国内最古の車両も健在

 さて、生駒ケーブルのお楽しみは宝山寺1号線の「ブル」と「ミケ」だけではない。山上線にはその仲間ともいえる、これまた独特のケーブルカーが走っているのだ。こどもたちが楽しみにしている行事の音楽会と誕生会をモチーフにした、オルガンの「ドレミ」とバースデイケーキの「スイート」である。これら4両の車両は、単なる乗り物としてではなくアトラクション的要素を加え、こどもたちを中心にすべての人に夢を与えられる楽しみにあふれたケーブルカーをというコンセプトから造られている。その狙いは見事に的中し、近頃はSNSなどで話題になり大いに盛り上がっているという。

山上線を走るデコレーションたっぷりの「スイート」

 乗っても楽しい生駒ケーブルだが、やはり走っている姿、しかも「ブル」と「ミケ」がすれ違うシーンを是非みなさんの目に焼きつけておいてほしい。1本のワイヤーロープで2台の車両を繋いでいるケーブルカーというシステムの特性上、車両は必ず路線の中間点ですれ違うようにできている。そのため宝山寺1号線でいえば鳥居前3号踏切付近で待ち構えていれば、必ず「ブル」と「ミケ」のすれ違いシーンを見ることができるのである。

 日本初のケーブルカーで愉快な車両が行き交う生駒ケーブルだが、実はこのほかにもたくさんの秘密が隠されている。まず宝山寺1号線、2号線と複線になっているケーブルカーは全国でもここだけだ。そして面白いことに生駒ケーブルは観光用としてではなく通勤通学路線としての顔もあるため、このような奇抜な車両にスーツや学生服を着たお客さんが乗り込むようすは、なかなかのミスマッチではないだろうか。

 またケーブルカーは安全面の理由から踏切は設置されないのが通常だ。そのためケーブルカーの踏切は全国でわずか7か所しかないのだが、宝山寺線と山上線にはそのうちの5か所の踏切があり、しかも先ほどの鳥居前3号踏切は日本で自動車が通れるただひとつの踏切でもある。

宝山寺2号線の「すずらん」。「白樺」とともに主に木曜日に運行されるが、正月には「ブル」「ミケ」と一緒にフル回転で活躍している

 ほかにも「ブル」と「ミケ」が走らない宝山寺2号線には、なんと1953年に製造された見た目もレトロな国内現役最古のケーブルカー「すずらん」「白樺」が在籍している。生駒山上遊園地の休園日である木曜日にあわせて宝山寺1号線が点検で運休となるため、これらの古参車両はその際に運行される。つまり毎週木曜日は「ブル」と「ミケ」はお休みとなるので、ワンちゃんネコちゃん車両に乗りたい人はこの日を避けて訪問しよう。