ヤマハ発動機は、「ART for Human Possibilities 人はもっと幸せになれる。」という長期ビジョンを掲げ、ロボティクスの活用、社会課題への取り組み、モビリティの変革の3つを軸に、将来のコア事業となる新規事業開発に注力している。この取り組みを強力に推進してきた、同社技術・研究本部NV・技術戦略統括部統括部長の青田元氏が、新規事業の「未来予想図」を構築・共有し実行に移していくためのポイントを、事例を交えながら解説する。

※本コンテンツは、2022年10月24日(月)に開催されたJBpress/JDIR主催「第3回経営企画イノベーション」の特別講演「ヤマハ発動機の成長戦略~新規事業の創出を通じたトランスフォーメーション~」の内容を採録したものです。

将来のコア事業創出に向けて、新規事業開発に取り組むヤマハ発動機

 総合商社を経て2017年にヤマハ発動機に入社し、新規事業推進、経営企画を担当してきた青田元氏。2020年には、シリコンバレーでイノベーションをけん引するYamaha Motor VenturesのCEOに就任(現Chairman)、現在は再びヤマハ発動機で新規事業推進、技術戦略を主管する、技術・研究本部NV・技術戦略統括部統括部長を務める。

 ヤマハ発動機は1955年に、ヤマハから二輪車部門が分離・独立して創業。現在は、ランドモビリティ事業、モーターボートなどの水に関連するマリン事業、ロボティクス事業の他、金融サービス業、車いすや発電機など多くの事業を手がける。2021年度の連結売上高1兆8124億円のうち、約9割を海外が占め、事業別にはランドモビリティ事業が6~7割、マリン事業が2割を占める。「それ以外の約1割から、事業の柱を生み出すことが、新規事業推進チームに課せられている宿題です」と青田氏は語る。

 一方で、2024年までの中期経営計画では「コア事業の稼ぐ力」を強め、サステナブルな社会に貢献する「新規・成長事業に投資」し、「デジタルと共創の加速」で成長力を高めるとしている。上図は横軸にROIC(投下資本利益率)を、縦軸に売上高成長率を取った同社の事業ポートフォリオだ。左上は将来のコア事業を生み出すために新規事業に投資していく領域であり、2024年までに売上高300億円という目標を据えて取り組む。

「例えば、インド・ナイジェリアでのモビリティと金融をかけ合わせたアセットマネジメント事業、ゴルフカーなどの低速モビリティの自動走行、医療・健康分野、農業分野でのロボティクスの活用など、すでに新規事業の種が芽を出し始めています」