何もしない時間が嫌い

 10月6日には今シーズンのワールドカップ最終戦となるボルダーの第5戦で8位、リードの第6戦では2位、リードの年間順位でも3位となったように、世界のトップクライマーの一人として活躍する森は、ある意味、異色の立ち位置にいる。高校を卒業したあとプロとして専念するクライマーも多い中、大学に進み学業と競技を両立させていることだ。

「まず私は何もしない時間が嫌いなんです。今の生活スタイルは、学校は学校、練習は練習とメリハリをつけることで1個1個の要素を密度の濃い活動にできていると思いますし、私は向いてるんじゃないかなって思っています。平日朝8時半から午後4時半くらいまで学校に行って、その後の限られた時間の中でぎゅっと練習して、料理とか家事もして、という日常がけっこう好きです。学校でスポーツに対していろいろな視点から学ぶことで多様な考え方が身についてそれが競技にも生かせると思います」

 それ以上に、クライミングに対する深い思いから、両立という形を選んだことを森の言葉は伝える。

「私はクライミングが大好きだけど仕事にしたくなくて、だから学業と両立してやっています」

 仕事=プロになれば、どうしても成績を追い求めることになる。結果を出すことが優先される。それは森がクライミングに取り組む根本とはずれる。

 では、森がクライミングに打ち込む原動力はどこにあるのか。(続く)