今や企業にとってサステナビリティ経営の必須要件となった「働き方改革」は、リモートワークの浸透に伴いさらに対象領域を広げつつある。オフィス以外の場所からも快適に、かつアクセスの安全性を担保しながら働くにはどうすればよいのか。そういった「新しい働き方」をリモートアクセスとセキュリティ基盤から支えるのが、NTTコミュニケーションズの「Flexible Remote Access」である。
本稿では、同社が産業・社会のDX推進を支援する取り組みについて、プラットフォームサービス本部 クラウド&ネットワークサービス部・カタリストの本田健児氏が解説する。また、その支援例として、約1500名の社員に、フレキシブルでセキュアなリモートワーク環境を提供したゴールドウインの取り組みを、同社システムインフラ担当の萱沼悟史氏に伺った。
※本稿は、2023年3月16日(木)に開催された、NTTコミュニケーションズ株式会社主催「Data Innovation Forum~企業競争力を強化する『ハイブリッドワーク』と『データ活用』」から2セッションの内容をもとに構成いたしました。
- セッション1「DX成功のカギを握る3つのトランスフォーメーション~NTT ComのDX取り組み~」
- セッション2「新しい働き方を支える、『従業員の快適さ』と『セキュリティ』を両立したネットワーク」
ワークスタイル変革を通し「Smart World」実現へ
2019年に働き方改革関連法が施行されて以降、日本の企業でも急速に「働き方改革」への取り組みが進められている。だがこの「誰もが働きやすい、適正な労働環境」といったポジティブなイメージの陰に潜むセキュリティリスクを意識している人は、どれくらいいるだろうか。
NTTコミュニケーションズでは、市場や産業構造のめまぐるしい変化とともに増大し多様化する企業の経営リスクに対応するため、さまざまな企業のニーズに最適化されたデジタル活用を提案してきたと、同社プラットフォームサービス本部 クラウド&ネットワークサービス部・カタリストの本田健児氏は語る。
「私たちは『Smart World』をキーワードに、企業や社会の持続的成長のためにサステナブルな社会の実現を目指しています。そのコンセプトは、WX(ワークスタイルトランスフォーメーション:リアルとテレワークの融合による、ワークスタイル変革)、DX(特にデータの利活用に重点を置いた、経営や営業戦略の推進)、そしてGX(グリーントランスフォーメーション:カーボンニュートラル推進を中心とした、環境負荷やエネルギーロスの削減)の3つを掲げています」
今回はWX(ワークスタイル変革)にフォーカスし、ゴールドウインの成功事例を紹介する。アウトドアやスポーツウェア分野で数々の人気ブランドを展開するゴールドウインでは、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言に合わせ、多くの社員が在宅勤務を開始した。
多くの企業と同じく、同社にとっても社員が日常的に在宅勤務する事態は想定外であった。このため新たなリモートワーク環境の刷新を決意。NTTコミュニケーションズのリモートアクセス&セキュリティ基盤である「Flexible Remote Access」を導入し、快適でセキュアなハイブリッドワーク環境を構築。現在も活用している。
社外アクセス専用の基盤を採用。ボトルネックの一挙解消を図る
2020年のリモートワーク移行では、ゴールドウインの東京本社、富山本店を始め各支店、営業所あわせて約1500名が一気に在宅勤務にシフトした。この結果、アクセス集中やネットワーク負荷の増大によって、Web会議や各種サービス、メール、クラウドストレージなどで遅延が発生したと萱沼氏は振り返る。
「当時は、社内からのリモートアクセス時には、自社データセンターから社内系ネットワークを経由してインターネットを利用していました。これが在宅勤務者のインターネット接続が一気に増えたことで想定外の負荷がかかり、業務に影響が出てしまいました。帯域がパンク寸前になって、データセンター内のオンプレミス設備のメンテナンスにも影響が及ぶほどで、トラフィックの軽減が急務となったのです」
そこで同社では、ネットワーク構成の見直しから検討を開始。リモートでインターネットにアクセスする際のボトルネックとなっていた、自社データセンターを経由しない形に切り替えること。同時に全てのアクセスを同じ基盤から行わせる仕組みを作ることという、2つの大きな方向性を決めた。
具体的な製品やサービスの情報収集を進める中で、かねて社内系ネットワークのサービスを利用してきたNTTコミュニケーションズに相談したところ「Flexible Remote Access」を提案されたという。これは専用のソフトウエアをリモートアクセスのユーザーのPC端末などにインストールすることで、クラウドやオンプレミス上にある社内システムやSaaSを利用できるという、セキュアなリモートアクセスを可能にする基盤だ。自社データセンターを経由せず、全てのアクセスをFlexible Remote Access上で処理するため、今回の方針にも適応する。まさに、この点が採用の決め手の1つだったと萱沼氏は語る。
「ボトルネックとなっていたデータセンターと閉域網を分離することで、閉域網でインターネットに折り返し接続できます。また既存環境の改修が不要で、コストを抑えながらスピーディーに環境を構築できる点に魅力を感じて採用を決めました」
加えて、多要素認証やファイアウォール、IPS、IDS、URLフィルター、アンチウイルスなどのUTM(統合脅威管理)機能、ログ管理機能のセキュリティ機能も搭載されており、すでに導入していたNTTコミュニケーションズの次世代インターコネクトサービス「Flexible InterConnect」と組み合わせることで、セキュアに閉域接続が実施できる点も、システム担当としては重要な評価ポイントだったと萱沼氏は明かす。
「さらに、ユーザーが都度明示的な操作を行わなくても、適切なネットワークに自動的に接続されます。これも個人のITスキルにばらつきのある当社としては、安心できる要素でした」
「オフィス勤務を前提としないハイブリッドワーク」の環境が実現
Flexible Remote Accessによって新しいリモートアクセス基盤が導入されたことで「利便性と安全性の両方を得ることができた」と萱沼氏はメリットを語る。
「社内のユーザーからは通信品質に満足する声が多く寄せられています。料金体系も、ID単位の課金で必要なリソース分のみで利用可能なため、ランニングコストの大幅な削減も実現しました。当社の上層部からも高く評価されているポイントです」
リモートワーク時にもサービスの遅延などに煩わされることなく、オフィスにいるのと同様に快適に業務できる環境を構築することができた。この結果、「オフィス勤務を前提としないハイブリッドワーク」が実現したという。
在宅勤務で懸念されるセキュリティについてもフォローされている。例えば認証機能の場合、Flexible Remote Accessでは、証明書認証や端末認証などの多要素認証を標準的に提供しているため、従来の境界型セキュリティやIDとパスワードだけの認証に止まらない、よりセキュアなアクセス管理が可能である。
さらに、ユーザーが操作しなくても必要に応じて自動的にVPN接続を行うなど、個人のITスキルやネットワークリテラシーに依存せず、堅固な情報セキュリティが標準化されたのも、今回の大きな成果だ。
「Flexible Remote Accessの導入以降、システムの動作が以前より良くなったという声が聞かれるようになりました。システム管理者である私自身、その効果を実感しています。以前は外出先から社内システムにアクセスしようとしても、うまく接続できないといった問い合わせが頻繁にありましたが、現在はほぼなくなりました」
新しいリモートワーク基盤がもたらしたメリットにより、業務効率は全体的に向上したのではないかと萱沼氏は自負する。
今回のリモートワーク環境の基盤整備をステップボードに、ゴールドウインでは今後、さらなるワークスタイル変革に向けたITインフラの充実に取り組んでいく予定だという。その具体的プランの1つが、ネットワークインフラの全社統合だ。
「オンプレミスのシステムのクラウド化推進、セキュリティ向上の観点から、これまで社内と店舗とで分けていたネットワークを一本化し、より効率的なITインフラの在り方を検討していきます。インフラ移行やDX推進は当社の重要なプロジェクトです。NTTコミュニケーションズの方には、これまで培ったノウハウや協力体制を生かし、今後もサポートいただけることを大いに期待しています」
より快適で、よりセキュアなワークスタイルの確立に向けて走り続けるゴールドウインの取り組みに引き続き注目していきたい。
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