業務とITの両面からアプローチする基幹システムの最適化

 一般的なERPの最適化とは、SCM(供給連鎖管理)、ECM(創造連鎖管理)の統合により、ヒト、モノ、カネ、情報の連鎖管理を最適化することです。すなわち、縦軸でECMのBOM(部品表)、技術情報、トランザクションなどのデータを統合し、製品設計、生産管理、製造管理までを一気通貫につないで全体最適化を図ります。横軸では、マスタ、トランザクションなどのデータを統合し、調達管理から生産管理、在庫管理、販売管理までをつなぎます。

 そうは言っても、なかなか、これらの業務間のシステムの整合性が取れなかったり、うまくつなげられなかったりという話をよく聞きます。例えば、製品設計と生産管理の間でE-BOM(設計部品表)とM-BOM(製造部品表)がつながっていない、もしくはアナログになっており、手間がかかる。また、生産管理と製造管理が指図ぐらいでしかつながっていないため、詳細な実績情報のフィードバックが人対人になってしまっている、もしくは簡単な実績情報しかフィードバックできないといった例です。

 ほかにも、中長期需給計画(PSI)を表計算ソフトのエクセルでやっているため、計画は立てられるものの、基幹システムのタイムリーな実績情報がフィードバックできないといった話もよく聞きます。これらの課題を解決するためには、業務とITの両面からアプローチすることが重要です。
 基幹システム最適化に向けたアプローチの例として、実現できるテーマをいくつかご紹介します。 

 1つ目は、「PSIによる需給最適化」です。中長期のPSIをエクセルで行っているお客さまもあるかもしれませんが、これをシステム運用しERPと統合し、フィードバックをしながら最適化を図っていきます。

 2つ目は「計画生産、オプション受注生産を受注から製造まで連携運用」です。MTS(見込み生産)、CTO(オプション受注生産)に対して、受注BOM、生産BOM、製造BOMを連携する、いわゆるBOMチェーンにより、指図に基づいた製造BOMまでを一気通貫に運用します。

 3つ目は「高精度な原価管理によるリスク分析と利益最大化」です。標準原価だけではなく、ERPとMESの実績データによる実際原価分析を行うことでこれを実現します。

 4つ目は「ERP情報の集約、分析による、ものづくり環境のセンシング」です。販売、製造、在庫、調達実績の集約、分析と需給計画へのフィードバックによりそれが可能になります。

周辺システムによる拡張によりさらなる強化を実現

 ここからは、周辺システムによる基幹システムの拡張について話をします。

 よくある拡張は、需給管理(S&OP)のシステムを基幹システムの上に付け、全体を管理していくものです。また、配送管理、製造管理、現場倉庫のシステムを拡張することもあります。

 ECM軸では、生産準備のモジュールを入れ、製品設計から、生産準備、生産管理、製造実行まで一気通貫のBOMチェーンの実現を図っていくという例もよくあります。

 さらに、拡張によって各拠点の基幹システムがそれぞれ整備されたら、次は複数の拠点のデータを全社経営基盤に集約し、グローバル経営管理、グローバル需給管理により、全社の最適化を図るグローバル統合システムを実現します 。

 基幹システムの拡張で実現できるテーマとしては、まず、「M-BOMを中核とした製造工程・品質・コスト管理の実現」があります。基幹システムの中でM-BOMを集約、統合管理することで実現できると考えています。また、「販売・生産に即した最適輸配送管理の実現」が挙げられます。ERPとWMS、配送管理を連携することで、物流を最適化します。

 そして、昨今よく聞くのが、「環境や市場変化に追随できる需給対応力の強化」です。S&OPと、その計画に対する実績、販売、生産、在庫、調達の実績を収集し、計画と実績の予実分析を行います。加えて、全拠点の基幹システムデータ統合(全社経営基盤)による経営分析を行うことによる、「タイムリーな経営可視化による変化対応力強化」も可能になります。

 ダイナミック・ケイパビリティの強化に向けたアプローチでは、冒頭に述べたように、「Sensing(感知)」、「Seizing(捕捉)」、「Transforming(変革)」の3つの能力を強化していきます。ただし、これらを単純に並行的に強化していくのではなく、現状の基幹システムの機能配置における課題、問題点を分析し、あるべき将来像に向けて強化する機能、拡張する機能の十分な構想策定が必要です。

 以上のように、基幹システムの最適化と拡張によって、ダイナミック・ケイパビリティの強化を実現できると考えています。

有用な機能がそろうSAPの周辺システム

 SAPの周辺システムとしては、PLM(生産準備)、IBP(需給管理)、DMC(製造実行管理)、EWM(製造物流)などのモジュールがあります。基幹システムと周辺モジュールのマスタ統合やトランザクションの統合もできておりとても有用です。

 いくつか紹介すれば、「SAP Integrated Business Planning for sales and operations」は、IBPと言われるモジュールで、中長期受注計画の総合管理ができます。計画を立てるだけではなく、需要予測、そしてERPと密に連携をしていることから、それぞれの実績をフィードバックして、計画と実績の再分析までできます。また、数量だけではなく金額についても分析でき、また同時にそれぞれのリアルな変化状況を分析できるというモジュールです。

 2つ目として「SAP Digital Manufacturing Cloud」すなわちDMCは、製造実行管理ソリューションをクラウドで提供するモジュールです。指図や実績だけではなく、製造部門との技術情報連携までを実現し、ものづくりの最適化が実現できます。

 3つ目は「SAP Extended Warehouse Management」です。これは、受発注の入出庫だけでなく、製造作業と同期した部材払出、半製品所在管理および製造完了後の完成品入庫などにも対応している高度な倉庫管理システム(WMS)です。

 このほか、「SAP Product Lifecycle Management (PLM)」は、製品の企画から開発、計画、生産、サービスまでのPLMプロセスを カバーする管理機能が用意されています。

確かな業務理解・技術力と共に最適化を図る

 最後にNTTデータGSLの強みをご紹介します。

 ダイナミック・ケイパビリティの強化に向けた基幹システムの最適化には、業務+ITの両面で対応する必要があります。そのためには、ERPを熟知していることはもちろんですが、業務理解・技術力も必要です。NTT データ GSLには、これらを兼ね備えたコンサルティング体制があります。

 会計、ロジスティクス、生産を十分理解しているコンサルティングノウハウ、機能配置論の十分な理解と実装経験、プロセスを理解したコンサルタントによる見える化のコンサルティング、SAP基盤構築のシームレスな連携支援、豊富な各種Non-SAPシステムとSAPシステムとの連携実績、グローバルでのケイパビリティなどにも自信があります。

 これらをベースに、貴社の基幹システムの最適化と拡張によるダイナミック・ケイパビリティの強化を支援し、最大の効果をご提供します。

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