「データドリブン経営」を推進するにあたり、利用するシステムの選択は大きな鍵を握ります。どのようなシステムであれば、データ分析がしやすいユーザビリティとメンテナンス性を両立できるか。NTTデータグローバルソリューションズはそこから考えて、すべてを満たしたシステムの提案と構築・保守運用までを支えています。

本コンテンツは、2023年9月26日に開催されたJBpress主催「第18回DXフォーラム デジタルテクノロジーの活用による企業変革の実現」のセッション5「SAP S/4HANA Cloud, public edition活用によるDX取り組み事例」の内容を採録したものです。

 NTTデータグローバルソリューションズは、SAPの製品を活用し、最適なシステムの選択や導入、その後の運用保守までを一貫して支援しています。特に、国内外に分散しているSAPソリューションや業務ノウハウの一体化と、それを通した日系企業の、欧米やアジア、アフリカや中東などをまたぐグローバルでのDX支援について多数の実績があります。

 たとえば、製造業の日本企業A社の場合を紹介します。A社は、国内だけでなく海外にも約250社を展開するグローバルなグループです。元々は、拠点ごとに異なる業務プロセスを採用しており、本社に集約されるデータはフォーマットが様々で、経営分析に活用するのが難しい状況にありました。また、どんなに小さな拠点であっても、各所に最低でも1人は保守要員を配置しなくてはならないため、人件費も膨れ上がっていました。

 そこで、グループ全体の業務プロセスを共通化してコンプライアンスを強化し、経営に関わるデータ品質を向上させようと、SAP S/4HANA Cloud, public editionの導入によって、業務プロセスとデータフォーマットの統一、そして、保守管理コストの削減に乗り出しました。

NTTデータ グローバルソリューションズ
ゼネラルビジネス事業部 Cloud Solution Team
シニアマネージャー 服部 公平 氏

 SAP S/4HANA Cloud, public editionは、クラウドなのでもちろんどの拠点からでもアクセスが可能なため、保守要員を各所に配置する必要がなくなりました。また、ユーザー数の増減だけでなく、拠点の増減にもフレキシブルに対応できるようになりました。

日本の製造業でDXを成功させたコツは準備にある

 A社の場合のように、グループ全体に段階的に導入を進める際には、導入期間中に複数の拠点で税制等の法制度の変更があり、導入と並行してその対応に追われるケースが出てきます。しかしSAP S/4HANA Cloud, public editionの場合は、自動的に最新の機能が利用できるようになるので、個別にシステム改修を行う必要がありません。
 
 また、SAP製品がオンプレミスで培ってきた、導入のためのドキュメントやツールも充実しており、この事実も短期間で低コストでの導入を可能にしています。


 さらにこのA社では、SAP S/4HANA Cloud, public editionの段階的な導入にあたり、利用が確実な機能を絞り込むというステップを踏みました。具体的には、856もあるシナリオから約1割に絞り込みました。こうすることで、パイロット拠点では導入してから半年で本格稼働するという目標も達成できています。A社では、この拠点には専任の担当者を置かず、兼任者2名で導入を進めていましたが、通常業務に支障が出ることなく、導入が完了しました。
 
 こうしたスムーズな導入が可能だった要因の一つに、導入までに必要な作業がわかりやすく整理されていたことがあります。これもSAP S/4HANA Cloud, public editionの特徴の一つです。

 具体的には、必要な一つひとつの作業に対して十分なドキュメントやテンプレート、ツールが用意されているため、迷いや抜け漏れ、失敗なく導入を進めることができるのです。これが、結果的な短期間・低コスト、そして高品質での導入を可能にしました。

 システム導入時に課題となることが多いデータの移行についても、テンプレートが用意されているので、それにしたがって作業をすることで、整合性チェックからシステムへのアップロードまで、自動的に進めることができました。

 また、クラウド製品の中にはカスタマイズが難しいものもありますが、SAP S/4HANA Cloud, public editionはフレキシブルです。

 たとえば、請求書や注文書といった対外的な書類のテンプレートはあらかじめ用意されていますが、必要に応じて項目を追加・削除したり、レイアウトを変更したりもできます。入力画面の項目の追加や非表示化も、難しい開発を伴うことなく、画面上の簡単な操作だけ完了します。


 さらには、データ分析をするうえでのレポートの機能が充実しており、各拠点で入力されたデータをもとに、本社が様々な切り口で分析をしたり、表示形式を変更したりが直感的な操作で可能です。こうしたユーザーフレンドリーなUIも、実際のユーザーから高評価されているポイントです。

クラウド型ERPの導入を成功させる3つの要素

 このA社のケースからは、クラウド型ERPパッケージ導入にあたっての成功の秘訣も見えてきます。

 まず、用意されている多彩な機能のうち、機能を実際に使っていくのかを、早い段階で絞り込んでいくこと。こうすることで、後続のフェーズでの検討項目を減らすことができます。

 そして、Fit to Standardという考え方を採用し、システムを利用するすべての人に浸透させることです。Fit to Standardとは、パッケージ製品が提供する機能やプロセスに沿って導入を進めていくという考え方で、最近、よく耳にするという方も多いでしょう。ここで大切なのはこの考え方そのものに加え、いかに現場に浸透させることができるかです。


 広く深い浸透にはプロジェクトマネジャーだけでなく、現場のメンバーも、この考え方を理解してもらう工夫が必要であり、グループ会社に展開していく場合には、現地法人のトップやプロジェクトマネジャーといった責任者を通じてメンバーにこの考え方を浸透させることで、結果的にプロジェクトを成功させることができます。

 NTTデータグローバルソリューションズが担当するプロジェクトでは、フェーズごとに現場のメンバー含めた全体会議を設けるなどして、Fit to Standardの浸透を図っています。

どの拠点でも最適なシステムがデータドリブン経営を支える

 そして3つ目が、SAP S/4HANA Cloud, public editionのようなクラウド型製品と、オンプレミスの組み合わせです。
 
 一般的に、オンプレミスでのシステム導入には時間や費用がかかる。複雑なビジネスプロセスにも柔軟に対応できるというメリットがある反面、小規模な拠点で使う場合には重厚長大で、投資対効果が見合わないケースもあります。
 
 そこで、小規模の拠点ではクラウド型のシンプルな仕組みを低コストで導入し、本社など大規模な拠点ではオンプレミスを利用するといった組み合わせを選ぶことで、業務プロセスは標準化しながら、トータルコストを抑えられます。実際に、こうしたメリットを理解し、コアERPとしてオンプレミス、サブERPとしてクラウドという組み合わせを選択する企業も増えています。こうした2層EPRの導入により、業務プロセスやデータ形式は統一しながら、拠点ごとに異なる商習慣や法令への対応も可能になります。この組み合わせも、もちろんSAPのソリューションで実現できます。


 拠点の規模を問わず、グループ全体で共通の仕組みを導入することで、各社から集まるデータを均質化・標準化することができるようになり、本社は本社が見たいタイミングで、本社が見たい形でデータを分析ができるようになります。それが結果として、経営の質の向上につながります。
 
 ご紹介してきたSAPのソリューションによるDXではそれが可能です。ご興味をお持ちの方はぜひご相談いただければと思います。

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