原点となった学研都市線での逃避行

 私が鉄道にはまった原点を振り返ると、高校時代の電車通学にあったのではと思い当たります。利用していたのは、学研都市線の愛称で親しまれているJR片町線。この路線は大阪府の京橋駅から京都府の木津駅までつながっています。

「学研都市線」の愛称で親しまれる片町線。写真=GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 私は自宅方面の京橋駅から高校がある四条畷駅までの区間を利用していましたが、落ち込んでいる日やなんとなく気分が乗らない日の学校帰りには、四条畷駅から自宅とは反対の木津方面行きの電車に乗ることがありました。

 この路線は、木津方面に向かうほどに次第にのどかな景色が広がっていきます。音楽を聴きながら車窓の風景を眺めて、夕日が沈んでいく様などを見ていると、落ち込んでいた気分が何となく楽になっていく。木津まで行って京都の空気を味わって戻ってくると、自然と癒されて元気になっている自分がいたのです。

 手軽な逃避行とでもいうのでしょうか。私は鉄道というのは、どこか逃避的なところがあると思っています。都会では暮らすだけで情報量も過多で、知らず知らずのうちに澱のようにストレスが溜まっていく。鉄道旅でローカル線に乗っていると、それがどんどん洗い流されていく感覚があります。そういうところが鉄道の一番の魅力だと感じています。