【その2】チケットをどう買うか

 劇場の窓口や電話での受付も行っているが、松竹の運営する歌舞伎公式サイト「歌舞伎美人(かぶきびと)」で購入するのが簡単で便利だ。歌舞伎座(東京)だけでなく、新橋演舞場(東京)、大阪松竹座(大阪)、南座(京都)、御園座(名古屋)、博多座(福岡)をはじめ、地方巡業も含め、全国の劇場で公演される歌舞伎チケットが購入可能。

 サイトから「チケットWeb松竹」に入って、ユーザー登録し、指示に従って購入することができる。また、同サイトは、オンデマンド配信や歌舞伎に関するさまざまな情報を発信しているので、歌舞伎ビギナーは要チェックだ。

 どんな席のチケットを購入したらいいかも迷うところ。

 例えば、9月の歌舞伎座公演では

 1等席 18,000円
 2等席 14,000円
 3階A席 6,000円
 3階B席 4,000円
 1階桟敷席 20,000円

 となっている。

歌舞伎座の座席

 一番いい席とされるのは一等席の「とちり」。

 歌舞伎座の座席は、以前は前方から順に「いろはにほへと」、という番号がつけられていた。

 1列目が「い」2列目が「ろ」となる。そして昔からいいと言われてきたのは「とちり」つまり7列目から9列目だ。

 もちろん、舞台に近いのにこしたことはないが、前すぎると全体が見えないというわけだ。

 しかし、歌舞伎通の小林さんは、かならずしも一等席がいいというだけではないという。

「もちろん、前の席で観ると迫力があるわけですよ。役者の息遣いまで聞こえるのは生の舞台ならではです。

 ただし、あんまり前すぎると、年をとった役者のしわが見えて現実に引き戻されるなんていうとこもある」

 もともと江戸時代の芝居小屋は暗かったので、当時と変わらない化粧を今の歌舞伎座の明るい照明の下で観なくてもいいというのだ。

 歌舞伎では、舞台下手から後方に向かって、幅1.3メートルほどの「花道」という舞台があり、ここも大事な見せ場になることが多い。

 2階席、3階席では、花道に出てくる瞬間は観ることができない。

「でも、私は2階の7列目までの1等席か、その後ろの2等席で観ることも多いんです。ヨーロッパの劇場でも、1階は庶民たちと決まっていて、貴族たちは2階席で観ていたわけですしね(笑)。1階の後方より2階の2等席のほうが、コスパもいいと思いますし」

 歌舞伎座には、一幕だけを1,000円前後の手ごろな料金から見られる、お試しやリピートにうってつけな「一幕見席」というものもある。従来は当日販売の自由席のみだったが、2023年6月から指定席が新設され、前日からインターネットで購入できるようになったので、チェックしてみるのもいい。ただ、まだ慣れないうちは、ある程度よく見える舞台に近い席がおすすめだという。

 最後に、小林さんの考える、パートナーや友人を連れて行っていいところを見せるなら、という方法を聞いた。

「パートナーなどを連れていく数日前に、あらかじめ2階の真ん中あたりで観ておく。その時にイヤホンガイドや筋書(公演パンフレット)を使って知識を仕入れておくとなおいい。そして、一緒に行くときには、1階の『とちり』周辺の一等席の前のほうで観る。

 この時には、前もって仕入れた知識をもとに、『最後に、弁慶が花道の七三(しちさん。すっぽんと呼ばれるせり上がりがある辺り)で六法(ろっぽう。花道を戻る際の独特の動き)を踏んで引っ込むんだけど、そこがさすが團十郎という迫力の見せどころなんだよ』とか、話してあげるというのはどうでしょうかね」

 

※情報は記事公開時点(2023年9月1日現在)。