他の地域の企業でこうした傾向が強いという。 そこでは、全員が集まって働くというかつてのスタイルを取り戻す代わりに、社外、そして、経営者と従業員との間にギャップが生じてしまう。

「テレワークに慣れた従業員は、納得できる理由がないと出社したがらなくなっています」
 もちろん、その企業の経営戦略に照らし合わせたとき、全員が常に出社して働くことが必要だと判断され、従業員もそれに納得している場合にはこの限りではない。しかし、不要な出社については、従業員は以前とは比べ物にならないほど敏感になっている。

 実は従業員にとって、どこで働くのかを選べることは、すでに勤務先選びの大きなポイントとなっている。
「20代から30代を対象にした調査では、約35%が、転職先でテレワークが認められるかどうかを重視すると回答しています
※「日本の働き方現在地」4社合同調査より(2022年4月)

 ただし、単に在宅勤務を認めればいいというものではない。

「テレワーク=在宅勤務ではありません」と元嶋氏。「新型コロナの感染拡大で、多くの企業はオフィスの代わりに自宅で働くことを“テレワーク”としてきました。しかし、誰もが仕事をする上で常に自宅が快適、また、最適でしょうか?」

 元嶋氏自身は現在、東京・秋葉原にある本社のほか、横浜にある研究所、自宅、コワーキングスペース、ときには移動中の公共交通機関の中や、駅などに設置されているミーティングブースでも仕事をすることがあるという。「10年前であれば、一箇所のオフィスに出社することを疑わなかった私でも、今では、その日の業務に合わせて働く場所を選ぶようになっています」

 従業員のこうした柔軟な働き方を可能にするには、経営者には、オフィスと自宅だけではなく、他の場所でも快適に仕事ができる環境構築のための設備投資が求められる。

 経営者の中には「テレワークは仕事の効率を下げる」と考える人も少なくない。先例ではどうなのだろうか?レノボがコロナ前のテレワークの実践の中で実施した社内調査では「4割が生産性アップ、5割が現状維持と回答し、効率が下がったという回答は全体の1割に留まっています」 という。「経営者やマネージャーに求められるのは、怠けるかもしれないと疑いの目で社員を監視することではなく、成果を最大化するために、人やテクノロジーといったリソースを活用することでしょう」

 従業員に柔軟に働いてもらい、生産性も高める。そのため設備投資のひとつにPCがある。今後は、出社が前提だった時代にはなかった基準も考慮して、間違いのない選択をしなければならない。
「企業の数年後も見通して、経営戦略にフィットした環境への投資を行う必要があります」

 そもそも、オフィスで使うPCには以前からギャップが存在していた。
「それは、選ぶ人と使う人が異なる、ということです。選ぶ人はコストや管理のしやすさを重視しますが、使う人にとっていちばん大切なのは使いやすいことです」

必要なのは、協業しやすく接続性と携帯性の高いノートPC

 では、アフターコロナの時代の使いやすいPCはどのような基準を満たすのか。以下の3つに集約できる。

 まず、一つ目は”無理なくコラボレーションができる”ことだ。

「ZoomやTeamsなどの利用は当たり前になりました。こうしたツールを使うようになって初めて、自分のPCのカメラやマイクの性能が気になったという人も多いでしょう。周囲が暗くてもしっかり写せるカメラや、ノイズを拾わず複数人で話す場合は声の大きさも自動で調整するマイクを内蔵していると、どのような環境でも違和感なく会議に参加できます」

 それから、二つ目は”どこでも快適な接続性が担保されている”こと。

「オフィスや自宅だけでなく、外出先でもスムーズにオンライン会議に参加できるよう、Wi-Fiに加え、LTEや5G経由でもネット接続できるモデルが便利です」

 そして、何より”携帯性が高い”こと。デスクトップPCではなくノートPC、それも、画面の大きさと持ち運びやすい軽さの両方を満たした1台が求められる。「もちろん、従来PCに求められていた、ビューアとしてだけではない、創造のためのツールとしての機能も欠かせません」

 2023年にレノボが発表したThinkPadは、これらの条件を満たしている。特に、インテル® Evo™ プラットフォーム 準拠の製品では、応答性やバッテリーの持続時間でインテルの基準を満たしており、どんな状況でも快適に利用できる。

 また、様々な場所で働くようになってくると、IT管理者が遠隔で調子確認などをする際の管理のしやすさも、重要になっている。

 その際に重要なのがインテル® vPro® プラットフォームに対応していること。インテルvProプラットフォームを搭載したPCでは、遠隔管理のためのテクノロジーであるインテル® AMTやインテル® EMAに対応することで、管理者にとっての働き方の柔軟性の担保にも寄与することができる。「たとえば、テレワーク中の従業員のノートPCのOS正常に起動しなくなってしまったとしましょう。この場合も、管理者は遠隔からそのPCを操作して対処できます」

 元嶋氏は、働き方の柔軟性を高めるテレワーク体制の構築には、ここまで述べてきたようなハードウエア面での環境整備のほか、「誰もが萎縮せず、制度を利用できる仕組みを整えることも必要です」という。テレワークという選択を気兼ねなくできる「風土づくり」が必要なのだ。

「ですから、トップダウンが必要です」と元嶋氏。感染症蔓延対策ではなく、企業競争力の担保という観点からテレワークに今後も真剣に取り組み、働き方の柔軟性を高め、生産性も上げるのか。それともそうはしないのか。経営者の本気度が今、問われている。

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