キアヌ復活の渾身作『ジョン・ウィック』

「ジョン・ウィック」(2014) 写真=Everett Collection/アフロ

 長いキャリアの浮き沈みのなか、意欲的な作品はありつつもあまり目立つことのなかった時期のキアヌ、久々のヒット作となったのが『ジョン・ウィック』でした。引退した伝説の殺し屋が、小さなトラブルから元の世界に呼び戻されたことに始まり、作品が進むにつれその闘いのスケールが増していく本シリーズ、その独特な「殺し屋」ワールドが「21世紀の任侠ワールド」ともいえる独特の魅力を放っています。

 しかし本シリーズの最大の魅力は劇中に展開されるアクションと銃火器の描写であることは、誰もが納得するところではないでしょうか。

 そのことを決定付け、特に衝撃的だったのは第1作『ジョン・ウィック』(2014)のクライマックスで、単身敵の拠点に乗り込んだ主人公は、この闘いから頭部への銃撃を多用するのですが、それは①頭部の破壊は確実に致命傷を負わせることになる=絶対に許さないという怒りの表明、②一撃で甚大なダメージを負わせられる=多勢を相手にするとき弾薬の節約ができる、③ただし標的となる範囲が小さいため確実な射撃が要求される=主人公が最高レベルの技術を持っていることの証明、という多層的な意味を凝縮し、本作がそれまでのどの作品にも似ていないことを証明している名シークエンスだったといえると思います。

 シリーズを通しての監督チャド・スタエルスキはスタントマン出身で、これまで数々の作品のアクションコレオグラフィーを担当、製作総指揮のデヴィッド・リーチとのパートナーシップで87イレヴン・アクションという会社を設立しています。CGの多用が当たり前の今日、実は実写アクションのプロの力が主導していることが、本作の隠し味のようです。

 

もう一つのシリーズ「ビルとテッド」

 前作から29年という時を経て、オリジナルキャスト2名による新作『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』(2020) が公開され、「マトリックス」シリーズとは別の意味で衝撃を与えてくれたのが、この「ビルとテッド」シリーズです。

 おバカコンビのビル(アレックス・ウィンター)とテッド(キアヌ)が、なぜか世界の危機に巻き込まれ、それを時空を超えた活躍で救うというコメディですが、こちらは『マトリックス』と違い、主人公たちはリアルの年を重ねるため、1989年の第1作『ビルとテッドの大冒険』で高校生(!)だった二人は、第2作目『ビルとテッドの地獄旅行』(1991)では若手ロックバンドとして音楽界に進出、最新作『ビルとテッド 音楽で世界を救え!』では、見事に全盛期を過ぎた落ちぶれぶりを見せてくれます、

 実は自ら「ドッグスター」というバンドで、音楽活動歴もあるキアヌにとって思い入れのあると思われるこのシリーズ、果たして4作目の展開はあるのでしょうか??