※本コンテンツは、2021年6月29日に開催されたJBpress主催「第4回リテールDXフォーラム」のセッション1「海外の最新事例から紐解く ~店舗受け取りや自宅配送など購買後の顧客体験向上の秘訣~」の内容を採録したものです。
株式会社セールスフォース・ドットコム
インダストリートランスフォーメーション事業本部
小売消費財業界シニアマネージャー、リテール・ストラテジスト
小川 哲 氏
購買後の顧客体験がECの成否を分ける
購買後の顧客体験向上の重要性と、成功のポイントについてシェアいたします。まず、「購買後の顧客体験」とは、ECで商品を購入した後に消費者の手元に届くまでの体験を指します。従来のECは、認知、比較検討、購入までに注力してきました。しかし、現在はその先にある消費者の手元に届くまでのところが注目されています。特にアメリカでは、Amazonへの対抗もあり、リアル店舗を持つ強みを生かし、店舗での受け取りや自宅配送が主流となりつつあります。
<図版1:資料「20210629_JBPress_リテールDX_海外の最新事例から紐解く」ページ5>
2020年第二四半期での全世界のEC売り上げ調査によると、店舗での受け取りを提供しているECサイトの売り上げは、前年比127%増と伸びています。一方で、店舗での受け取りを実施していないECサイトは54%の伸びにとどまっています。
今年1月に開催された 世界最大の小売業イベント「NRF 2021」でも、購買後の顧客体験の拡大や浸透について多くの時間が割かれていました。例えばウォルマートは、自宅配送と事前注文した商品を駐車場で受け取れる、カーブサイドピックアップが急成長。5年分の変化が5週間で起きたと語っています。最も伸びたセグメントは65歳以上のシニア層というのも興味深いところです。アパレルのルルレモン・アスレティカは、ホリデーシーズンの店舗受け取りを強化しました。顧客の利便性を高めるということに注力し、注文からわずか2時間以内での受け取りを実現しています。
百貨店のメイシーズは店舗在庫の活用が急拡大し、ECの注文のうち50%が店舗在庫からということでした。さらに、オールバーズという靴のDtoC企業では、オムニチャネル小売業として、店舗受け取りや自宅配送に取り組むべきだと語りました。
さらに、消費財メーカーのダノンは、購買後のカスタマージャーニーがECのコンバージョンレートに大きく影響すると言及しました。その改善や向上のために、お客さままで商品を届ける配送業者と業務提携して、データ収集に取り組んだそうです。消費財メーカーにとって消費者との最後の接点である配送で良いイメージを残すことが、顧客満足度やブランドに影響するといいます。
高度化する顧客のニーズに応える、国内外の小売業の取り組み
「自宅に届くだけで満足」という従来のニーズから、「今すぐ欲しい」「配送状況を確認したい」「簡単に配達日時や場所、配達数量を変更したい」というように、顧客のニーズは高度化しています。それに対して、在庫調整や在庫精度の向上、商品のピッキング、注文から受け取りまでの通知など、各小売業ともさまざまな課題にDXで取り組んでいます。
<図版2:資料「20210629_JBPress_リテールDX_海外の最新事例から紐解く」ページ16>
1点目、店舗在庫をタイムリーに取得更新する事例として、アメリカのホームセンターのホーム・デポの取り組みです。アプリ上に店舗のリアルタイムの在庫を示し、顧客が1つ商品を手にとって POS レジを通過すると、即座にアプリの画面上で在庫が1つ減ります。ECサイトからでも、リアルタイムの店舗在庫が分かる仕組みになっています。
2点目、リードタイムの短縮としてウォルマートの事例が挙げられます。注文が入ると、その商品の棚番号とパッケージ画像が店舗スタッフのアプリに届きます。不慣れなスタッフでも広い売り場で簡単にピッキングできるようにするための工夫です。また、類似の取り組みとしては、ウーバーイーツのように配送員が買い物を請け負うインスタカートというサービスがあります。ここでも作業の割り当てが自動的に行われるため、管理負荷が削減されています。
3点目、配送状況の可視化の事例としては、スーパーマーケットのセーフウェーの取り組みがユニークです。
<図版3:資料「20210629_JBPress_リテールDX_海外の最新事例から紐解く」ページ21>
上図の左側のように、配送準備が整った段階で消費者にURL が届きます。これをクリックすると、右のように配達状況や到着予想時間がリアルタイムに確認でき、ストレスのない顧客体験を提供しています。イトーヨーカドーのネットスーパーも、同じように配送状況の可視化に取り組んでいます。
購買後の顧客体験を強化するセールスフォースのサポート
セールスフォース・ドットコムでは、購買後のカスタマージャーニーを強化する支援をしています。お客さまがECのフロントで注文すると、すぐさま店舗にて自動でピッキング割り当てを行い、注文確認メールを送付するといった一覧の流れをシステムでサポートしています。
<図版4:資料「20210629_JBPress_リテールDX_海外の最新事例から紐解く」ページ24>
「Salesforce」を活用した顧客体験・従業員体験のイメージは、下図の通り。
<図版5:資料「20210629_JBPress_リテールDX_海外の最新事例から紐解く」ページ25>
注文の段階では、図の①にあるように、リアルタイムの在庫数に安全在庫を加味したものをEC側にタイムリーに連携します。そして顧客から注文が入ると、すぐさま店舗スタッフに商品のピッキングのToDoを自動発行します。店舗スタッフがこのピッキングにアクセプトすると、ステータスが自動で更新され、③にあるように、準備状況の通知もタイムリーかつ自動で案内が顧客に届きます。ピッキングが完了したらステータスが変更され、店舗受け取りの詳細をすぐに送ることができます。
今回は購買後の顧客体験に関して、ニーズが高度化していること、それに対する小売業各社の取り組み事例についてご紹介しました。「Salesforce」の活用などによって購買後の顧客体験の向上を図ることは、 売り上げを伸ばすことに直結します。ぜひお取り組みください。
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