「EDISTORIAL STORE」初訪問
フレックスジャパンでの取材を終え、ふたたびしなの鉄道に乗って上田駅へ。小沢さんと合流し、昼食を摂ってから「EDISTORIAL STORE」にお邪魔した。「EDISTORIAL STORE」の入る物件は上田駅からゆっくり歩いて10分弱のところにある。駅前から延びる松尾町商店街はどこか温泉街を思わせるのんびりしたムード。昔ながらの店に交じって洒落たカフェなども点在している。
「EDISTORIAL STORE」の1階部分は小沢さんの奥様によるラッピングとギフト雑貨の「Bon Cadeaux(ボン カドゥ)」とカフェ・スペース「EASY BAKE(イージーベイク)」。ご挨拶して上階に向かうと、品出しなどの開店準備が進んでいた1階とは違いがらんとした印象だ。聞けば、内装を担当している「GOO FACTORY」が什器搬入や内装作業をおおむね完了させたところで、これから商品を徐々に並べてゆくのだそう。店内を案内してもらう前に、フレックスジャパンでの話などをしつつ、小沢さんへの取材はスタートした。
目に見えるところでの「再生の連鎖」
「フレックスジャパンに#残反ショッパープロジェクトの相談を最初にしにいったとき、『こういうバッグを残布を使って作りたいんです。ドローコードはまぁアウトドア屋さんで使っているようなありものをつけてもらって……』といったら、フレックスの小山さんが『小沢さん、そこまでやるんだったらパーツも再生ものでやらないと意味ないんじゃないですか』と。それで、『何かできないか』と堀内さんが取っていた、どうやっても使いきれないシャツ生地の耳の部分––––今までは捨てるしかなかったところ––––を小山さんが撚って紐状にしたものを持ってきてくれたんです。
それを見て『これつけた方が100倍かっこいい』と使わせてもらうことにしました。あの紐はピックアップした商品にひと手間加える『マッシュアップ』というシリーズにも転用させてもらおうかな、と思っているところです」。この紐は、本記事の前半に記したもののこと。相談しにいったら逆に提案されて、再生の連鎖が起こるといういい話である。
これ以外にも、「EDISTORIAL STORE」にかかわるブランドや企業が「再生」や「循環」を念頭においた対応をしてくれるという。それぞれが無理のない範囲で精一杯のできることを行う。これは事業を継続してゆくうえでも、環境配慮や循環型経済を目指すうえでも非常に重要なことであろう。
フィッティングにも注目の2階
さて、そろそろ一般にはあまり目にすることのない「空間としての店舗」をフロアごとにご紹介していこう。壁と天井を明るいトーンのウッドでまとめた2階で目を惹くのは、グリーンのカゴ型什器。「商品を選ぶ際、いろいろなブランドや企業の倉庫に行って、カゴ台車って便利だなぁと改めて思いました。そのカゴ台車の上部にポールを渡してハンギングできるようにしています。キャスターつきで移動が楽というのも重要ですね」と小沢さん。
3段のチェストをふたつ直角に置いたような什器はレジ・カウンター。もともと小沢さんが所有していた横長のチェストを一度切断してつなげたものだそう。フロアのスペースに比して広々とした印象のフィッティング・ルームには〈NEXUSⅦ.〉〈MOUNTAIN RESEARCH〉〈YAECA〉の3ブランドによるコラボレーション・ソファが置かれている。
ミニマルな空間で見せるスタイリストの矜持
取材時点で2階はあらかた完成ということだったが3階はまだ途中段階。「ワイヤーを配して、そこにスタイリングしたルックをハンギングしていきます。この空間に6ルックくらいのイメージですね。スタイリストのキャリアを店に落とし込むにあたって考えたのは『ルックを見せる』ということの重要性でした。この見せ方は2階でもやるんですが、3階はそれをもっと突き詰めて、自分の私物や古着などの売り物ではないアイテムも交えてスタイリングしようと思っています」(小沢さん)。ミニマルかつメタリックな印象を持たせたこのフロアにどのようなスタイリングが並ぶのか、実に楽しみである。
さて、「EDISTORIAL STORE」は本記事の公開前、2022年5月1日にオープンの運びとなった。すでに足を運ばれた方もおられるかもしれないが、小沢さん曰く「落ち着くのはおそらく5月の終わり頃」とのことなので、そのあたりをめがけて再度お邪魔してオープン後の様子をお届けできればと思う。