17万人が使うシステムを統合し、意思決定のスピードを上げて後続プロセス含めた一気通貫の仕組みを実現したNTT
ここ数年で企業がデジタルを取り入れる動きは進んだが、各部門・業務でそれぞれ導入していったため、システムがサイロ化しているケースも少なくない。たとえば企業の意思決定に関わる「決裁」のワークフローを見ても、さまざまなシステムを経由するために、同じ内容を繰り返し入力するなど、工数や時間のロスになっているケースもある。これは意思決定の遅れにつながりかねない。
こうした“分断”をなくし、決裁にまつわる各システムやワークフローをひとつなぎにしようと考えたのがNTTと農林中央金庫である。そうして意思決定の迅速化を起こすのが狙いだ。
まずはNTTグループの取り組みから見ていきたい。同社は国内グループ115社、17万人が利用する決裁システムを抜本的に改革した。「取り組みの背景として、NTTグループでは各業務の連動性に大きな課題感を抱いていました。そこで今回、さまざまな業務を連携させようと考えたのです。決裁もその1つでした」。
フォーラムでそう語ったのは、NTT 技術企画部門IT室 次長の駒沢健氏だ。同社が目指したのは、決裁システムからその後の請求や支払い、会計という一連のワークフローすべてを連動させることだった。それは意思決定のスピードを上げるだけでなく、「支払い/請求から会計まで、すべてのデータを一気通貫で分析したい」という考えもあったという。
そこで同社が活用したのが、ServiceNowのプラットフォームだ。ServiceNowは、企業で使われているさまざまなツール・システムを1つに統合するもの。これにより、たとえば部門をまたがるワークフローをE2E(エンド・トゥ・エンド)でつなぎ、プロセスの自動化やスピードアップを可能にする。実際にNTTグループでは、決裁とその後の支払い・請求・会計などを統合したという。その結果、システムごとに同じ内容を入力する機会は減り、シングルインプット(一度の入力)で複数システムの同時処理が行われる環境を実現した。
「2年ほどかけて今回の取り組みを行いましたが、17万人が使うものですからまずまずの期間で作れたと考えています。現在は、従業員が決裁関連のオペレーションをどのくらいの時間で実行しているのか分析しており、さらに短縮できるよう、UXを細かく改善し続けています」
同社が今回活用したのは、ServiceNowの「App Engine」というものだ。社内の各システムを連携させるだけでなく、そのプラットフォームの上にローコードでアプリを開発できる。「今後は、各現場がアプリを内製していく動きを作りたいですね」と駒沢氏は口にする。加えてServiceNowへの要望として、生成AIなどにより、一定のアイデアや指示をテキストで入力すると、ServiceNowがアプリの骨格を作ってくれるような技術が生まれることも期待する。
この話を受けて、本フォーラムでファシリテーターを務めていたServiceNow Japan合同会社 シニアソリューションセールスエグゼクティブの高橋昌也氏は、「今おっしゃったような技術の開発は、実現に向けてかなり近い段階まで来ています」と答える。
システムの「綱渡り」を無くした、農林中金のワークフロー再構築
本フォーラムでは、NTTと並行して農林中央金庫の事例も紹介された。同じように決裁ワークフローの連動性に課題を抱えており、稟議書を上げる過程で複数のシステムに同じ内容を何度も入力する、差し戻されるとまた新たな入力が発生するといった状況が起きていた。
「農林中金では、6、7年前に稟議・決裁のワークフローを大きく刷新しました。システムもパッケージで入れ替え、積極的にカスタマイズしていったのです。しかし結果として、業務をする際にいろいろなシステムを綱渡りする形になり、利便性が損なわれてしまいました。そこで今回、業務に合わせた決裁ワークフローを再構築しようと考えたのです」
当時の課題感をこのように語ったのは、農林中央金庫 IT統括部 IT戦略グループの柏原将飛氏だ。ServiceNowの「App Engine」を導入し、稟議・決裁における申請から承認、文書保存までE2Eで処理できる仕組みを構築した。承認までのスピードが向上したほか、新システムの開発期間の大幅短縮や、コスト削減効果も現れたという。
「併せて今回行ったのは、散財していたデータの集約です。これまで決裁関連のデータは、置き場所が複数にまたがり、欲しいものをすぐに探せない状況にありました。そこで今回、1つのストレージにデータをリプレイスしていったのです。そのストレージとServiceNowを連携させました」。一連の取り組みにかかった期間は約8カ月と、短期間で実施できたとのこと。現在は「足元で安定的に稼働している」という。
今回構築したのは決裁のワークフローだが、今後はここに他業務のワークフローをつなげて、あらゆる業務が統合したプラットフォームにしたいと柏原氏は考えている。NTTと同様、「App Engine」で各業務のアプリを内製し、ServiceNowのプラットフォーム上に載せていくイメージだ。「機動的にアプリを内製できるのがServiceNowの良さだと思いますし、私たちが選んだ理由の1つでもあります」と話す。
「すでに社内の会議アプリが作られるなど、決裁以外の業務アプリの内製化は着々と進んでいます。別のアプリにも共通で使える機能部分は取り出して部品化し、それらを組み合わせることで開発時間の短縮につながっていますね」。今後はアプリの開発スピードをさらに上げて、農林中金のDXや生産性向上を実現していきたいという。
これらの事例を紹介した後は、ユーザーである両者からServiceNowへの要望を聞く展開になった。そこで出てきたのは、他社の開発アプリや取り組みを紹介してもらう機会が欲しいという意見だ。これを聞いた高橋氏は「ServiceNowの事例を紹介するコミュニティなどの実現も考えていきたい」と答えた。今後は同じ意識を持つ企業同士の情報共有を模索していく。
生成AIの真価を発揮するカギも、業務プロセスの「連動性」
今回のフォーラムでは、このほかにもいくつかのプログラムが用意された。まず基調講演では、企業が迅速な意思決定を行うための体制づくりについて、東京大学 大学院経済学研究科・教授の柳川範之氏が解説した。
日本企業は、新技術や事業環境の変化に対する感度は高いものの、意思決定に時間がかかるために、マーケットで遅れを取るケースが多いと柳川氏は指摘する。それらを改善するために行うことは大きく3つあり、1つ目はアジャイル性の高い組織風土にすること、2つ目はチャレンジやトライアルを評価する体制を組み直すこと、そして3つ目は、素早い情報共有を行うフラットな組織階層の構築を挙げた。加えて、デジタルで業務フローをなめらかにすることも重要だと述べた。
続くセッションでは、まさにデジタルを使って意思決定を迅速化する方法について、ServiceNow Japan合同会社 ソリューション営業統括本部 クリエイターワークフロー営業本部 本部長の加藤確氏が説明した。
加藤氏は、デジタルのシステムやツールを統合し、あらゆる業務プロセスをE2Eでつなぐ「デジタルワークフロー」が重要と話す。特に今回テーマとなった決裁領域に用いると、企業の意思決定が迅速化されるという。加えて、これから生成AIを企業が導入する際も、さまざまなワークフローとつなぎ、人やプロセス、システムとAIが連動することで効果が出てくるとのこと。そのプラットフォームとなるのがServiceNowだという。
日本企業に求められる迅速な意思決定。その方法の1つが「デジタルで業務プロセスをつなぐこと」であり、すでに実践する企業も増えている。本フォーラムは、それを実感させる内容となった。
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