
急速に変化するビジネス環境においては、企業の経営管理にも柔軟な対応力が求められる。それを受け、既存のシステムのモダナイゼーションに関心を持つ企業が増えている。しかし、単に基幹システムをクラウドに移行しただけでは課題の解決につながらない。ビジネスの変化に柔軟に対応できる真のモダナイゼーションを実現するために、どのような取り組みが必要なのか。具体的な事例とともに解説する。
※本コンテンツは2024年11月21日(木)に開催された「競争戦略×経営管理フォーラム in 東京 ~消費財・流通/小売業のバリューチェーンDX~」の日本オラクル 三谷 英介氏の講演内容を要約した採録記事です。
企業の競争力強化には、クラウド化やデータ活用が不可欠
日本オラクル クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括 執行役員 三谷 英介 氏
2018年の9月に経済産業省によって、DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート「~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を発表されてから、あっというまに2025年を迎え、「2025年の崖」が喫緊の課題になっています。「2025年の崖」とは、既存の基幹システムなどが、レガシーシステムと呼ばれるような古い仕組みになってしまうことです。これらをそのまま使い続けることによって経済損失も大きくなります。
ITベンダーなどの中にはオンプレミス(自社所有)のシステムの保守期間を延長して対応しようとしているところもありますが、オンプレミスのシステムをカスタマイズやアップグレードするコストも少なくありません。
経産省のレポートにも示されているとおり、企業は、「技術的負債を解消し、人材・資金を維持・保守業務から新たなデジタル技術の活用にシフト」すること、「データ活用等を通じて、スピーディな方針転換やグローバル展開への対応を可能に」することなどが求められます。そして、その実現のために有効なのが、オンプレミスのシステムをクラウド化しデータを共有することです。
図1:経済産業省「DXレポート」より抜粋。企業には、2025年までの間に、複雑化・ブラックボックス化した既存システムを刷新し、DXを実現することが求められている。拡大画像表示
ただシステム移行するだけでは不十分、真に求められているモダナイゼーションとは
「2025年の崖」は消費財・流通/小売業の企業にとっても深刻なテーマです。保守期限が終了しセキュリティリスクのあるような老朽化したITインフラでは、ビジネス環境の変化に対応することは困難です。柔軟な対応で企業の競争力を強化するためには、システムのモダナイゼーション(近代化)が必要になります。
モダナイゼーションを実現するものとして、一般的に導入が進んでいるのがクラウド化です。ただ、ここで注意すべきは、単に従来型のERP(統合基幹業務システム)をクラウドに移行しただけでは、モダナイゼーションにはならないことです。
従来型のERPをクラウドに移行しただけでは、引き続き5年に一度の大幅アップグレードが必要です。また、定期的にバージョンアップのコストもかかります。これでは最新環境に更新できず、セキュリティリスクも高まります。さらに、AI(人工知能)などの技術革新の価値も享受できません。
図2:AI時代に入り、ただクラウド移行するだけではないモダナイゼーションが求めらている。拡大画像表示
システムのモダナイゼーションを実現するために取り組むべきは、ただシステムを移行させるSystem Integration(SI)でなくDigital Transformation(DX)なのです。さらに、ビジネスの変化に柔軟に対応するためには、企業ごとの仕様に合わせた作りこみに時間をかけるのではなく、いかに早くビジネス成果を享受するかを考え、抜本的な改革を行うことが大切です。
生成AIの活用による経営管理の高度化
高度な経営管理にはAIや最新セキュリティなど技術革新の価値の活用も重要なポイントとなります。すでに多くの企業でAIの活用が進んでいると思いますが、現状はまだAIの活用方法を試行錯誤しているところが多いようです。
「それに対して弊社が提供する『Oracle Fusion Cloud Applications』では、日常経理業務、決算処理、予測・分析、監査、開示・報告などの定型業務について、AIを活用した自動化などの機械学習機能があらかじめ組み込まれています。例えば、発注書なしの請求書の処理は、買掛金担当者にとって面倒な作業になりミスも起こりがちですが、『Oracle Fusion Cloud Applications』なら、勘定科目の配分などをAIの学習による予測機能で自動化できるため、担当者の負担を軽減し生産性を向上させます。当社では今後も、AIのテクノロジーをさらに進化させ、『AIエージェント』と呼ぶさまざまな機能をリリース予定です」と三谷氏は紹介した。
図3:「Oracle Fusion Cloud Applications」を会計業務プロセスに活用することで、AIが「日常経理業務」、「決算処理」、「予測・分析」、「監査」、「開示・報告」まで自動化して処理することが可能。拡大画像表示
消費財・流通/小売業における経営管理システムのモダナイゼーション事例
セッションでは、消費財・流通/小売業におけるいくつかのモダナイゼーションの事例も紹介された。
ある大手ヘアケア・スキンケアメーカーでは、オラクルのクラウドERPにより、R&Dからサプライチェーン、会計まで統合された経営基盤の構築を実現した。また、ある大手飲料メーカーでは、社会のデジタル変革に対応するため、単に従来型のERPを乗せ換えるのではなく、基幹システムを最新テクノロジーのクラウドERPへの移行を進めている。これにより、生産性の向上はもちろん、迅速な経営判断につながると考えている。
「『Oracle Fusion Cloud Applications』は2012年以来多くの消費財・流通/小売業のお客様にご利用いただいており、成功事例も多数生まれています。その要因の一つは当社が推奨する『Fit to Standard』だと考えています。『Fit to Standard』は、新しくクラウドERPなどを導入する際に、そのパッケージの標準機能に業務を合わせる方法論です。まさに、世界の『ベストプラクティス』を導入することで、変革を実現することができるのです」(三谷氏)
また、日本オラクルでは世界各国のクラウドでの稼働事例のほか、日本固有の課題に対するアプローチも豊富に有しており、これらの顧客体験を「OATUG」と呼ばれるユーザー会などで情報を提供している。
持続的な成長と変化への対応力を高めるモダナイゼーション
企業の持続的な成長のためには、従来のシステムでは対応できなかった、経営管理の高度化を支えるクラウドネイティブなシステムへの移行が求められます。さらに、新たなビジネスチャンスの創出にむけて、現行の業務を踏襲するのではなく、業務、プロセス、企業風土を改革するイノベーションの取り組みが重要です。そのためには、単に法制度に対応するだけではなく、日々進化するセキュリティ脅威を防ぎ、AIなどの最先端技術による業務革新が必要となります。
セッションで紹介された変革を実現する「Oracle Fusion Cloud ERP」のような、クラウド型のERPの実装において先駆者となる企業はすでに多く生まれている。
もちろん、現行のシステムからの移行は大きな困難も伴うだろう。三谷氏は「私たちはそのような先駆者からのフィードバックを多くのお客様にさせていただく責任があると思っています。従来のやり方を変え、モダナイゼーションを実現したいというお客様を引き続き支援していきます」とセッションを結んだ。

顧客の変革、成功にコミットする
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