「産業構造の変革」をミッションに掲げるINDUSTRIAL-Xが、12月9日に7回目となるカンファレンス「Conference X in東京」を開催する。
DXによってCX(Corporate Transformation)、さらにはSX(Social Transformation)を実現し、企業の形そして社会および産業全体の変化を推進する同社が、日本の産業構造の現在地を示し、目指すべき方向について語る場を設ける。
今回は開催を前に、4つのセッションのうち「DXで目指す“デジタルツイン”の世界」、「“データで見せる”企業の価値」でそれぞれモデレーターを務める株式会社コアコンセプト・テクノロジーの田口紀成氏と、ウイングアーク1st株式会社の森脇匡紀氏が、データ活用の課題と解決の糸口について語り合った。進行役を務めるのは株式会社INDUSTRIAL-Xの八子氏だ。当日はどんなディスカッションが繰り広げられるのか、その要諦を伺った。
<お知らせ>
本記事でインタビューしているウイングアーク1st 森脇氏、コアコンセプト・テクノロジーの田口氏が登場するハイブリッドイベント「Conference X in 東京(オンライン同時配信)」を2022年12月9日(木) 13:00~18:00 ベルサール御成門タワーにて開催します!
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八子:DX、そしてデータ活用についての話題は尽きません。12月9日に当社INDUSTRIAL-Xが主催する「Conference X in東京」でも、“Industrial Transformations~日本の産業構造を変革せよ~テーマに、様々なお話を伺っていく予定ですが、現在、企業はデータを上手に扱えているのでしょうか。
森脇:扱えている企業と扱えていない企業で2極化している感覚です。
扱えていない企業の多くの理由は人や組織の問題です。また扱えている企業でも企業価値を高めるためのデータ活用にゴールはなく、様々な課題に直面していると感じます。
例えば今までのデータ活用は会計や販売、生産管理などのERPやSFA・CRMなどで得た正規化されたデータを元にスピード感あるデータドリブンな経営マネジメントを定着させるという話だと思いますが、顧客や取引先とのやりとりを行う現場やものづくりの環境に目を向けると、比較的“顧客解像度”や“鮮度”が高いデータはExcelで業務運用されていたり、IoTのデータ収集に課題を抱えていたり、未だにFAXや紙などのアナログデータが存在したり、経営層に本来届けるべき情報がリアルタイムに届いていないという残念な実態が散見されます。
一時期はビッグデータがフューチャーされましたが、現場の価値あるデータはスモールデータと名付けられ、このスモールデータの収集に課題があるとされています。
八子:活用以前に、収集の部分で課題があるわけですね。
森脇:仰るとおりです。ただデータ活用における本質的な課題はカルチャーやリーダーの意思、そしてデータ活用で何を成し遂げたいかという“あるべき姿”が曖昧であるという点にあると思います。
DXとデータ活用は切り離せない関係にありますが、この辺りはDXも同じかと思います。DXで何が大事かというと「X」だと思うんですね。
データ活用や弊社が販売する製品は「D(Digital)」側に位置しますが、「D」はお金で変えますし、他社の活用事例をマネする事も出来ます。ただそれでは事業としての差別化は生まれません。
「X(Transformation)」で人やチームのマインドや会社のカルチャーに変革をもたらしてこそ、顧客や社会の心を震わすようなイノベーションが生み出されるのだと思います。
データ活用においてもそのような“あるべき姿”の設定や、それを実現するための文化を変えるくらいの意思が甘いと定着化は出来ません。手段や道具が課題の本質ではないのです。
八子:それらの課題をうまく乗り越えている企業もありますが、成功企業に共通点はありますか。
森脇:共通点は3つほどあります。まずは、経営者が自らプロジェクトのリーダーとなり、設定したゴールにコミットしている事が重要です。
2つ目はその経営者の想いを受け継いだ現場のリーダーがいることです。そのリーダーには人望が必要です。「この人の言うことなら聞いてみよう、やってみよう!」と思わせる、信頼されている人物である必要があります。
そして3つめはカルチャーです。先ほどお話ししたデータ活用の文化に加え、挑戦する文化があることが大切です。失敗を恐れずに挑戦する企業は、データ活用においても成功する確率が高いと感じています。
八子:製造現場でのDXについては、田口さんの実感も伺いたいです。
森脇さんからは、現場には正規化されていないデータが多いという指摘がありましたが、田口さんはどこに課題を感じますか。
田口:前提として人が足らないというのはどこも同じだと思います。
その上で、大きなサプライチェーンの一部として機能している製造現場では、組織をまたぐタイミングでボトルネックが生じるケースがよく見られます。
例えば、発注側は完全に3Dで設計をしているのに、必要な部品の見積りを取る際には、取引先に対して、データではなく紙の図面を渡しているのです。すると受注側は、その図面を見ながら自社でデジタル化をして見積る、といったことが起きています。
八子:図面を介すると、仕様変更の度に図面を書き直すことになって大変な手間ですよね。
田口:そうなんです。何度も仕様変更が発生する金型の設計製造などでは本当に大きなボトルネックになっています。
八子:なぜデータのままやり取りしないのでしょう?
田口:たいていは習慣に原因があります。発注側は「相手は図面がないと見積もりを出せない」と思い込んでいて、受注側も「図面しかもらえない」と思い込んでいるのです。
八子:なるほど。習慣なのだとすると、デジタルのままでいきましょうという発想は製造業の中からは生まれてきそうにありませんね。
田口:このトランザクションを減らせれば、受注側は取り引きを増やすことができて、売上も上がります。そうであればDXを進めたい、という現場は特に中小企業に多いはずです。
八子:田口さんがモデレーターを務める「DXで目指す“デジタルツイン”の世界」のセッションでは、そのボトルネックを解消した企業の方々にお話しいただくことになっていますね。
田口:「meviy」によって調達のDXを進めるミスミ、建設前に工場の稼働状況までシミュレーションしている清水建設にお話を伺います。
2社の取り組みは先進的ですが、しかし、これらの事例はデジタルツインでできることのほんの一部分です。デジタルツインとは何かについてはいろいろな説明がありますが、私は、リアルの世界では試せないものをバーチャルな世界で実行し、そこで得られたバーチャルなアウトプットをリアルなアウトプットとして考える、Bit(ビット)をAtom(アトム)へ寄せることだと認識しています。
例えば、どの製造方法や加工方法がベストかといった検討も、実際には製造や加工をすることなく、高精度に判断できます。こうなると将来的には、どの方法が最も効率的かだけでなく、どの方法が最も二酸化炭素を排出しないかまでバーチャルで把握できるようになります。
森脇:DXが進んでいる企業の関心は、今、財務情報だけでなく非財務情報にも向いています。先ほど、データの正規化のお話をしましたが、カーボンフットプリントのような非財務情報については正規化されていないのはもちろん、取引先ごとに集め、合算するのも困難なのが現状です。
田口:投資家の方々も非常に注目されていますしね。これからサプライチェーンをデジタル化するのであれば、ESGの観点を外すことはできません。近い将来、「お客様のところへ足を運ぶのはいいけれど、移動に伴う二酸化炭素排出量は?」といった話にもなると思いますし、そのときには発展的デジタルツインのようなものが求められると思います。
森脇:売上や利益が素晴らしいだけでなく、地球にも顧客にも優しい存在になる。トレードオフにせずバランスを取る。DXはそのための手段だと思います。
八子:QCDに加えてESGも重視すべきだと価値観が変わればKPIも変わります。既存のKPIと新しいKPIのバランスをどう取るかがこれからの経営者の大きな仕事ということになりますね。12月9日のカンファレンスでも、そのバランスについても話を引き出していただければと思います。
森脇:私がモデレーターを務めるセッションに参加して下さるLIXILのマーケティング部門のリーダーである安井常務はマーケティングの責任者ですがもともとはソフトウェアエンジニアというバックグラウンドの持ち主でIT・デジタルの責任者でもありました。
小林製薬のDXを牽引する藤城さんは人事畑出身でIT部門の責任者を務めています。お二人共現場感を大切にされており、組織文化やチームづくり、リスキリングなどについても、実体験に基づく興味深い話をしてくれるはずです。
八子:カンファレンス当日は、今日のように本音を赤裸々にお話ください。モデレーターが本音で当たれば、パネラーのみなさんも素晴らしい取り組みだけでなく、それでもなお困っていること、足りていないところなど、本音を語っていただけることは、過去の「Conference X」でも明らかです。
森脇:日本はDX後進国だ、日本企業のDXは遅れていると嘆く人がいますが、鬱憤の一翼を担っている自分という存在を放棄して、問題の本質を直視せず、ぶつける矛先を見失い「日本」というマクロな存在にツバを吐いても結局自分に返ってくるのが関の山ですよね。
そんな暇があったら目の前の顧客や社会の未来にとって何が出来るのかを考え行動した方がいい。日本もまだまだ無限の可能性を秘めていると思います。少なくとも今回ゲストで参加いただく両名は脳みそがちぎれるくらいそのような事を考え抜いてきた人たちだと思います。ご視聴いたく参加者の皆さんがすぐにアクションを起こしたくなるような熱いセッションを作りたいと思います。
田口:私も、日本企業、特に製造業のDXは本当に遅れているのかと疑問に感じるところもあります。なぜなら、しっかりとものを造れているからです。ものづくりの知識がないと製造業のDXはできません。シリコンバレーから製造業のDXツールが生まれないのは、彼らがものづくりを知らないからではないでしょうか。ですから、ものづくりに長けた日本が製造業のDXをリードできると思っています。イベント当日にはそうした話もできればと思っています。
八子:ありがとうございます。私自身も当日はDX市場の動きなどについてお話ししますが、お二人のセッションも楽しみにしています。
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本記事でインタビューしているウイングアーク1st 森脇氏、コアコンセプト・テクノロジーの田口氏が登場するハイブリッドイベント「Conference X in 東京(オンライン同時配信)」を2022年12月9日(木) 13:00~18:00 ベルサール御成門タワーにて開催します!
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