ド根性で坂道を走り込んできた赤﨑
MGCで2位に入った赤﨑暁(九電工)は今年2月の青梅マラソン(30㎞)を1時間29分46秒で完勝。5月3日の日本選手権10000mにも参戦して、27分43秒84(7位)の自己ベストで走っている。
「マラソンもスピード化していて、10000mで27分台を持つ選手が増えています。一度スピードを磨く意味でも10000mを走ってからマラソン練習に入りました」
赤﨑は6月中旬から7月上旬まで岐阜・御岳、7月中旬から8月上旬まで長野・東御で高地合宿を実施。パリ五輪に向けて、坂道を徹底的に走り込んだという。
「起伏のあるコースで距離走をやりましたし、約10㎞続く上り坂も走りました。スピード練習で800mの坂を10本というメニューもこなしました。ジョグでも坂の方に行くなど、本当に坂ばかり走ってきたんです。何度も『とまりたい』『もうやめたい』と思いましたが、ここでやらなきゃオリンピックは戦えないという気持ちで乗り越えてきました」
パリ五輪のコースよりきつい坂を走って強化してきたことは赤﨑の自信になっているようだ。体調も「問題ない」そうで、現在の気持ちは「緊張よりワクワクの方が強いです」と決戦のときを待ち望んでいる。
「約3カ月間しっかりと練習してきた成果を発揮できるように頑張りたいと思います。どんなレースになるのか想像できないので、走っていくなかでレース展開を考えていきたい。坂対策をやってきたからこそ、坂で集団から離れないようにという意識でレースに挑むつもりです」
東京五輪6位の大迫は自然体で駆け抜ける
「ラストラン」で臨んだ東京五輪で6位入賞。一度は「引退」した日本長距離界のヒーローが3回目のオリンピックに挑む。
MGCは3位で、4月のボストンマラソンは13位(2時間11分44秒)に終わったが、パリ五輪に向けては、「非常に順調にトレーニングできてきているので問題ないかな」とコンディションは上々のようだ。
具体的な目標は口にしなかったが、大迫は〝平常心〟で大舞台に臨む構えだ。
「非常にアップダウンがあるタフなコースになるんですけど、いつものレースと同じように、しっかりと自分の力を出し切るみたいなところを心がけて走れればいいかなと思っています」
パリは米国や日本から離れていることもあり、すべてのコースを試走していないという。それでも上り坂は傾斜などのデータを使って、コースを想定したトレーニングを行ってきたようだ。では、勝負のポイントをどう読んでいるのか。
「これだけのアップダウンはシックスメジャーズにもないですし、世界的に見てもレアなケースです。ケースバイケースで走って、柔軟性を持って臨んでいきたい。その場合、その場で選択があるので、大事なのは常にポジティブな選択をしていくこと。それができたらいいなと思っています」
これまで多くの舞台を踏んできた大迫。オリンピックだからといって気負いはまったくない。むしろ、パリ五輪も〝いつも通り〟を強調した。
「僕はどんな大会でもベストの準備を心がけています。今回も他のレースと同様にいい緊張感のなかで、しっかり走りきれるかなという不安や、どういった走りができるかなという期待感を持っています。ただ今回はシューズについては迷いましたね。パリ五輪のコースはアップダウンがありつつも、同様にフラットな部分もある。それぞれの選手がどんなシューズを履くのか。そのあたりは注目ポイントなのかなと思います。いずれにしても僕はどんな大会があっても、そのときできる努力を100%して向かっていく。それは今回も変わりません」
大迫傑だからできる走り、大迫傑しかできないパフォーマンス。五輪という舞台でも大迫らしさは健在だ。
ケニア、エチオピア勢を中心に海外勢は超強力。「入賞」は簡単ではないが、日本勢3人の走りを楽しみにしたい。