SAPジャパン エンタープライズクラウド事業本部 S/4HANA Public Cloud事業部 事業部長 阿部 洋介氏

 原材料の高騰や地政学リスクといった経営課題が山積する中、多くの企業がDXをはじめとした業務の変革を模索し続けている。一方で、人手不足に拍車がかかり、経営資源に限りのある中堅中小企業では、その実現は容易ではないように思えるが、「そんな中堅中小企業にこそ、世界標準の経営変革を実現してほしい」とSAPジャパン エンタープライズクラウド事業本部 S/4HANA Public Cloud事業部 事業部長 阿部洋介氏は話す。どのように実現するべきか、詳しく聞いた。

中堅中小企業が直面する様々な課題

 大規模な自然災害や地政学リスク、原材料価格の高騰、為替リスク、人手不足など、中堅中小企業の経営環境には課題が山積している 。中でも、人手不足は企業の成長を阻害する大きな要因となっている。2024年版「中小企業白書」によれば、従業員数が「不足」していると回答する企業が「過剰」と答える企業を大きく上回っている。労働生産人口の減少が目に見えている中、事業を継続しさらに発展させていくには、生産性を向上させるためのDXへの取り組みが必要不可欠なことは言うまでもないだろう。

 SAPジャパン エンタープライズクラウド事業本部 S/4HANA Public Cloud事業部 事業部長の阿部洋介氏も「どの企業においても人手不足が切実な問題になっています。特に、今までは属人的に行っていた業務、その人の『経験や勘』で行えていた業務を承継する人材がいなくなっています」と話す。

 例えば製造業であれば、経験豊富な営業担当者が「あの顧客からそろそろ受注が出そうだ」という感覚をもとに自社の製造部門などの担当者に在庫を確認したり、足りなければ準備をしたりということもできた。さらに長年の知見で「利益率の高い優良顧客」などが頭に入っていた。ただ、たとえ『経験や勘』を継承できたとしても、それらは数値化ができず、根本的な解決にはならないと阿部氏は指摘する。

「『経験と勘』に頼った状態では経営者は、自社の現状を正確に把握できていませんでした。最近になって、表計算ソフトや、さまざまな管理ツールを使って情報を集約しようとする中堅中小企業も出ていますが、いずれも部分最適に終わっており、経営者目線での全体最適になっていないのが実情です」

 購買・在庫管理、生産管理、輸送管理、販売管理から財務資金、財務会計、管理会計などを連携しなければ、経営者がリアルタイムで最適な情報を入手し、意思決定を行うことは難しい。その連携を実現するためにはシステムの導入は勿論、業務そのものを変えていく必要がある。その実現のために、「中堅中小規模の企業様で、ERPに関心を持つ企業が増えきています」と阿部氏は言う。

中堅中小企業こそ、ERPを使うべき理由

「実は日本市場に限って、現在、SAPのユーザーのうち、8割以上が中堅中小企業のお客様となっています」と阿部洋介氏は語る。

「SAPは高額で、大手企業向けのもの」と考えている人もいるかもしれないが、それは誤解だという。「実はこれまでも、中堅中小企業からの引き合いや実際の導入も増えていました。さらにそれを加速したのが、2023年に『GROW with SAP』の提供を開始したことです」。

「GROW with SAP」は、クラウドERPの「SAP S/4HANA® Cloud Public Edition」をベースにしながら、中堅中小企業においてもクラウドERPのシステム導入と運用を容易にするものだという。

 なぜ「SAPは高額」というイメージが先行してしまったのか。そこには日本企業ならではの独特のニーズがある。

「世界の市場の中でも、日本企業は『うちの業務のやり方は独特なので』と、カスタマイズやアドオン(追加開発)を前提とすることが少なくありません。このため、開発費用や運用費用がかさみ、プロジェクトのローンチまでの期間も長期間になりがちでした」

 しかし、アドオンの増加はシステム障害などのリスクも生む。そのため、世界のベストプラクティスとも呼ばれるSAP ERPの標準機能を、できるだけアドオンやカスタマイズをせずに利用するのがセオリーだ。

 興味深い事例もある。「『SAP S/4HANA® Cloud Public Edition』を導入された企業は、大手企業であっても半年程度でプロジェクトをローンチさせている例が少なくありません。当社の試算では、導入後のビジネス効果実現までの時間を40~60%削減、コンサルティング費用を50%削減、プロジェクトコストを50%削減、TCO(総保有コスト)を40%削減できると見ています」

 クラウドスタイルのERPを導入することで、かかるコストや期間を大幅に削減できるわけだ。中堅中小企業向けの「GROW with SAP」なら、その効果がさらに際立つという。その理由となるのは、SAPが先駆けとなった「Fit to Standard」だ。「Fit to Standard」とは、業務をシステムに合わせることを徹底する考え方だ。SAPが提供する世界基準のシステムに合わせて業務を変えていくことで、世界のベストプラクティスを最大限に活用し世界標準の業務改革を実現できるという。

Fit to Standardで短期間かつ低コストな導入が可能
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単なるシステム導入ではなく世界標準の業務改革を実現する

「『GROW with SAP』では、製造業はもとより、建設、金融、食品、商社・卸、小売業、旅行・レジャー、官公庁、教育機関など26の業種に対応するプロセス(機能)を用意しています」(阿部氏)という。さまざまな業種・業態の中堅中小企業で、「GROW with SAP」を導入し、「Fit to Standard」を実践することで、世界標準の戦い方を身に付けることができるようになるだろう。

 とはいえ、ERPの導入にあたっては要件定義だけでも専門的な知識が要求され、なかなか中堅中小企業では容易ではない。

「その点でも、『GROW with SAP』は使い勝手が良くなっています。『GROW with SAP』には800個のスコープアイテムという標準機能群があり、それぞれの機能の説明、業務フローがあらかじめ用意されています。『これがやりたい』とスコープアイテムを選択するだけで要件定義(スコーピング)が作成できます」

 逆に言えば、これらのスコープアイテムを眺めるだけでも、「世界の先進的な企業はこのような業務のやり方が標準になっているのか」と気づきが得られたり、自社に足りないものが発見できたりするだろう。

800個のスコープアイテムから自社に必要なスコープアイテムを選択するだけで要件定義(スコーピング)が可能
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 クラウド化によるメリットはもちろんのこと、グローバル企業との「Fit to Standard」が実現するとして「GROW with SAP」に関心を持つ中堅中小企業からの相談件数も増えているというのにも納得がいく。

 ただ、中には「ERPの導入を検討しているが、今のやり方を変えたくないと話す現場の社員の説得や教育・研修などに時間がかかりそうだ」と悩みを打ち明ける中堅中小企業の担当者や経営者もいるという。その点でもSAPジャパンは頼もしい存在だ。

「当社または当社のSIパートナーは、SAP ERPの導入・運用はもとより、『Fit to Standard』を現場に浸透させるプロセスなどにも豊富な経験を持っています。『GROW with SAP』を導入したいが、どこから始めたらいいか分からない、という企業の皆様もぜひお気軽にご相談いただきたいと願っています」と阿部氏は答える。

 実際に「GROW with SAP」を導入した企業からは「最初は現場の社員の抵抗もあったが、導入後はむしろ社員に喜ばれている」という声も多いという。

 クラウドで提供されるため、バージョンアップも6カ月に1回、自動的に行われる。人手不足のためバージョンアップが実施できないといった状況に陥ることもない。さらに、常に世界最新のシステムを用いることができる。

 ここまで紹介したように、「GROW with SAP」は、中堅中小企業にとって、コスト削減だけでなく、継続的な変革をもたらすものになるだろう。すでに課題に直面している企業はもちろんのこと、将来の課題を視野に入れた変革を目指している中堅中小企業はぜひ相談してみてはいかがだろうか。

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