好評だったからこその悔しさ

 実は「アイスエクスプロージョン」は、好評だったからこそ、悔しさも残っている。

「初めてアイスショーを見た方々からも『面白かった』という声をいただきました。一方で、公演があったこと自体を知らない方も少なくなかったことも聞きました。来てもらえていたら楽しんでいただけたんじゃないかという思いがあります」

 これまで福岡では、アイスショーはあまり行われたことがない。決して身近なものではないことも知るから、12月初旬からは自ら福岡入りし、テレビ、ラジオ、新聞といった各メディアで、あるいはトークショーで、PR活動に精力的に努めた。それもまた、「滑走屋」で創り上げるエンターテインメントの力を信じるからにほかならない。

「アイスショーって冷たい空気感があって、そこで聴く音楽から感じられるものも神秘的だったり、その音楽と氷の上の動きだったり、ふだん体感できないものがあると思うんですね。やっぱり陸上ではないスピード感を出せますし、エンターテインメントもいろいろありますが、その中でも楽しんでいただけるものになると思います」

 そして、福岡公演の先をも見据える。

「福岡で成功すれば、今後、各地で公演を行っていくこともできると思いますし、『滑走屋』というアイスショーのフォーマットを確立できれば、それこそ僕じゃなくて(村元)哉中ちゃんだったり、(友野)一希だったり、他のスケーターが演出を担当することだってできると思うんです。将来的にはカンパニー的なものになっていけばいいな、という思いもあります。もし公演が各地でできるようになっていけば、将来的にその地域のスケーターをたくさん起用してやっていく感じもいいなっていう思いもあります。

 今も魅力的なアイスショーがたくさんありますが、それに加え、アイスショーという名の新しい形の提案をしたいですし、そのスタートを多くの方々に、一緒に見てもらえればうれしいですね」

 これまでもフィギュアスケート界の新たな地平を切り拓いてきた。「滑走屋」もまた、高橋大輔が切り拓こうとする未来にほからならない。

 福岡の地は、貴重なスタートの舞台となる。