フィギュアスケートそのものの魅力を体現

2023年5月11日、「アイスエクスプロージョン」公開リハーサルより 写真=森田直樹/アフロスポーツ

 こだわりは出演スケーターにも表れている。今回、国際大会などで活躍するスケーターに加え、高校生や大学生たちもアンサンブルスケーターとして14名が参加する。

「東日本選手権、西日本選手権を見に行って、そこで出てほしいと思った選手にオファーしました。まずは人数で圧倒するパフォーマンスを見せたい、疾走感やスピードが生み出す迫力を出したいと思っています。出演する学生の子たちも、ほんとうにスピード感のあるスケーターたちです」

 それは、氷上ならではの陸上ではできない動きのできるフィギュアスケートそのものの魅力を体現しようという試みでもある。それをかなえるためのスケーターたちの集団であることを、タイトルにも示している。

「みんなが職人であって、職人たちによるクオリティが高いパフォーマンスができれば、必ずしもスケーターとしての知名度は必要ないと考えています。『滑走屋』は職人っぽいニュアンスを込めていますが、そういう考えもあってつけています」

 振り付けはフィギュアスケート界の外部から起用する。元劇団四季で東京パノラマシアター主宰のダンサー/振付家の鈴木ゆま氏で、高橋が主演した舞台「氷艶2019」に出演してもらったときからの縁だという。

.鈴木さんが今年演出した舞台を見に行かせてもらったときに、構図の使い方とかすごいかっこよくて、世界観が好きで、いつかやってもらいたいなと思っていました。フィギュアスケートの中だけの常識というか枠で収まってしまうよりも、外の人だったら全然違う提案があったり、面白さも出てくると思うんです」

 今回の出演者でもある村元の助力も得ている。

「哉中ちゃんは音楽編集ができるので、いろいろ相談にのってもらったりしています」

 プロデュースのみならず、今回のショーでは、4年ぶりに高橋の新しいソロナンバーの披露があるほか、村元もソロナンバーを予定しているという。

 ショーの内容もさることながら、実施する概要も目をひく。1回あたり1時間15分とし、今までのアイスショーにはない1日3回公演を行う。また、チケットの料金をアイスショーとしては低価格におさえられている。

 根底には危機感がある。

 今春以降、ときにフィギュアスケート界の人々から、「観客が減ってきているのでは」と聞くことがあった。実際、アイスショーや大会の中には、空席が目立つ会場もあった。高橋もその実感はあるという。だからこう語る。

「今までずっと見て応援してきていただいた方々にはもちろん、今までアイスショーを見たことがない方々にも来てほしいと思っています」

 だから、チケット料金を下げて手を伸ばしやすいようにし、「初めてだと2時間、2時間半は長く感じると思うので、公演時間を1時間15分にしました。もちろんその時間で十分楽しめるものにします」。