大谷 達也:自動車ライター
世界33台の特別なクルマはオーナーと決める
ジャン-フィリップ・インパラートはアルファロメオ・ブランドのCEOである。それも、日本担当とかアジアパシフィック担当ではなく、グローバルなアルファロメオのトップに位置するCEOである。
そんなインパラートが、昨年に続いて今年も年初に日本を訪れた。
「私は日本が大好きです。だから、1年の仕事の始まりには、日本を訪れているのです。来年も同じように年始に日本にやってくるつもりです」
彼が目下、いちばん楽しみにしているプロジェクトが33ストラダーレだという。これは1967年に誕生した33ストラダーレを現代の技術で復刻したモデルで、カーボンファイバーモノコックとアルミ製フレームで構成したボディにV6ツインターボエンジンもしくは最高出力750ps以上の3モーター(つまりEV)のどちらかを搭載するスーパースポーツカーで、価格は4億円前後と見られているが、限定販売される33台はすでに完売しているそうだ。
「年間700万台を生産するステランティスのような巨大グループで、このようなプロジェクトが実現できたことを誇りに思います」とインパラート。「エンジンとモーターの構成比は、エンジンが80%でモーターが10%。残る10%はどちらにするか決めかねている状態です」
ちなみに33ストラダーレのデリバリーは2024年12月に始まるが、第一号車を納車した段階で33名の購入者ならびにアルファロメオ経営陣の合計39名で構成される「33ストラダーレ・クラブ」のメンバーを招集し、33ストラダーレの後継モデルを作るかいなか、作るとすればどのようなモデルにするかを決めるという。
この種のフューオフ・モデル(数台から数十台を限定生産するモデルのこと)の販売は昨今スーパースポーツカーブランドがしきりに行っているが、次期型の方針を既存オーナーの判断に委ねるというアイデアは初めて耳にした。なるほど、既存モデルのオーナーは、次期型モデルの方向性や販売台数によって自分が所有するモデルの価値が変動する可能性があるので、ステークホルダーともいえる。そんな彼らを巻き込んで議論するアイデアは斬新であるだけでなく合理的ともいえるだろう。