アジャイルな働き方転換を成し得た最大の要因は「行動指針の共有」

 当社には2つの原則と5つの価値基準という行動指針が創業時からあり、これを全社員で共有しています。そして今回の対応で特に大きかったのが、この7つの内の以下の2つです。

●ムーブメント型チーム
 ミッションに共感し集まった仲間たちが自律的にアクションを起こす。その熱狂が伝播することで、より良い相乗効果を生み出していく集団である

●あえて、共有する
 人とチームを知る。知られるように共有する。オープンにフィードバックしあうことで一緒に成長する

 普段から「ムーブメント型チーム」であろうという働き方をしてきたおかげで、テレワーク下でもチームの垣根を超えた活発なコミュニケーションを躊躇なく進めることができました。

 そして「あえて、共有する」のカルチャーが浸透していたおかげで、face to faceではなくとも、皆が気軽にオンラインによる情報共有を当たり前のこととして行うことができました。

 ソフトやデバイス、通信回線などリモートワークに必要となる技術的なインフラが整備されていたのも、こうした価値基準、行動指針が企業カルチャーとして根づいていたからなのです。

 ワークスタイルの変革を本格化しようという企業ではともすると手段として用いるハード面にばかり気持ちが行きがちですが、何より最優先すべきは、そうしたハード面の利用者である社員が行動上の基準と指針を共有していくこと。私たちはそう捉えています。

 慣れない環境においてもコミュニケーションを円滑に継続していくには、ハード面よりもまず社員のマインドセット上の環境整備が不可欠だと考えます。

社内コミュニケーションとは「相談・親睦」、「共有」、「稟議」の3局面

次に、そもそも社内コミュニケーションとは何なのかを考えましょう。freeeではこれを「相談・親睦」、「共有」、「稟議」の3つに大別しています。

 相談・親睦とは、1on1あるいはチーム内で日常的に行われる雑談も含めたコミュニケーション。これが充実すればするほど、業務遂行も順調に進みますし、チーム内の結束や絆も深まっていきます。

 共有とは、日々の事務連絡を含む情報共有のためのコミュニケーション。また体験談の共有が人材の育成につながったり、進捗状況の共有がベターな判断へつながっています。

 稟議とは、文字通り購買申請や勤怠申請など、企業として残すべきエビデンスを記録していくためのコミュニケーション。そのプロセスをダイナミックかつアジャイルに変革していくことができれば、経営上の意思決定スピードも劇的に上げていけるものです。

 3つの中でも、よりストック性の高いコミュニケーションが稟議の局面であり、より親密性の高いコミュニケーションが相談・親睦というように、それぞれ特性の異なる3大要素。

 これらを偏りなく既存のオフライン・コミュニケーションからオンラインモードへとスムーズに変換することが理想形ということになります。決して容易ではありませんが、もしも実現できたならフルリモートワークにおいても社内コミュニケーションの質を落とすことなく継続できるというわけです。

 そこで、当社は以上の3要素の特性を以下のように分類しました。

●相談・親睦
 特定少数&クローズドなコミュニケーション。情報の流動性は高い。

●共有
 特定大多数&オープンなコミュニケーション。情報のストック性は高い。

●稟議
 特定少数&クローズドなコミュニケーション。情報のストック性は高い。