※本コンテンツは、2021年9月15日に開催されたJBpress主催「第3回ものづくりイノベーション」のセッションⅢ「今こそ製造業の設計・解析業務に安全・快適なテレワーク環境を」の内容を採録したものです。

株式会社日本HP
サービス・ソリューション事業本部 ビジネス開発部
島﨑 さくら氏

 製造業の設計・解析業務は、データの機密性や高い処理性能が求められることから、テレワークが困難であり、コロナ禍でも出社を余儀なくされている人も多い。柔軟な働き方の選択肢が生産性向上、企業存続の重要なカギを握ると指摘される中で、製造業における安全、快適なテレワーク環境の構築方法について紹介する。

日本の製造業におけるテレワークトレンド

 2021年6月に発表された内閣府の調査によると、テレワーク実施率は全国平均で30.8%です。この数値を世界的に見ると、日本のテレワーク実施率は非常に低い水準にとどまっており、業種別では、製造業については2021年4~5月時点で40.3%の実施率となっています。

業種別のテレワーク実施率
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  一方、日本HPが2021年5月に実施したアンケートによると、「オフィスでなければ業務ができない職種を除きテレワークを実施」と回答した企業が65%を占めていました。この結果によって、6割以上の企業が全職種でテレワークを実施できていないという実態が浮き彫りになった格好です。

 製造業の中でも、特にCAD/解析業務に当たられている方々はテレワークが困難と言われ、コロナ禍においても出勤を余儀なくされているという実態があります。その理由は3点あります。

 1つ目は「セキュリティ」です。機密性の高いデータを取り扱っているため、持ち出しは不可という企業が圧倒的に多いためです。

 2つ目が「タイムラグ」です。CADや解析などでは、重たいデータ、精緻なデータを扱っていることから、リモートアクセスでは回転や拡大・縮小にマウスの描画が追従しないといったタイムラグの問題が生じます。

 このタイムラグに関連して、3つ目の理由が「コラボレーション」です。遠隔から同じデータを見てディスカッションをしようにも、タイムラグが生じてしまい、どこを指しているのかがわかりにくいためコラボレーションがしづらいといったことがあります。また、解析業務については、マシンの前から離れることができないといった業務上の特性もあります。

 これら3つの理由から、オフィスにいるのと同等の生産性を実現するのが困難であるがゆえに、出社せざるを得ないというわけです。では、CAD/解析業務に当たられている方々がテレワークを安全、快適に実施するための条件とは何でしょうか?

 セキュリティの観点からは、データを持ち出さずに済むことです。通信経由でのデータ漏えいにも配慮されていることが望ましいでしょう。タイムラグの観点では、マウスの操作に描画が遅延なく追従してくることが重要です。そして、コラボレーションについては、ネットワーク環境にかかわらず、同じデータを遅延なく共有しながら、スムーズにコラボレーションできる必要があります。

3つの阻害要因をクリアしたHPのテレワークソリューション

 これら3つの前提をクリアしたのが、HPのテレワークソリューション「HP ZCentral Remote Boost」です。15年以上にわたり、様々な企業に導入実績があります。そのコンセプトは「デバイス・データを持ち出さずに、ワークステーションの“パフォーマンス”だけを持ち出す」で、仕組みは次の通りです。

 自宅にあるタブレット・ノートPCから、テザリング・Wi-Fiなどを通じてオフィスにあるワークステーションにアクセスします。その画面のピクセルデータを受信するという、いわゆる画像転送の仕組みです。オフィスにあるワークステーションをSender(センダー)、手元にあるデバイスをReceiver(レシーバー)と呼びます。一般的なRDP(Remote Desktop Protocol)と同じ仕組みではありますが、違いは2点あります。

 1点目は、画面のデータを170分の1に圧縮して手元で高速にデコードするので、まるでワークステーションの前で業務に当たっているような即応性を実現できることです。

 2点目は、データは暗号化され手元のデバイスで複合化されるので、万が一、途中でデータを盗み取られたとしても、データが漏えいするリスクがないことです。

 Sender側では、Windows 10以外にも、ubuntu、Red Hat EnterpriseなどのOSもサポートし、設計や解析、ディープラーニングにも対応可能。Receiverに関しては、さらにHP ThinPro、Mac OSなどもサポートしているので、新たなデバイスを購入することなく、自宅のPCをそのまま使うことが可能です。

 また、「HP ZCentral Remote Boost」はライセンスを無償で提供しており、1台からでもすぐに安全で快適なリモートアクセス環境を構築していただくことが可能です。

 テレワークでの活用にとどまらない、「HP ZCentral Remote Boost」の3段活用方法について紹介します。

 ステップ1は、製造業のお客様に以前からご使用いただいている活用方法で、社内にある自席のワークステーションに会議室からアクセスする、もしくは部署で共有しているワークステーションに自席からアクセスするというもの。SenderもReceiverも同じ社内LANの中にあるという使い方です。

 ステップ2が、いわゆるテレワークでの使い方で、WAN/VPN経由でオフィスの外からオフィスの中にあるワークステーションにアクセスして、そのリソースを活用する方法です。

 そしてステップ3が、サーバールーム、もしくはデータセンターにワークステーションを集約し、そこにアクセスする方法です。これによって、万が一の自然災害等の時も、事業の継続性を確保することができますし、何より1カ所にワークステーションを集約することで管理性が向上します。

用途に合わせて選びたい、リモートワークに最適なハードウェア

 数ある製品ラインナップの中から、Senderとして「HP Z2 Mini G5」と「HP ZCentral 4R」の2つのモデルを、Receiverとしてモバイルワークステーション「HP ZBook Firefly 14 inch G8」を紹介します。

 「Z2 Mini G5」は、手のひらサイズのコンパクトなワークステーションです。重量は2.18㎏でPCバッグに入れて持ち運ぶことも可能です。コンパクトながら、NVIDIAのRTX3000までグラフィックカードを選んでいただけるので、レンダリングや3D CADなどにもストレスなく対応することが可能です。

 「ZCentral 4R」は、アップグレードが容易な1Uラックのワークステーションです。675W電源モジュールを2基搭載しているので、冗長化もしくは2基を直列接続して1350Wの大容量電源として使用することも可能です。最大構成は、CPUは18コア36スレッドまで、メモリは256GBまで、グラフィックカードはNVIDIAのQuadro RTX6000まで選択することが可能で高度な解析やリアルタイムレンダリングにも対応可能です。以上Senderに最適な2製品をご紹介しました。

 続いてはRecieverとして最適な「ZBook Firefly 14 inch G8」ですが、重量1.4㎏と、HPのモバイルワークステーション史上最軽量のモデルです。14インチ・フルHD・非光沢な高輝度パネルも選択できるので、照明の映り込みなども少なく、屋外での視認性も高くなっています。グラフィックカードはNVIDIA Quadro T500を搭載。最新の第11世代インテルCPUも搭載しているので、「ZCentral Remote Boost」のReceiverとして、ワークステーションにアクセスして使う以外にも、スタンドアロンの設計業務も対応可能です。また、サイバー攻撃防止のため、WEBカメラにスライドカバーも搭載しました。

 セキュリティについて補足します。HPでは業界の2歩、3歩先を行くセキュリティ機能を、いずれの製品においても標準搭載しています。その名称が「HP WOLF SECURITY」で、BIOS(Basic Input Output System)からOS、アプリケーションまで多層的にデータの安全性やデバイスの安全性を確保する機能です。その中から、3つのセキュリティ機能を紹介します。

 1つ目が、世界で唯一の自己回復BIOSにより、BIOSの改ざん、デバイスの乗っ取りを未然に防ぐ「HP SURE START」です。

 2つ目が、ディープラーニングによる学習済みのモジュールを埋め込むことで、未知のマルウェアに対してもその振る舞いを見て即座に対応する「HP SURE SENSE」です。

 そして3つ目が、添付ファイルを開く、ブラウザを開くといったアクションを仮想領域内で実行し、万が一、マルウェアに感染したとしても、隔離し、封じ込める「HP SURE CLICK」です。これらを通じて、皆様の重要なデータ、デバイスをお守りいたします。

手軽に検証可能な無償サービスも用意

 「HP ZCentral Remote Boost」に興味を持っていただいた方の中には、検証はしたいけれど、「コロナ禍でオフィスに立ち入ることができない」、あるいは「アプリケーションのインストールやネットワークの設定など、環境準備の工数が割けない」といったお悩みをお持ちの方も多いでしょう。

 そうしたユーザーの皆様に、簡単なステップで手元のネットサーフィンなどに使用しているPCをReceiverとして、普段お使いのアプリケーションやデータを用いて検証をすることができる無償のサービスも用意していますので、気になる方はぜひお問い合わせください。

 最後にもう1つ、VR(仮想現実)による生産性向上について紹介します。製造業では、設計/解析業務においてVR(仮想現実)を活用したワークフローが徐々に定着しつつあります。HPでは、業界トップクラスの4K解像度、500gを切る軽量設計、税抜き59,800円というプライスパフォーマンスを誇るVRのヘッドマウントディスプレイ「HP Reverb G2 VR Headset」も提供しています。法人のお客様の間では数百台単位での導入も進んでいます。こちらも検証をご希望される方もお気軽にご相談ください。

HP Reverb G2 VR Headset でVRによる生産性向上
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 リモートワーク、コラボレーション、VR、設計、解析業務のデジタル・トランスフォーメーション(DX)による生産性向上を、HPがトータルにサポートさせていただきます。日ごろおつきあいのある販売店様、もしくはHPの担当営業まで、ぜひお問い合わせください。

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