より体操を知ってほしい
パリオリンピックのあとは、演技会や体操教室などさまざまなイベントも精力的に取り組んできた。
「今、体操がホットなときなので、認知してもらえるように、より多くの人に体操を触れ合ってくれるような場を設けています」
それらで体操の魅力を伝えてきた。
「体操の楽しいところ、技ができたときの喜びは、大人になっても子どもと同じくらいあります。そういうのはあまりないのかなって思いますし、何か新しい技というものがあるからこそ、その喜びって起こると思うんですよ。そういう楽しさや技を習得する喜びとともに練習してるんだよ、っていうことを伝えていきたいですし、新しい技を試合で使えたときの選手の表情を見ると、『いいスポーツだな』って思います」
時間をかけて、それこそ年単位で取り組んで身に着けられる技がある。その長い過程を踏んで試合で披露できたときの喜びはひとしおだろう。それを知るから、より体操を知ってほしいと考える。
「種目によっては静寂に包まれたり、着地して盛り上がる種目もあったり、会場に来てくれたらもっとハマるのになって思います。オリンピックで注目される競技ですが、国内の大会も見てほしいです。各種目、8個とか10個の技をやるんですけど、その1個の技を覚えるのに何年もかかったりしているので、個人総合だったら2時間半ぐらいの中で何年分もの練習が詰まっているんだ、というのを感じてくれたら見方も変わるかなと思います。
今まで普及のために何もできなかった自分にむしゃくしゃしているんですけど、こうやって体操が注目されてきている今がチャンスだと思っているので、このチャンスで伝えられなかったら変わらない、だからゆっくりできる時間を使って取り組んでいます。根底にあるのは、アテネオリンピックで夢をいただいた側なので、今度は自分が与える側にならなきゃいけないということです。責任感もありますし、何よりも練習時間は3、4時間なので、自由な時間を家でぼーっとしているよりは、違う時間に変える方が絶対に生産性がいいような気がするので」
普及に情熱を傾けるばかりではない。萱は2028年のロサンゼルスオリンピックを見据える。
「夢を叶えて引退してもいいかなと考えたんですけど、まだまだ元気というか、体も怪我もしてないので。やっぱりいろいろな技をやるのが楽しいというのが素直なところで、初めて逆上がりができたときもうれしかったし、今、新しい技ができたらやっぱりうれしいので、まだまだ体操頑張ろうとだんだんなって、シンプルにロスで金メダルを目指せばいいんじゃないのかと思いました」
パリの前から、「まだまだできるんじゃないか」と思い始めていたという。
「パリの前年度、2023年ぐらいからまだ体が元気だなっていうのと、年齢としては体操だとけっこうベテランなんですけど、練習量や自分のレベル、実力を客観的に見ても、練習量に関しては若い選手よりもしているなと思って。でもパリの前にロスオリンピックがあると思って挑みたくなかったので」
消えることのない体操への情熱、新しい技ができたときの喜びとともに、萱和磨は競技人生をこれからも刻んでいく。