日本で最も長い歴史をもつ博物館「東京国立博物館」。1872年(明治5)に「文部省博物館」として発足し、1881年(明治14)にはジョサイア・コンドルの設計により上野公園に旧本館の建物が完成した。そんな東京国立博物館は今年創立150年。この大きな節目を記念する特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」が、10月18日に開幕した。約12万件という膨大な所蔵品の中から、同館が所蔵する国宝89件すべてが公開される。

文=川岸 徹 撮影=JBpress autograph編集部

すべて「国宝 東京国立博物館のすべて」展示風景より。長谷川等伯《松林図屏風》長谷川等伯筆 安土桃山時代 16世紀 展示期間:〜10/30

すべてが名品、すべてが見どころ

「国宝」とは国指定の重要文化財のうち、世界文化の見地から価値が高く、類いない“国民の宝”として選び抜かれたもの。2022年10月1日現在、国宝に指定された美術工芸品は902件あり、そのうち89件を東京国立博物館が所蔵している。

 展覧会を担当する東京国立博物館の佐藤寛介氏はこう話す。

「89件という数字は、ひとつの館が所蔵する国宝の数はとしては日本一。そのすべてを見せる展覧会の開催は、開館から初めてのことです。国宝は作品保護の観点から展示可能な期間が限られています。創立150年という節目だからこそ実現に至りましたが、この機会を逃すと、次は50年後の創立200年かもしれません」

 準備に数年を費やし、やっとの思いで開催に漕ぎつけた特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」。展覧会は2部構成になっており、第1部「東京国立博物館の国宝」では89件の国宝を公開。第2部「東京国立博物館の150年」では、明治から現在までの150年にわたる歩みが紹介されている。なお会期中には展示替えがあり、時期によって鑑賞できない国宝もある。事前に同館の公式サイトで展示作品を確認しておくことをおすすめしたい。