会社で掲げるキーワードは「再生」
生産面での環境が整ってきていたタイミングでの依頼ではあるものの、縫製にかかる工賃のみということで、ビジネスとして考えると直接的な利益にはつながらないこの取り組み。にもかかわらずゴー・サインを出したのはどういった理由からなのだろうか。
「会社として環境に配慮したビジネスをいくつかスタートさせていまして、そうした流れのなかで小沢さんのプロジェクトもとらえています。環境配慮や環境循環型の取り組みでは、たとえば、今年、福島県の双葉町で再生事業を本格的に始動します。既製品のお直しなどはもちろんですが、デッドストックを再生させるようなこともやろうと考えていまして、経済産業省と環境省の力を借りながら計画を立てて認可を得られました。年内に工房とショップを構える予定です」(宮下さん)
「弊社の社長がこだわっているのは『再生』というキーワードなんです。ですので小沢さんのプロジェクトも『いろいろなところで不要になったものを再生する』という点でつながっていますね」(小山さん)
ものづくりに携わっているからこそのアイデア
実際の生産においては「大きなロールで届く生地もあれば少量だけというものもあって、それらのなかで同じ幅の生地を重ねて自動裁断機で切っていきます。『この幅ならいくつ取れる』というマーキングをするわけですが、その段取りには少し時間がかかりましたね。おもて面(織ネームがつく側)と裏面の組み合わせを私ともう一人女性スタッフで決めて縫製にまわします」(堀内さん)。
開口部につく紐も端切れなどを撚って作っている。「これは私のアイデアなんです。生地ってどうやっても『耳』(反物のサイド部分)は余ってしまいます。これをうまく使える方法はないかと考えたところ『編めば紐にもなるかな』と気づいて試しに何本か試作してもらったら面白いものが出来上がりました。今では専用の撚り機を購入して大量に生産できるようにしてあります」(小山さん)。「やっている途中で、不要となったパイピング用の細い生地もこの紐に使えるなと思い、それも取り入れていますね」(堀内さん)
実際にものづくりに携わっているからこそ生まれてくるアイデアに感心することしきりであった。この#残反ショッパープロジェクトに現場で関わるフレックスジャパンの人々にとっても刺激になっているそうで、この経験で得られた知見が今後の商品づくりにも生かされるのではないだろうか。
お話を伺ったあと、同敷地にある工場を見学させてもらった。前述の通り自動裁断機などのテクノロジーは導入されているが、多くの工程は人の手によるもの。あまり見ることのない縫製の現場は大変勉強になった。