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文=松原孝臣
4回転アクセルの羽生、4回転5本の宇野、成長著しい鍵山
北京オリンピックのフィギュアスケート日本代表は、充実そのもの、と表してもいいかもしれない。そして、今までのオリンピックにはない期待が高まっている。
充実、という点を象徴するのは羽生結弦だ。
今シーズンは昨年11月、練習中の負傷によりグランプリシリーズのNHK杯、ロシア大会を欠場。怪我の具合が心配されたが、シーズン初戦となった全日本選手権を優勝で飾った。
そこで見せたのは、心配を吹き飛ばす、いや、さらに進化した姿だった。新プログラムで臨んだショートプログラムでは、音を捉える、というレベルではおさまらないほどの次元で音と動作が一体化した演技を披露。フリーでも圧巻というほかない滑りを見せた上に、競技人生をおくる上での「最大のモチベーション」としていた4回転アクセルについに挑戦。両足での着氷となり回転不足でもあったが、試合で用いるところまで来たこと、何よりも成功の可能性を感じさせるところまで来ていることを実感させる出来であったのは、ショートプログラムの演技と併せ、進化というほかない。
羽生だけではない。宇野昌磨は今シーズンのフリーで、4回転ジャンプ5本という構成に取り組み、NHK杯優勝など好成績をおさめてきた。
難しいレベルの構成に挑む土台となっているのは気力の充実。平昌オリンピックで銀メダルを獲得したあと、結果を求めて苦しみ、あるいは長年過ごした愛知県の拠点から離れて苦しみ、いくつもの試練があった。
今シーズンは自身、「最高難度」と言う構成に挑み、さらに結果も求めている。オリンピックシーズンにその状態であることこそ、この4年を振り返れば意味がある。
鍵山優真は、ジャンプの質、スケーティングなど高いレベルで滑ることができる高校3年生だ。グランプリシリーズは2大会ともに優勝し、中止にはなったもののポイント1位でグランプリファイナル進出を決めた。
さらにオリンピックへ向けては、4回転ループ投入を考え、練習している。大舞台への視界は良好だ。