(写真左)インフォアジャパン ソリューションコンサルティング本部 本部長 佐藤幸樹氏(写真右)アマゾン ウェブ サービス ジャパン シニアインダストリースペシャリスト ソリューションアーキテクト 山本直志氏
DXを「表層的なデジタル化」で終わらせず、持続的な企業価値向上へとつなげるには何が必要なのか。現在、モダナイゼーションに取り組む企業は増えているが、システムを新たにしただけで価値が生まれるとは限らない。それは一時的なDXにとどまる可能性がある。では、持続的な成果を生むDXのカギはどこにあり、それらを実現するシステムやAI基盤とはどのようなものなのか。インフォアジャパン(以下インフォア) ソリューションコンサルティング本部 本部長の佐藤幸樹氏と、アマゾン ウェブ サービス ジャパン シニアインダストリースペシャリスト ソリューションアーキテクトの山本直志氏が意見を交わした。
DX成功に必要なのは「ビジネス価値」というゴール設定
テクノロジーへの投資により「今後3年間で20%以上の生産性向上を期待している」と回答した企業は75%に及んだ一方、実際のDXプロジェクトで得られている成果は期待値の30%にしか達していない――
これは、インフォアが行ったグローバル調査の結果から得られた「DXの実情」である。同社は業界特化型ERPを展開し、世界中の企業のDXや、その基盤となる経営システムの構築を支援してきた。
企業のIT投資は増えているが、全てが結果につながるとは限らないのも事実だ。ではDXで確かな成果を生み出すためには、何が必要なのか。国内製造業のITプロジェクトに数多く携わってきたインフォアの佐藤氏は、そのポイントをこう考えている。
「社内のシステムを新しいものにリプレイス(置き換え)すれば、DXで大きな成果が生まれるわけではありません。大切なのは、システムを刷新することで何を達成したいのか、どのような“ビジネス価値”を生み出したいのかをまず考え、それを実現するためのIT環境を構築していくことだと考えています」
インフォアジャパン ソリューションコンサルティング本部 本部長 佐藤幸樹氏
佐藤氏の言う“ビジネス価値”とは、在庫の最適化や中間コストの削減、人件費の抑制、サプライチェーンのレジリエンス確保など、企業が具体的に解決したい経営課題を指す。同氏によると、現状のERP 導入の提案依頼のうち、80%は既存システムの保守終了(EOL)が理由になっているとのこと。IT環境を見直すきっかけとしてはいいが、システムを刷新すれば確実にビジネス価値が創出されるとは限らない。
だからこそ、そのシステムで何を達成したいか、経営戦略と一体化してプロジェクトを進めていくことが必要だという。それが「形だけのDXや一時的な施策から脱却し、持続的に成果を生み出す改革になります」と力強く告げる。
経営戦略と一体化したDXを行うには、経営者中心でプロジェクトを進めることが重要になる。自社の経営課題を明確にし、それに基づいてシステムのあり方を発想できるのは経営者だからだ。そういった理由から、DXを「IT部門の管轄」とするのではなく、「経営者の方が主体となって進めてほしい」と佐藤氏は伝える。
こうした思いを基に、インフォアはAmazon Web Services (AWS) と10年来のパートナーシップを組み、クラウドERPを通じて企業のビジネス価値創出を支援してきた。両社の連携について、佐藤氏はこう話す。
「インフォアのソリューションはAWS上で稼働しており、あらゆる部分にAWSのテクノロジーやアプリが使われています。例えば近年、インフォアではAIエージェントの開発を進めていますが、それらにもAWSのAIモデルやAPIが活用されています。さまざまなレイヤーにおいて、共にエコシステムを構築してきました」
「業務最適化視点」のIT基盤が生み出すメリット
この連携によって作られたインフォアのソリューションは、まさにビジネス価値を生み出すためのものである。そして二人は、これらを活用した「業務最適化視点でのDX」こそが持続的な成果を生み出すと伝える。
業務最適化視点とは、業界特有のプロセスや、現場のリアルな作業にフィットしたIT基盤を構築することといえる。例えばERPを導入するにも、業界やビジネス形態によって各社の業務プロセスは異なる。ERPには汎用的な製品もあるが、それらでは業界特有のプロセスに対応できないことも少なくない。そのミスマッチを解消しようとすれば、カスタマイズが増えてしまう可能性もある。
それに対して、インフォアのクラウドERPは製造業や自動車産業を始めとする8つの業界に特化したソリューションを提供しており、業界ごとの業務フローに沿った設計となっている。最初から業務に最適化されているのが特徴だ。
例えば「産業機械製造装置」業界では、顧客のニーズを基に機械を設計・製造する“受注生産”が多くなる。一方、「自動車部品メーカー」では、顧客から事前に内示注文を受けて、それに沿って納期に間に合うよう生産していく形が増える。このように、同じ製造業でも業界によって業務プロセスは大きく異なる。その違いを内包したシステム設計といえるだろう。
「ビジネス価値を生み出すためには、各業界に適したERPを活用していくことが重要です。それはカスタマイズを減らし、Fit to Standardを実現しやすくするのです。結果、ERPの効果を最大化していきます」(佐藤氏)
併せて、食品業界なら賞味期限管理システム、自動車業界ならEDI(電子データ交換)など、業界ごとに頻繁に使われるツールとの連動が充実しているのも特徴だ。「ERPというと、販売・生産量や在庫、会計といった領域だけのシステムと思われがちですが、インフォアはその外にある業界特有のシステムと連携することで、より細かなビジネス価値を追求できます」(佐藤氏)
業界特化型ERPの利点は、データ統合のしやすさにもある。そもそも現場業務に合わせたERPが用意され、なおかつ各業界で独自に使うシステムとの連携が強いため、情報のサイロ化やシステム間の断絶が起きにくい。
「私の個人的な感覚として、製造業DXの約8割は『データを集めてつなげる作業』に費やされていると感じます。海外拠点やM&Aでグループ入りした子会社のデータ、あるいは社内のサイロ化されたデータをつなぐ手間は膨大であり、その点でインフォアのERPは強みでしょう。素早くデータを統合し、クラウドに集約できるのは強みだと考えています」と語るのはアマゾン ウェブ サービス ジャパンの山本氏。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン シニアインダストリースペシャリスト ソリューションアーキテクト 山本直志氏
なお、このソリューションはSaaS型クラウドERPであり、それによるメリットも大きいと山本氏は告げる。
「近年の技術革新のスピードはすさまじく、3カ月前に話したことがもう変わっている状況です。こうした変化にどう追従していくかは企業の命題でしょう。最新技術を素早く取り込み、継続的に進化できるという点で、SaaSソリューションであることには大きな意味があります」(山本氏)
ERPが業務の「文脈」を理解して価値を生んだ事例
業界に特化したERPだからこそ、幅広いビジネス価値を生み出せるという。その1つとして佐藤氏が紹介するのは、フォークリフト製造を行うある企業の事例だ。
同社は、顧客のニーズに合わせてさまざまな仕様のフォークリフトを製造しており、使用部品も車両によって異なることが多かった。そこで課題となっていたのが、故障対応の煩雑さだ。顧客から故障の連絡が来ると、まずは担当者が現場に行き、該当車両に使用されている部品を確認する。その後、拠点に戻って必要な部品を取り、再度現場に出向いて修理するという手間が発生していた。
「これに対し、インフォアのソリューションを活用することで、故障状況を聞いた時点で過去のデータからAIが必要部品を特定するようにしました。それにより、初回訪問での修理完了率が上がっています。受注生産や故障時のアフターサービスの手順など、この業界のプロセスや“文脈”を理解しているからこそできたと考えています」(佐藤氏)
AIエージェントにおいても「業界特化型」が優位に
AI活用が盛んな昨今だが、この領域でも「業界特化型のAIモデル」を使うことがビジネス価値の創出につながりやすいと二人は考える。例えば、企業ではAIエージェントの導入が進んでいるが、これらについても、業界特有のプロセスを深く理解しているエージェントほど高度な作業を行えるようになると話す。
それに関連して、山本氏はこのような話を紹介する。例えばある自動車会社で、顧客満足を高めるために「注文車両の納車日をAIエージェントで正確に予測したい」と考えたとする。しかし、その予測は単純なようで極めて複雑な作業だという。生産計画、部品調達、配送ルートなど、さまざまな要素が関わるためだ。加えて、代理店との関係性なども影響する。
「AIエージェントがこの予測を精度高く行うには、自動車業界のプロセスや事情を理解することが不可欠です。このような例は、他の業界でも同様に考えられるでしょう。AIエージェントで高いビジネス価値を生みたいと考えるほど、業界特化型が必要になるのではないでしょうか」(山本氏)

インフォアでは、すでに業界や業務に特化したエージェントを開発している。製造業、流通業、サービス業向けに構築されたエージェントや、プロジェクト費用予測の専用エージェントを2025年10月から提供開始した。今後も、ラインアップを継続的に拡充していくという。
「業界に特化したエージェントを活用するには、その業界特有のプロセスで発生するデータを十分に蓄積しておく必要があります。インフォアのERPは、その点で多くのデータを有しています。これは汎用的なERPとの違いではないでしょうか」(佐藤氏)
例えばプロジェクト費用の予測などは、まさに業界特有のプロセスや事情、費用計算のノウハウが必要になる。こうした点で、インフォアのERPに存在するデータが価値を持つという。
経営戦略との一体化で「持続的なDX」の実現を
クラウドERPやAIエージェントを活用する企業は、今後間違いなく増えていくだろう。しかし、それらを使えばビジネス価値が生まれるとは限らない。佐藤氏は、DXを形だけのものにせず、持続的な企業価値を生むために改めてこんな言葉を口にする。
「これからも新しい技術は次々と現れるでしょう。大切なのは、それらを活用することで『どう企業のビジネス価値を実現するか』という視点です。経営者の方には、ぜひその取り組みをリードしていただきたいですし、私たちもお客さまに伴走してサポートしていきたいと思います」
佐藤氏は、ITソリューションを提供するだけでなく、そもそも今どのような経営課題があり、それに対してITでどうビジネス価値を作るのか、こうしたフェーズからサポートしていきたいという。
山本氏も、DXを成功させるカギとして、このような言葉を企業のリーダーに投げかける。
「革新的なテクノロジーが多数登場していますが、一度に全てを採用するのは現実的ではありません。自社で生きる技術は何か、逆に今急いで導入しなくてよいものは何か、この“境目”を見極めて集中的に投資することが大切ではないでしょうか。それらの判断を正確に行うには、やはり最初に『ITで生み出したいビジネス価値』を定義することが重要だと考えています」
形だけのDXから脱却するカギは「経営戦略との一体化」に他ならない。DXの施策を行う前に、まずは自社の経営課題を浮き彫りにし、その解決に必要なITの仕組みを考える。こうした過程を経て、DXをスタートするのが大切だろう。そこで成果が生まれれば、また次の施策につながり、持続的な改革になっていくはずだ。
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