文=條伴仁 イラスト=日高トモキチ

 夏に話題となった『ジュラシック・ワールド / 新たなる支配者』は、ご覧になりましたか?

 シリーズ完結編といわれている本作ですが、恐竜も人間もオールスターのサマーシーズンにふさわしい華やかな娯楽大作だったと思います。今回は、このシリーズの生みの親マイケル・クライトンについてです。小説家、映画監督、脚本家など多彩な活躍をしたこの才人は、多くの小説が映像化されていることで知られていますが、今回はあえて映画作家としてのレガシーを中心に振り返るプラスワンをお届けします。

 

恐竜を現代に蘇らせた『ジュラシック』シリーズ

 その昔、現代に生き残った恐竜の末裔は、人跡未踏の大密林や地球内部の空洞世界にいるのが(映画や小説の)定番でした。その恐竜を太古のDNAから再生するというアイディアで、私たちの目の前に出現させた小説がマイケル・クライトンの1990年の小説『ジュラシック・パーク』でした。

「ジュラシック・パーク」(1993) 写真=Collection Christophel/アフロ

 そして、それは1993年にスティーブン・スピルバーグが監督し、クライトンが脚本に参加した映画により、「大人もビックリ」できる画期的な恐竜映画として大成功を納め、この成功がそれまでどちらかというとジャンル映画の中にだけ生きていた恐竜を、一気にブロックバスター映画のスターに押し上げました。

 その後、クライトンは続編小説『ロスト・ワールド』(1995)を執筆し、一方、映画はスピルバーグのもと『ロスト・ワールド / ジュラシック・パーク』(1997)、『ジュラシック・パークⅢ』(2001)へと展開していきます。

 残念ながらクライトンは2008年に66歳で亡くなってしましいたが、映画はクライトンを「キャラクター造形」として『ジュラシック・ワールド』(2015)、『ジュラシック・ワールド / 炎の王国』(2018)、『ジュラシック・ワールド / 新たなる支配者』と展開していきます。

 

映画作家マイケル・クライトン

2004年当時のマイケル・クライトン 写真=AP/アフロ

 そのマイケル・クライトンは「ジュラシック」シリーズ以外にも、原作者、監督、脚本家として、映画・映像の世界に今でも色あせない作品を残しています。

 ここからはその中でも、特に筆者のお勧め作品をご紹介していければと思います。

 

●未知の病原体との科学を駆使した戦いを描く『アンドロメダ・・・』(1971)原作:クライトン「アンドロメダ病原体」

 アメリカ中西部の街を、2名の生存者を残して一夜で全滅させた未知の病原体と科学者チームの闘いを、巨匠ロバート・ワイズ監督(『ウエストサイド物語』)がリアルなタッチで描いたSFサスペンスの傑作です。

 特に隔離施設のセットや気密の防護服、病原体の分析描写など、類似の映像が日常に溢れてしまった今日だからこそ、逆に身近なリアルさを感じることができる作品といえるのはないでしょうか。映画の内容はクライトンの小説に沿ったものとなっていますが、特に現存する“もう一つの脅威”が人類の存亡を脅かす展開となるクライマックスは、作者の先見性を伺うことができます。