事業ドメインの大変革を実行したNEC

東海林:当社は「2015中期経営計画」策定を機に「社会価値創造型企業への変革」を打ち出し、次の100年に向けた事業ドメインの再定義を本格的に始動しました。「地球との共生」「安全・安心な都市・行政基盤」「安全・高効率なライフライン」「豊かな社会を支える情報通信」「産業とICTの新結合」「枠を超えた多様な働き方」「個々人が躍動する豊かで公平な社会」という7つの社会価値創造テーマを掲げ、その実現のための変革に着手。スマートシティを実現する「NEC Safer Cities」と、バリューチェーン領域に新たな価値創造へつながるイノベーションをもたらす「NEC Value Chain Innovation」を中軸とする企業へと生まれ変わりました。

東海林直子氏
日本電気株式会社(NEC) IMC本部 本部長代理 

 端的にいえば、かつてのNECを支えてきたBtoC事業やITベンダーとしてのシステム構築事業などに代わり、社会価値創造を目指す多くの企業と共創する分野にフォーカスしていくのが新しいNECの姿です。当然のことながらマーケティングの在り方も根底から再考し、最適なアプローチを見つけ出すことが急務となりました。

 例えば以前であれば、BtoCの代表製品であるPCや携帯電話の存在自体がNECのバリューを伝える役割も担っていたわけですが、これからはそうはいきません。BtoB分野についても、ITベンダーとしての事業を展開している時には企業の情報システム部門が直接のお客さまでしたが、新しいNECではあらゆる領域の事業部門がお客さまになります。お客さまの意思決定プロセスもこれまでとは大きく異なり、多様なタッチポイントから情報を収集して事業・業務を展開されています。そこで、NECではこれらの変化に適応するための課題を抽出し、以下の3つのポイントに着目することにしました。

①顧客データベースの質の低下(玉石混淆ゆえの非ターゲット化)
②メールや旧来型オウンドメディアの限界
(PC離れとモバイルへのシフト、SNSや情報提供型サイトの充実)
③意思決定プロセスのブラックボックス化