過酷な自然がモチーフに
そんな北欧の「美術」はどんなものなのだろうか。SOMPO美術館で開幕した「北欧の神秘―ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画」は、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの3か国の絵画に焦点を当てた国内初の本格的な展覧会。ノルウェー国立美術館、スウェーデン国立美術館、フィンランド国立アテネウム美術館の3つの国立美術館のコレクションから、19〜20世紀初頭に制作された約70点の作品を紹介する。
さて、展覧会会場へ。予想通り、展示されている作品は雄大な山岳や森、湖といった自然風景や、夏季の白夜、冬の極夜、オーロラなどの気象現象をテーマにしたものが多い。ただし、そこにフランスの印象派絵画のような明るさはない。冷たく、重く、画面からひんやりとした空気が流れ出してくるかのよう。
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ニルス・クレーゲル 《春の夜》 1896年 油彩・パネル 48.5×60.1cm スウェーデン国立美術館 Photo: Erik Cornelius / Nationalmuseum
《春の夜》は、ファン・ゴッホに強い影響を受けたスウェーデンの画家・ニルス・クレーゲルの作品。枝ぶりのいい樹木が描かれているが、タイトルにある「春」の爽やかさはまったくない。厳粛でしんとした空気の緊張感。その冷たさに心が揺さぶられる。
ノルウェー出身のエドヴァルド・ムンク《フィヨルドの冬》も不思議と惹きつけられる作品。水辺の雪景色を単純化して描いているが、その単純化によって画面の冷たさが剃刀の刃のように鋭く際立っている。「やはりムンクは凄い」と唸らされる一枚だ。