西郷の局(於愛の方)

家康より20歳年下の別妻

 次は、西郷の局(於愛の方)をみてきたい。

 西郷の局は、家康に寵愛された「別妻」である。ドラマでは広瀬アリスが演じる。

 生年は、桶狭間の戦いの2年後となる永禄5年(1562)とされる(中村孝也『家康の族葉』)。家康より20歳も年下だ。

 西郷の局は天正4年(1567)三河国衆・西郷義勝の妻となったが、義勝は戦死してしまった。

 そのため、母の再嫁先の服部家に身を寄せていたところ、天正6年(1578)、服部家を訪れた家康に見初められ、親族である西郷清員(正員)の養女として、家康に嫁いだという。

 ただし、西郷の局の生い立ちには諸説があり、家康に仕えるまでは不明な点が多い。

 

二代将軍・徳川秀忠を産む

 西郷の局は天正7年(1579)4月7日に、のちの二代将軍・徳川秀忠を、翌天正8年(1580)9月に松平忠吉を産んでいる。

 家康の正妻・築山殿と嫡男であった細田佳央太演じる松平信康の母子は、いわゆる「信康事件」により天正7年に死去しており、秀忠は嫡男とされた。

 

事件に巻き込まれて亡くなった?

 西郷の局は天正17年(1589)5月19日に、駿府で死去している。享年は28(一説に30)である。

 死因は不明だが、徳川家臣・松平家忠の日記『家忠日記』の天正17年(1589)5月21日の記事には、「野田菅沼助兵へ喧嘩にて死去之由」と記され、「柳営婦女伝系」(『史料徳川夫人伝』収録)には、「松平主殿助家忠の家士・稲吉兵衛[忍3] に害された」とあり、何らかの事件に巻き込まれたのではないかともいわれている。

 ドラマではどう描かれるのだろうか。