プレミアムブランドとしてのアルファ ロメオはどこに行くのか?
現行のステルヴィオやジュリアはDセグメントの後輪駆動(もしくは4WD)モデルで、これはBMW3シリーズやメルセデスベンツCクラスなどに匹敵するクラスだった。つまり、それまでの前輪駆動モデル主体だったアルファロメオがプレミアムセグメントへと移行する足がかりとしてリリースしたのがステルヴィオやジュリアだったのだ。しかし、2モデルはアルファロメオに利益をもたらすことができず、ビジネスはジリ貧となっていった。
そこに前輪駆動ベースでCセグメントのトナーレが登場したのだから、アルファロメオは高級路線を諦め、再びBセグメント、Cセグメント主体のポジションに後退するのではないかと私は危惧していた。
しかし、私のこうした見方を、インパラートは明快に否定してみせた。
「アルファロメオは常に上を目指すブランドです。2025年と2026年にはDセグメントのEVをリリースします。どの順番になるかは申し上げられませんが、ステルヴィオとジュリアの後継モデルにあたります」
これらのモデルは最高出力が250kW(340ps)から700kW(1020ps)までで、800Vテクノロジーを用いて0〜80%の充電時間を18分間に抑えるほか、最新のエレクトロニクス・プラットフォームを採用してインフォテイメントやコネクティビティを実現するという。
こうしたインパラートの言葉を聞いて、私は彼にこんな質問を投げかけた。「アルファロメオは一時、マセラティと共同でクルマを開発していたが、そうした体制は復活するのか?」
ところが、インパラートは、私の質問が終わるか終わらないかのうちに、こう語り始めたのである。
「アルファロメオがマセラティと同じポジションになるとは考えていません。マセラティはステランティス・グループ唯一のラグジュアリーブランドで、アルファロメオよりも上のポジションを目指しています。いっぽう、アルファロメオは、赤くて、なによりもイタリアのスポーツです。その点ではランチアと近く、実際、彼らと一緒に仕事しています。ただし、アルファロメオとランチアがオーバーラップすることはなく、2ブランドは明確に異なります。そのことは、実際に試乗していただければおわかりになると思います」
そのほか、インパラートはアルファロメオにとってなによりもスタビリティとサステナビリティが必要と力説。これまでのようにコロコロと方針を変えることなく、安定した思考でブランドの存続をなによりも優先すべきだとも語った。
たしかに、アルファロメオのクルマ作りや経営は、これまでやや不安定で、どこに軸足があるかがわかりにくく、それが持続的な成長の足かせになっていたような気がする。しかし、長期的に物事を考え、それを着実に実行するタイプのように思えるインパラートには、こうした悪しき慣習を覆し、ブランドを着実な成長に導く力があるように思えた。しかも、その第一歩は、前述したようにすべて始まっているのだ。
新しく生まれ変わろうとしているアルファロメオの今後を、大いなる期待を持って見守りたい。