1952年12月に開館し、開館70周年を迎えた東京国立近代美術館。節目の年を記念し、明治以降の絵画・彫刻・工芸の分野から重要文化財に指定された作品のみを紹介する展覧会、東京国立近代美術館70周年記念展 「重要文化財の秘密」が3月17日に開幕した。

文=川岸 徹 撮影=JBpress autograph編集部

萬鉄五郎 《裸体美人》 重要文化財 1912年(明治45)東京国立近代美術館蔵 通期展示

重要文化財の定義とは?

 そもそも重要文化財とは、いったい何なのだろうか。重要文化財とは、「日本に所在する建造物、美術工芸品、考古資料、歴史資料等の有形文化財のうち、歴史上・芸術上の価値の高いもの、または学術的に価値の高いもの」。1950年に公布された文化財保護法に基づき、文部科学大臣によって指定されたものを指す。そして、これら重要文化財のうち、とくに優れたものが「国宝」に選ばれている。

 ということは、「重要文化財は国宝の格下?」と思われがちだが、一概にそうとは言い切れない。国宝は「作品の普遍的な価値」を見極めるため、指定に時間がかかる。つまり制作から相当の年数を経ていないと選定されないため、明治以降の近代美術にはいまだ国宝がないのだ。そのため、重要文化財の各所蔵者は「国宝に準じる特別なもの」として作品を扱っている。明治以降の重文は“国宝予備軍”と言っていいかもしれない。

 現在、明治以降に制作された絵画・彫刻・工芸のうち、重要文化財に指定されているのは68件。そのうち、51件を集めたのが展覧会、東京国立近代美術館70周年記念展「重要文化財の秘密」だ。東京国立美術館副館長で展覧会の担当研究員である大谷省吾さんは開催の経緯をこう話す。

「開館70周年の節目の年に、重要文化財だけを集めた展覧会を開催したいと思いついた。でも、思いついても、実行に移す人はいない。文化財保護法上、年間貸出日数が原則60日以内という制限があるし、国宝に準じる特別なものとして扱われているため、所蔵者がなかなか貸してくれない。自分自身、無茶な展覧会と思いつつ、3年間をかけて交渉した結果、51件を集めることができた。出品を引き受けてくれた方には、感謝しかありません」