EX30は、カスタマーを分断する
しかし、その一方で懸念も浮上してきました。ここまで急進的なEX30の価値を伝えていくのは大変なことだろうということです。ボルボのスタッフに一通りの説明を受けた後に京都から東京までの500kmを走った僕でも、すべての機能と装備を試すことができなかったからです。
それだけ高機能、多機能なクルマに興味を持ち、買う気満々な人にでも購入前にすべてを伝えることは難しいのではないでしょうか?
ボルボのEVはWebから注文し、指定したディーラーでその後の点検や車検整備などを受けることになっていますが、対面での商品説明は十分なのでしょうか?
青山のVolvo Studio Tokyoでは、希望者には試乗を含めて納得いくまで説明を受けることが可能です。機能や装備など、答えが明らかな質問にはオンラインでも十分かと思います。しかし、ボタンの数が多いほど高性能で高級などといった旧来的な価値観を持っている人の主義や主張、嗜好や趣味などを改めさせるような、価値観の転換を行わないとEX30に興味すら抱いてもらえないのではないでしょうか?
いろいろなクルマに乗ってきたような自動車経験が豊富な人でも、そこは二極分化します。新しいものへの興味と関心を抱く人がいる一方で、懐疑的だったり、理由もなく忌み嫌う人もいます。
驚かれるかもしれませんが、自動車メーカーやインポーターに勤務している人たちだけでなく、自動車メディアに携わっている人の中にもいるのです。
「自分で運転しなければ自動車じゃないから、運転支援機能は使わない」
「エンジン音がしないから、EVには乗りたくない」
「そもそも運転中は音楽は聴いていない」
「クルマがインターネットに接続する必要性がわからない」
「同乗者に聞かれるのがイヤだから、音声操作はしたくない」
「タッチパネルは指紋が付くのがイヤ」
退嬰的という言葉がふさわしいですね。そうした懐疑派、拒絶派には何を言っても説得できないかもしれませんが、EX30の持つ価値を上手く伝えたら買う気になってくれそうな人は逃したくないでしょう。
EX30は急進的であるところが魅力と価値になっていますが、今の日本では急進的であるがゆえに自らハードルを上げてしまっているようにも思えました。EX30は好き嫌いや関心の有無がはっきり分かれるクルマです。
テスラはブランド自体が急進そのもので、最初から興味がある人しか寄ってきません。でも、ボルボには長年エンジン車を製造販売してきた長い歴史があります。どちらかといえば穏健で保守的なユーザー像をイメージしてしまいます。以前からのユーザーの中から、どれだけボルボのEVにスイッチするものなのでしょうか?
全長×全幅×全高:4,235×1,835×1,550㎜
ホイールベース:2,650㎜
トレッド:フロント1,590 リア1,595㎜
車両重量:1,790kg
最高出力:272ps (200kW)/6,500-8,000 rpm
最大トルク:343Nm/5,345rpm
バッテリー容量:69 kWh
一充電走行距離(WLTCモード):560km
駆動方式:後輪駆動
タイヤサイズ:フロント245/45 R19
価格:559万円(税込)