いよいよ格納庫へ
「うわー!」と思わず声が出てしまう松宮。天井の高さは41m・幅175m・奥行105mという、巨大な空間に圧倒される。中に入って行くと、かすかにオイルとタイヤが擦れたようなにおいが漂う。日常生活では出会わないにおいに「今は飛行機の格納庫にいるんだな」としみじみ。
……あれ?何か違和感が!これは一体?!
「そうだ、柱がない!」と叫ぶ松宮。地震が発生しても大丈夫なのか?
すると、「第1・2格納庫はジャッキアップ工法で建てられているんです!」と宮田さん。「ジャッキ工法とは、ジャッキを使って鋼管を打ち込み、沈下などが起きない地盤まで建物を支持する技術です」「そのため、震度7の地震が発生しても耐えられるんですよ」と一気に解説してくれる。「なるほど、柱がないのに地震に強いのか!」と感心してしまう。
JALの格納庫は羽田空港と成田空港にある。羽田空港に所属する整備士は1200人。成田空港は600人だそう。意外にも、羽田空港にある格納庫の方が規模が大きいとのこと。
次の出発までに点検・整備を行う場合、「国内線ならば最短で40分ほど」と宮田さんに聞き、驚く。
一定の期間をフライトした機体はコックピットのほかに、床や座席、トイレ、貨物室などもすべて機内から取り出し、1つひとつ点検する。そのため、点検するのにかかる時間はなんと、7~10日!それだけ時間をかけて点検をしているとは!初めて知った。
スクリュー(ネジ)は紛失しないように、目立つ赤いビス袋に入れて管理するそう。飛行機1機につき、何万ものスクリューが使用されている。管理するのも大変だ。
航空業界は、かつて移動手段の主流だった船に多大な影響を受けていると宮田さんが説明してくれる。その名残で今でもSHIPは船ではなく、航空機を指す用語として使用されているそうだ。
「へえ~」と感心していると、「メインは第2格納庫(M2)ですよ!」と宮田さん。「滑走路と同じ幅」という60mの陸橋を渡り、第2格納庫へ!
飛行機が目の前に!第2格納庫
第2格納庫に入ると、目の前に3機の飛行機が!見学者一同、思わず「うわー!」と大興奮。
工場見学中は、第1格納庫では2階から飛行機を見る。だが、第2格納庫では1階に降りるため、より間近に飛行機を見ることができるのだ。
第2格納庫は主に修理を行う。だが、飛行機の体重測定(ウエイト&バランス作業)をすることも。宮田さんによると、飛行機は2年に一度体重測定を実施するという。重い機体の体重をどうやって測定するのか。宮田さんに聞くと、「飛行機の脚に機械をつけて測定する」と答えてくれる。
「飛行機の体重は摩耗や装備の変更、修理などいろいろなことで変わります!」「機体には(燃料が入っているので)離陸する時は重く、着陸する時は軽いんですよ!!」とスイッチが入り、怒涛のごとく解説してくれる宮田さん。
……「飛行機への愛」が止まらない宮田さんに圧倒される松宮&一同。
ちなみに飛行機を購入する際に、エンジンのメーカーを選択できるとのこと。
宮田さんによると、最近のエンジンは性能が上がり、パワーアップしたそう。だが巨大化して重すぎるため、エンジンの形のままでは陸送できなくなったんだとか!そのため、「羽田空港で一度エンジンを分割。その後、成田空港にあるエンジンの整備工場まで運んでいる」と宮田さん。やはり「何事にもメリット・デメリットがあるんだな」と思う。
第2格納庫には、日本初のジェット旅客機・ダグラスDC-8(FUJI号)の機首部分も展示されている。1960年に国際線の羽田・サンフランシスコ線を就航。1966年6月にはビートルズが来日した記念すべき旅客機と同型機だ。
第2格納庫のすぐ近くには羽田空港の滑走路があり、離発着する飛行機をすぐそばで見ることができる。……ああ、まさに至福の時!
遠方に見える飛行機が段々と大きくなり、目の前を通り過ぎて煙を上げ、着陸する。
「ああ、この場所は本当に特等席だな……」としみじみ思っていると、「ほら、あれはオレンジだからボーイング!」「これは白っぽいからエアバス!!」と叫ぶ宮田さんの姿が!!!
……飛行機のライトで機種が見分けられるということなのか?
わからないが、目を輝かせて叫ぶ宮田さんを見ると、「本当に飛行機が好きなんだな」とほほえましい気持ちになる。
楽しい時間ほど早く終わってしまう。ここでタイムアップ。宮田さんともお別れだ。
「もっとずっと見ていたいな」と思いつつ、歩いていると音楽が聴こてくる。不思議に思い、宮田さんに尋ねると「整備士は朝・昼・晩と1日に3回ラジオ体操をする」と解説。
これも、「整備士の日常」を垣間見た貴重な瞬間だ。
「JAL工場見学」の魅力は、飛行機を間近に見れるだけではない。航空業界のスペシャリストに現場の話を聞いたり、展示物などで歴史を楽しく学べたりできる。
制服体験やコックピットなど、写真スポットもあるのもうれしい。 だがなによりも、元整備士・宮田さんや元客室乗務員の方から感じた「飛行機への愛」「職人魂」「プロの姿勢」が印象に残った。
格納庫という「非日常」の環境。その中で、機体を修理する「整備士の日常が垣間見れる」。久しぶりにワクワクしてしまった。