《モナ・リザ》のポーズが肖像画の定型に
ルーヴル美術館が所蔵する肖像画《モナ・リザ》(1503-05年頃)は、間違いなく世界でいちばん有名な絵でしょう。1974年、東京国立博物館で開催した「モナ・リザ展」は来館者が150万人を突破し、企画展単館入場者数の世界記録になっています。話題性だけでなく、それに相応しい素晴らしい絵画だと思います。
モデルはフィレンツェで繊維業を営むフランチェスコ・デ・ジョコンドの夫人リザであることがわかっています。
これまでのイタリアの肖像画は、皇帝の横顔がメダルやコインに描かれていたことの影響で、真横を向いていました。当時織物が豊かな産業だったフィレンツィエは、第1級のファッションに身を包んだ女性たちを描いていましたが、初期ルネサンスの肖像画はどれも横顔でした。横顔だけではその人がどんな人間かはなかなかわかりません。
《モナ・リザ》のように少し斜めを向いた写実的な肖像画は、15世紀頃から北方で描かれました。このポーズを「四分の三正面図」といい、レオナルドはじめイタリアの画家たちも取り入れます。《受胎告知》のマリアもこの構図で描かれ、遠近法や油彩同様、レオナルドが取り入れたことによって定着し、今日では当たり前になっているものなのでした。