文=松原孝臣 撮影=積紫乃

ハードルを上げすぎると続かない

 主将としてチームを牽引し、自らも安定感のある演技をみせ、パリオリンピック男子体操団体で日本の金メダルに大きな役割を果たした萱和磨。

「失敗しない男」とも言われる萱は、自身が今日までたどりつけた要因の1つに「継続できる強み」をあげる。

「体操以外でも継続すること、続けるのが得意だなと思います。毎日オンライン英会話で英語を勉強しているんですけど、体操の練習前に25分オンラインの先生と英語で話すというのを3年くらいやっています」

 パリオリンピックの記者会見では、英語で話す場面もあった。

 継続のこつを、こう語る。

「例えば英語のレッスンだったら、25分でちょうど心地よく続けられています。これを50分とか2時間にしてしまったらたぶん続かないですし、自分のできるギリギリのラインをしっかり把握する、継続できるところを探ってやっていくということが、結局、長期で見たら大事です」

 そこにも自分を把握する萱の力がかかわっていた。

「長い期間、短い時間でもコツコツやっていた方が力になるというのは体操で学んだのもありますし、大学院などで論文も書きましたけれど、時間がおして詰め込むと、どうしてもクオリティの低いものになってしまったり、論文に切羽詰まって体操がおろそかになったりしてしまったりします。早めからコツコツやって、進んでいるのは少しずつですけれど結果的にはストレスなくというか、何度も考えられる時間があるので、自分なりにいいものができたり、体操に影響なかったり、そこが文武両道でやってこれたところでもあります」

 そしてこう続ける。

「継続するのは難しい、とよく言われるんですけど、ハードルを上げすぎるから続かないんだと思っていて、意外に机に向かってしまえばできるというか、鉛筆持つだけでもいいと思います。趣味でランニングをやる人も、たぶんウェアに着替えて外に出るだけを目標にしても意外に走れると思うんです」