談=中野香織 構成=山下英介
服飾史家の中野香織さんが読み説いた〝時代の潮流〟と、そこに基づき選んだ最新のスタイル特集「〝モードの転換点〟として2020年を読む|LOOKBOOK 2020 Spring and Summer」。その第3弾は、 来たるべきパーソナルの時代を見据えて。
決してブレないクリエイターたち
スポーティなワードローブを増やしつつも、美しいテーラードジャケットを一貫してつくり続けている〝トム フォード〟、頑なにフュージョンを認めない〝ドルチェ&ガッバーナ〟、そして〝ジョルジオ アルマーニ〟や〝セリーヌ〟のエディ・スリマン……。こうした決してブレることなく、頑なに自らのアイコン的世界観を貫くブランドも、やはり一定数のファンを捉え、決して離さない強さを持っています。
やがて訪れる、「パーソナルの時代」の起点に
現在定着している、年に4回コレクションを発表するというサイクルは、1947年にクリスチャン・ディオールが始めたものです。しかしこういったシーズンごとに新しいものを提供するという考え方は、曲がり角にきているような気がします。人々の美に対する概念もまちまちになり、シーズンごとの大きなトレンドもなくなりつつありますから。
最近、私のまわりにいる20代のファッションマニアたちは気軽にブランドを立ち上げて、自分たちが着たい洋服をつくり、それらをネットで販売しています。そんな誰でもデザイナーになれる時代においては、モードとは再びオートクチュールのような存在に戻っていくのかもしれません。そして誰もが自分の好きな洋服を着るようになる……。そんな時代が到来するのでしょう。
おそらく10年、20年後の人々は「2020年が、私たちのファッションの転機になった」と語り継ぐでしょう。それほどに2020年とは、克明に記録されるべき重要な時代なのです。
この記事は2020年4月20日に配信したものです。
ジョルジオ アルマーニ|GIORGIO ARMANI あるがままに
エルメス|HERMÈS 風の吹くまま
トム フォード|TOM FORD セクシーの温度
セリーヌ|CELINE フレンチシック再び
ドルチェ&ガッバーナ|DOLCE & GABBANA 美しき冒険者たち