文=松原孝臣 撮影=積紫乃

アイスショーの新たな幕開け

 新たな一歩を踏み出そうとしている。

 高橋大輔は長いキャリアにおいて、いつもフィギュアスケ―トの新たな歴史を築いてきた。記録で見れば、2010年のバンクーバー五輪で日本男子初のメダルとなる銅メダルを獲得。同年の世界選手権ではやはり日本男子初の金メダルを獲得。いくつもの「初」を打ち立て、日本フィギュアスケートの未来を切り拓いてきた。

 その存在感は記録ばかりによるのではない。2014年に引退後、2018―2019シーズン、32歳で4年ぶりに現役に復帰、全日本選手権で2位となった。2020―2021シーズンからは村元哉中をパートナーに、アイスダンスに転向。世界選手権に出場するのみならず日本最高タイの成績を残し、スコアでも日本歴代最高を得た。挑戦者として歩む姿があり、何よりも屈指の表現者として氷上で見せる演技で人々を惹きつけてきた。

 そして今再び、新たな一歩を、チャレンジをしようとしている。2024年2月10~12日にかけて「オーヴィジョンアイスアリーナ福岡」で開催するアイスショー「滑走屋」だ。高橋自らがプロデュースする。

「アイスショーの、新たな幕開けになれば良いなと思っています」

 その言葉は、ショーの内容、ショーのあり方の双方においてであることを高橋の話に知る。

 自らプロデュースする背景には、先のアイスショーでの体験がある。

「(2023年)1月に横浜、5月に福岡で行ったアイスショー『アイスエクスプロージョン2023』で初めてプロデュースを手がけました。出演するメンバーをどうつないで見せていくのか、グループナンバーをどこに入れるか、全体の流れをどうするのか、自分が見てみたいアイスショーをやってみた感じです。僕はもともと舞台やミュージカルなどを観るのが好きで、そういう世界、自分の世界に入り込んで途切れない感じを見てみたいという思いがありました。やってみて面白かったですね」

 好評を得た「アイスエクスプロージョン」でプロデュースへの感触を得て、同じく自らが見たい公演にしたいという「滑走屋」では、その方向性を深化させようとしている。