そのために、今、どのような従業員情報を把握すべきでしょうか。それは「MUST」、「WILL」、「CAN」の3つで表すことができます。「MUST」は異動履歴や役職、等級、給与などの情報です。企業にとっては必須の情報であり、どの企業も管理しているでしょう。

 
 それに対して「WILL」とは、従業員一人一人が仕事を通じて実現したいこと、「CAN」は、そのために生かせる強みや克服したい課題です。具体的には、「WILL」は自己申告(異動希望/キャリアプラン)、新規事業提案、さらにはメンタル情報、家族情報など。

「CAN」は、人事評価、研修の履歴、資格やスキル情報などです。ポイントは「WILL」と「CAN」 の情報も含め、3種類の人材情報を一元管理し、複合的に見られる、使える状態にすることです 。

 それにより、個人を多面的、立体的に捉える状況を作ることができます。ただし注意すべきは、これらの情報は日々変化するため、時系列/リアルタイムで管理することが重要です。大量の情報を手作業で管理するのは大変ですので弊社が提供するタレントマネジメントシステム「カオナビ」のような、テクノロジーの力を使うことも検討いただくとよいでしょう。

 システムを使うことで データベース化が実現します。それにより、適材適所の配置、早期離職や「びっくり退職」を招かないようなアサイメントなどが可能になります。さらに組織の課題なども見えてきます。

 社内に眠る社員の多様な情報を集約し、戦略人事を実行する、マネジメントが使える形にすることがタレントマネジメントシステムの役割です。

年10回以上もアンケートを実施「サカイ引越センター」

 私どもがお手伝いさせていただいている企業のうち、3社の事例をこれからご紹介します。まずはサカイ引越センター様です。

 運送会社というと、採用に苦労しているというイメージを持つ人が多いかもしれません。私も当初そのような考え方で同社を訪問したのですが、それは誤解でした。

 というのも、同社では社員の推薦や紹介で入社する人がとても多いのです。友人だけでなく、中には社員のお子さんが入社されることも多いそうです。

 その裏側には非常に緻密なデータ収集と、丁寧な人事施策があるそうです。年10回以上も、「カオナビ」のアンケートフォームを使って、アルバイトも含めた社員の声を聞き、本人の能力と志向をマッピングしているのです。

 その上で、本人のキャリアや能力向上のために、次にどこに異動させるのがいいのか、また、どのようなスキルを習得し、研修を受けてもらうべきなのかといったことを人事部が緻密に行っています。

 年に10回もアンケートを取って提出率が90%以上になっているのも注目すべき点です。 アンケートを出せばきちんとフィードバックされる、すなわち、会社と従業員の信頼関係がちゃんと結ばれているからことアンケートの提出率が高いのです。こういったことの積み重ねが、社員のエンゲージメント向上につながり、競合優位の源泉になっているのだと思います。