世界遺産ならではの見どころ
たえず異邦人を魅了し、駆り立ててきた芸術の都パリには、見どころがいっぱいです。女子マラソンのゴール直前、並木道の向こうにナポレオンが眠るアンヴァリッド(廃兵院)が映りこみ、思わずパリで街歩きをしたくなった方も多いのでは?
市民が、決まった目的もなくブラブラ“街歩き”するのは、大改造後のパリで始まりました。そこで、世界遺産ならではのトリビアルな2カ所に注目してみます。
1.サント・シャペルのステンドグラスの神光
シテ島に13世紀に築かれた王家の礼拝堂がサント・シャペルです。私は2階(上層)に足を踏み入れるやいなや、めくるめく七色の光のシャワーを浴びて思わず立ち尽くしました。
四方ぐるりと、天まで届くような高さ15メートルの窓。そこに聖書の物語を描いたパリ最古のステンドグラスがあり、陽光を受けて、赤・黄・青をとりまぜ煌めいていました。まるで神の光が降り注いでいるようです。
サント・シャペルは、キリストが十字架に架けられた時の「茨の冠」を納めるために建設された礼拝堂です。聖王ルイ9世は、この聖遺物をコンスタンティノープルの皇帝から購入するために、国家予算の2分の1にも相当する金額を費やしたといいます(現在、茨の冠はルーブル美術館が保管)。ステンドグラスの極み、必見です。
2.ルーブル美術館の華麗なアパルトマン
人類の至宝をあまた収蔵するルーブル美術館ですが、もとは宮殿で、フランス革命で美術館に生まれ変わりました。でも持ち運べる美術品(動産)は、実は世界遺産ではありません。世界遺産は、入れ物である不動産なのです。
世界遺産的おススメは、ナポレオン3世のアパルトマン(居室)を挙げましょう。パリを大改造した男は、ルーブル宮殿の中に自らが暮らすサロンや大広間、食堂などを増築したのです。金ピカの壁、巨大な鏡にシャンデリア、天井にはフレスコ画……その派手でコテコテした装飾は、ナポレオン3世様式と呼ばれ、ベルサイユ宮殿をも凌駕しています。その居室は、もはや必要からではなく、消費することが快楽になった19世紀後半の世相に似つかわしいものでした。
「パリのセーヌ河岸」は、こうした由緒ある建築の素晴らしさだけでなく、街並みの美しさが高く評価され世界遺産になっています。
1962年「マルロー法」を成立させ、世界で初めて地区全体の「景観保全」という考え方を提唱しました。1977年には「フュゾー規制」により、パリの45地点からの眺望を守るため、手前や背後に高い建造物をつくることを規制しました。この都市まるごとの美観を守るというコンセプトは、今では世界遺産の大きな柱になっているのです。
パリの街並みを味わうには、バトームーシュをはじめとするセーヌ川観光クルーズに乗船するのが一番です。世界遺産エリアだけで、橋の数は23……現存する最古の橋ポン・ヌフ(1607年完成)、パリで最も美しいといわれるアレクサンドル3世橋(1900年完成)など、その形やデザイン・装飾はさまざま。セーヌの橋めぐりで、パリの素敵な一日を過ごしてみてはいかがでしょう。
※セーヌ川クルーズは、各社によって運行されています。またエッフェル塔、ルーブル美術館、サント・シャペルなどの公開については、変更される場合があります。
※旅行に行かれる際は外務省海外安全ホームページなどで現地の安全情報を確認してからお出かけください。