垣根を超えて鉄道各社が協力

 だがSLを継続的に運行するためには、まだまだ越えなくてはいけないハードルがたくさんある。その最たるものが、実際にSLを動かす乗務員や点検、修理等をおこなう研修員の育成である。これに協力したのがすでにSLを運行しているJR北海道や秩父鉄道、大井川鐵道、真岡鐵道である。これら各社が持つ知識や経験を活かし、東武鉄道の職員に技術や技能などを教育し、SLの乗務員と研修員を養成したのである。さらにDL関連に至っては、真岡鐵道と会津鉄道も協力している。

 このように会社の垣根を越えて各社が東武鉄道に協力や支援をいとわなかったからこそ、「SL大樹」の運行を実現することができたのである。一つの列車の運行に関し、これほどまで多くの鉄道事業社が一致団結した事例があっただろうか。まるでドラマや映画のようななんという鉄道愛なのだろうかと、感動すら覚えてしまう。

 その後東武鉄道では真岡鐵道からC11 325号機を譲り受け、日本鉄道保存協会で保存されていたC11を123号として復活させて現在の3両体制とし、日光線を「SLふたら」としても運行するなど、ますますSLの活躍の場が広がっている。

 このような東武鉄道の努力に対し、沿線自治体や地元住民の期待も熱い。いざ「SL大樹」や「SLふたら」に乗ってみると、家の軒先から、会社の窓から、作業中の田畑から、あらゆる場所からあらゆる人たちが列車に向かって手を振ってくれているではないか。そんな光景を目の当たりにすると、SLがどれほど地域に根差し人々に愛されているのかを感じずにはいられない。

沿線ではいろんな人々がSL列車に向かって手を振ってくれる

 さて、この「SL大樹」を冬に撮影するのに絶好のポイントが、日光市倉ヶ崎にある通称「倉ヶ崎SL花畑」だ。地域の住民組織によって春から秋にかけてはさまざまな花で彩られるほか、冬の時期には約21万球のイルミネーションが設置され、光の花畑が演出されるのである。「SL大樹」のHPをみて、日没後に走る8号が運転される日に是非でかけてみよう。きっと夢のような世界を走る幻想的なSLの写真が撮れるはずだ。