「成美がいなかったら、今の彼らは見られなかった」

 三浦と木原は今年3月の世界選手権で金メダルを獲得。日本のペアとして初めて優勝を飾った。その演技、光景も解説者として見守った。

「表彰式のとき、一緒に写真を撮ってもらいました。そのとき璃来ちゃんにも龍一にも言葉をかけたら返してくれて、その言葉に感動したんですけど、感動しすぎてまったく覚えていないんですよね(笑)。たぶん、私は『ありがとう』と言ったことは覚えているんです。でも2人の言葉が何だったのか、ほんとうに感動してしまって、何も覚えてなくて」

 明確に覚えているのは三浦と木原を指導するブルーノ・マルコットコーチの言葉だ。マルコットコーチは、高橋とマーヴィン・トランがペアを組んでいたときのコーチでもある。

「2人が優勝したあと、わざわざ解説席の私のところまで駆けつけてくれて、『ほんとうに成美がいなかったら、今の彼らの輝かしい姿は見られなかった。ありがとう』と言ってもらえました。昔の生徒である私に駆けつけて言葉をかけてくれたことは、一生忘れないと思います」

 そしてこう語る。

「解説者と選手、役割は違いますけど、チームとしてペアを広めたり強くしたり、一緒にできればと思っています」

 フィギュアスケートへの、ペアへの貢献を誓いつつ、昨年10月に公開された映画『月下香』に出演するなど、幅広く活動する。

 自身を表現するとしたら? そう尋ねると「天真爛漫」と答えた。

「考えて行動すると言うより飛び込む、そんなスタンスだったと思います。たくさんの国を回ったり、たくさん引っ越しをする中で飛び込まないと打ち解けられないし、やってみないと分からないという考えがありました。勇気とか行動力というより、たぶんそれしか知らなかったんですね。ただ、やってみてうまく歩いてくることができたと思います。だからチャレンジする勇気だったり、自信が持てたりしたんだと思っています」

 持ち前の挑戦心、フィギュアスケート、中でもペアに取り組んだ中で培った力とともに、これからも歩んでいく。

 

高橋成美(たかはしなるみ)
3歳でスケートを始める。小学4年生のとき父の転勤に伴い中国へ。当地でペアを始める。2008年から2014年にかけて全日本選手権で優勝。2011-2012シーズンにはグランプリファイナルに日本のペアとして初めて進出、世界選手権では日本ペア初の表彰台となる銅メダルを獲得。2014年、ソチオリンピックに出場。2018年3月に引退したあとはテレビの大会中継時の解説を務めるほか、日本オリンピック委員会理事、さらにはタレントとしてバラエティ番組に出演や演技の仕事など幅広く活躍を続ける。