文=松原孝臣

アイスダンス「あゆしん」高浪歩未・西山真瑚組の新たなスタート(第1回)

男子シングルに出場していた西山真瑚。写真は2019年全日本ジュニア選手権でのもの 写真=アフロスポーツ

大事なのはコミュニケーション

 今シーズンからパートナーとなり、フィギュアスケート・アイスダンスでシニアデビューを飾る高浪歩未と西山真瑚。

 今までもアイスダンスと向き合う中で奥深さを感じてきた。高浪は語る。

「トップ選手を見たら簡単そうに一緒に滑っているなと思っていました。でも実際やってみると、足の向きや手の指先の方向とか位置を気にしないと、一体感を出せません。一方で、できないときに話し合ってできる方向に進んでいくとき、実際にできたときの楽しさ、成長していく上で2人でコミュニケーションをとりながらできる楽しさがあります」

 西山はアイスダンスの難しさを語った。

「アイスダンスを始めて、技術的にも一緒に合わせて至近距離で滑る難しさを感じました。コミュニケーションも大事な競技です。自分の感じている思い、こうしてほしいという思いを相手に伝えるのが難しいところだと思っています」

 共通するのはコミュニケーションという言葉。はた目には優雅に見えても、距離の近いところで滑り、エレメンツ(要素)を入れつつ表現するのは簡単ではない。作品を創り上げ、演じ切るには両者の呼吸が大切であり、だからこそ、コミュニケーションは欠かせない。でもお互いの「個」があるから難しくもあり、難しいからこそ、そこで充実も得られる。

 コミュニケーションの重みを知る2人がパートナーとなる直接のきっかけとなったのは、今年2月に西山が新たなパートナーをみつけるために実施したトライアウトだった。

 何人かの選手と滑る中に高浪もいた。

「一緒に滑っていて自分がすごく滑りやすいな、心地いいな、と思える選手が歩未ちゃんでした」

 トライアウト以前から高浪に好印象を抱いていたことも大きかっただろう。昨夏、バッジテストのとき、高浪に手伝ってもらったことだ。

「自分があまりうまくできていない部分をカバーしてもらえたというか、助け合うというか、そういう部分を感じていました」

 トライアウトで高浪の印象が強かった理由がもう1つある。高浪は言う。

「自分を出していかないとちゃんと自分を伝えられないと思ったので、率直に意見などを言っていました」

 だから西山も「わりと踏み込んだトライアウトができていました」と振り返り、こう続ける。

「トライアウトの時点でわりと踏み込んで話をできていたので、悪い意味ではないですが、一緒に練習してから印象がそんなに変わったり、新たに発見があったというところには至っていない感じです」

 さらに続ける。

「プログラムを作っていく中で実際にお互いに足りない部分を感じることが出てくるときには、『ここは歩未ちゃん、もっとこうしてほしい』と話すと、一生懸命できるように頑張ってくれる。うるさい、みたいな感じで返ってこないので、勇気を持って伝えてよかったなといつも思います」